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女王様と偵察

「おい何だこの格好はよ」




 前回の終わりに次は平常運転に戻ると言ったな。あれは嘘だ。


 今回は初の野外ロケ……もとい、エリサ様にロバ耳の呪いをかけた者を探すため城下町に下りてきました。


 長い髪は黄金の絹、澄んだ瞳は海の宝玉、肩を露わにした白いドレスが最高なエリサ様ですが、本日は平民の服を着て頂いております。ジーパンに白シャツに灰色のパーカー。


 そして頭をすっぽり覆う段ボール。


 視界に配慮して目の辺りには穴を空けております。




「本日はお忍びですからこの格好でご勘弁ください。それとも私の平民服チョイスに問題でも」


「そこじゃねえよ!! 段ボールだ段ボール!! あっ、自分の声すげえうるさい」


「どうかお静かに。街の者に怪しまれてしまいます」


「十分怪しいだろうがよ!! 街中で段ボール被ってるやつが一番怪しいだろうがよ!!」


「失礼ですがエリサ様。エリサ様のお顔は国民の誰もが知っております。通貨のすべてに描かれておりますから当然ですね。そんな訳でお顔を晒す訳にはいきません」


「いやいや段ボールじゃなくてよくない? 何だったら一番だめなやつじゃない? 眼鏡とマスクとかでいいだろ。あとニット帽」


「何だよそれ有名人気取りかよ」


「おいタメ口! タメ口やめろ! あと有名だから変装してんだろバーカ!!」


「失礼いたしました。お顔が見えないものですからついうっかり」




 それにしても段ボールがだめとなると……困ったな。他に思い付かない。


 逆に段ボールを活かしていく、というのはどうだろうか?




「汚れたツナギとチェーンソーならアリでしょうか」


「何が!? 分かんねぇけどナシだよ! 汚れたツナギとチェーンソーがアリな状況なんてねえよ!」


「しかしですね、先ほど仰られた芸能人コーデだと私がきゅん死しちゃうと思うんですよね」


「死ねよ!! じゃあ死ね!! 言っとくけどロバ耳よりお前の方がストレスになってるからな!?」


「だって完全にお忍びデートじゃないですか。そりゃもう遊園地で観覧車ですよ。大きなパフェを二人で食べたり普段ツンデレなエリサ様がお化け屋敷なのをいい事に僕の腕に絡みついてきてあっ、そしたらおっぱい当たるなおっぱいおっぱい」


「黙れ――――――ッ!!」


「急に大声とは何事ですか」


「妄想が口に出てんだよ!! おっぱいおっぱいってお前ほんとクズだな!!」


「すみません録音し忘れておりましたのでもう一度おっぱい頂けますか」


「もういやぁ――――――ッ!! お城帰るぅ――――――ッ!!」




 しまった。ギリギリのラインを超えてしまった。


 だが今ならまだ挽回できる。なぜならエリサ様はちょろいから。




「では私の残機を一つ減らすと致しまして、芸能人コーデで参りましょうか」


「は?? お前残機あんの? じゃあ死ぬまで殺す」


「段ボールコーデで言われると迫力がありますね。ちなみに残機は無限です。私は死にません(物理)」


「うざい!! (物理)がすげえうざい!!」


「こんな事もあろうかと芸能人コーデセットも用意しておきました。眼鏡は最後にお掛けください」


「何だよあんのかよ。お前のこだわりなんか知らねえし眼鏡から掛ける」




 エリサ様が段ボールを外すとロバ耳がぴょこん。実にいいですね。萌え。


 そこに眼鏡を装着と。




「はい俺死んだ!!」


「ちょっ、まだ帽子被ってねえのに大声出すなよ何なんだよ!?」


「今しがた私の無限なる残機の一つが死にました。死因はきゅん死。眼鏡はすべての萌えを倍加させるチートアイテムです。取扱いには十分お気を付けください」


「は?? バカかお前。余の顔がちょっと隠れるんだぞ、その分かわいさ減るだろうが」


「………………」




 僕はエリサ様のこういうところ好きですよ。自分の事世界で一番かわいいと思ってるっていう。


 事実世界で一番かわいいので何も問題はありません。




「それではお忍びデート始めましょうか。まずはどこから参りましょうか」


「そうだなー、やっぱり遊園地かな」


「初めてのキッスは遊園地の観覧車でって決めてましたもんね」


「そうそう、ふふっ。……ってちっがーうっ!!」


「いえ間違いなく観覧車です」


「そこじゃねえし言うなよ!! お前それ絶対他のやつに言うなよ!!」


「ご安心ください。私はメイドのように口軽ではございませんので」


「ちょいちょいメイドの事言うよなぁ。何それフリ? フリなの?」


「エリサ様を呪ったバカを探しにいきましょう。こういう時は酒場と相場は決まっております」


「また強引に舵切りやがったなおい。これトロッコだったら谷に落ちてるからな」




 エリサ様の比喩はよく分かりませんが、こういう時は酒場で情報を集めるものです。村入ってすぐのとこに突っ立ってるじいさんなんて「ここは○○の村じゃよ」としか言いませんからね。




「つーか酒場? バー? そんなのいっぱいあるだろ。どこ行くんだよ」


「問題ありません。重要な情報を持っている国民を近くの酒場に配置しておきましたので」


「呼べ!! 回りくどい事してねえでそいつを城に! 呼べ!!」


「えーだってたまには外に出たいじゃないですかー」


「うるせえよ!! 大体お前だけでいいだろ、何で余が一緒に探さなきゃなんねえんだよ」


「えっ、今更そこですか。ノリツッコミが過ぎませんか」


「うーるーさーいーっ!! たまには外出るのもいいかなーって思ったの! 実は女王でした~ってドッキリやってみたいじゃん!」




 ヤバい。動機のくだらなさがマジでヤバい。エリサ様は真性のバカだから何考えてるのか全然分からない。


 だがそれがいい。知ろうとして沼にはまっていくこの感じ、伝われ。




「ドッキリネタはおそらくやりませんが、ひとまず酒場に参りましょう。すぐそこです」


「えー何でだよやろうよやるー」




 そんな訳で次回、酒場で重要人物と会う編です。


 ドッキリはやりません。

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