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助けてヘルパーさん  作者: 塞翁が馬
6/23

助けて6話目

 どこかで肉を焼くような音と臭いがする


 懐かしいな……あれは、いつだっただろうか。私は、仲間と共に荒野にいて美味しい肉を食べていた。仲間とキャンプを張って数日、人族の商人が運ぶ荷を狙い道に待ち伏せしているとようやく獲物が現れた。


「よし。いつものように行くぞ」


 リーダーのダルカスの合図に私達は、一気に商人の馬車を襲う。正面から2人、背後から2人横から1人ずつで馬車を囲う。身体能力に優れる私達は、すばやい身のこなしで近寄るといっきに馬車を占拠する。御者台には、震える小太りの男がいるが、護衛の兵すらいないのに拍子抜けた。


 ダルカスが小太りの男の首を鋭利なナイフで両断する……転がった頭が馬車から転がり落ちるのを見ても私にはなんの感情も起きない。


 幼い私を残し死んだ両親は、人族に殺されたと聞いた。幼いころから私には、人族と争う事が課せられていたから。


 一気に馬車を占拠することに成功した私たちは、馬車の積み荷を奪うため荷台の後ろへ回る。


「へへ。今日は何を運んでやが……」


 先頭をきって荷を検めようとしたお調子者のヘジルが、そう言ったとき、ヘジルの背中に金属が突き立った。


「罠だ!」


 ダルカスがすぐに今回の獲物が罠だと看破した。しかし、すでにヘジルの命は尽きかけている


「う……が……」


 声も出ないヘジルが、膝をつくと荷台から鎧をまとった騎士が次々と現れる。


「逃げろ!」


 ダルカスが、そう叫ぶと私たちはいっせいに散った。固まると全滅するかもしれないため脱出は常にばらばらになるのが鉄則だ。


「ぐぎゃ!」


 後ろからついさっきまで一緒にご飯を食べていたモーラの声が聞こえる。振り返るわけにはいかない……ただ、前に走り逃げる。


「全員捉えよ!」


 人族の騎士が配下に命令する。他にも伏兵がいたのか逃げる私の前に鎧をまとった男が立ちふさがる。私の武器じゃフルプレートの男は倒せない。商人を襲うためには軽装が有効だが、戦士や騎士と戦うならもっと重い武器が必要だ。今は、戦うよりも逃げる事を優先しなくちゃだめだ……


 憎い人族を前に逃げる事は、苦汁の決断だが、今は余計な事は考えてはいけないと自分に言い聞かす。すばやく跳躍すると鎧の男に飛び蹴りして一気に後ろに回り込む。


「よし!」


 うまくいったと駆けだそうとしたとき、私の足に鎖がまきついた。ボーラーだ。


「くっ!」


 はやく外さないと逃げきれない。捉えられれば死ぬよりもひどい目に合うのは一族の女ならばだれでも知っている。たとえ足をちぎってでも……。しかし、からみついた鎖は簡単にはほどけない。倒れた鎧の男がむくりと起き上がり近づいてくる。焦る手元がさらにうまく動かいない。


「だめ……」


 私が、そう言ったとき、鎧の男が前に倒れた。後ろからダルカスが現れ鎧の男を倒したようだ。


「た、助かったわ」


 ダルカスは、すばやく鎖を外すと


「はやく逃げろ。すっかり囲まれているぞ」


 と私に告げた。私は、指示に従い再びダルカスと駆けだした。ダルカスは、強い戦士だ。一族の中でも将来を期待されている。


「早く森へ隠れ……」


 私が、ダルカスにそう告げようとしたとき、ダルカスの背に矢が突き刺さる。ゴロゴロと転がるようにダルカスは地に伏した。


「俺はいい。はやく逃げろ!」


 私のせいでダルカスが……戸惑う私に


「逃げろヒルデ!」


 次々と矢が後ろから私達を襲う。私は唇を噛みながら駆けだした。


「ダルカスごめん」


 それから私は、森に入りひたすら逃げた。追撃は執拗に行われたが、森に入れば人族には追いつかれる事はない。


「はあはあ」


 息が続く限り逃げて隠れる。周囲に人族の気配はない。ようやく逃げ切ったと思ったとき、私の前に余計な客が現れた。フォレストジャッカル……森の狩人か……


 手に1本のナイフを持ち、私は、フォレストジャッカルに立ち向かう。1体1体はさほど強くないが、こいつらは連携して狩りをするから厄介だ。何とか数匹を倒すが、片手と片足を噛み千切られた……相手も仲間を殺されたためあきらめたのか逃げて行く……


 満身創痍の私は、森を……荒野を歩くが、途中でいよいよ歩くこともできなくなった。出血が多すぎる。それにこのままじゃ手も足も腐ってしまう……でも……


 その時、油断していたためか人族の気配を感じた。


「よるな! 人族が!」


 私は、最後の抵抗のように歯を食いしばりながら威嚇する。


「こちらに敵意はないよ。怪我しているのだろう?」


 この人族は何を言っている……それよりも……


「なっ! なぜ私たちの言葉を知っている?」


 獣人は、人族の言葉を知っているが、人族は穢れていると言って獣人の言葉は使わないはずだ。


「色々な種族の言葉を知っているからお話しくらいは大丈夫だよ」


 何かがおかしい……だけど……


「ち、近づくな!」


「怪我をしているのだろう?無理しないで治療したほうがいいよ」


 人族の男は、武器をしまい敵意がないことをアピールする。


「し、信じられるか!」


 そう……そんな事で信じられるものか……しかし出血の影響か……私の意識は途切れていく




---------------------------------------------- 



 肉が焼ける匂いがする……


 目を閉じたまま身体の隅々を意識する。どうやら手足の傷は、大した事がなかったのかもしれない。まだ、うまく動かないが、感覚がある事を喜んだ。


 私が目を開けるとそこには、予想にない光景があった。慌てて後ろずさり物音を立ててしまった。男が私が起きたことに気がつきこっちを見た。何かを言って私に焼けた肉を差し出した・・・


 人族が作ったもの……こんなもの食えるわけがないだろう……毒でも入っているのか?


 私は、思い切って手で肉を払いのけた……


 男は、もったいないと言って肉を拾う……私はその姿を見てまた意識が薄れていった



 私が次に気がつくと朝も近づきうっすらと明るくなってきていた。再び手足を見ると何か包帯のようなもので巻いてあった。痛みも昨日よりは引いていた。


 男はまだたき火の前で眠っている。逃げるなら今だ……。私は、ようやく起き上がると足を引きずるようにこの場所を離れる。早く逃げないと……気持ちばかりあせるが、怪我して間もない足は言うことを聞かない。


 森へ入り、太陽を見る。自分たちのテリトリーは、太陽の向きでわかるから最短距離を進むことにする。早く戻ってダルカスの仇を……


 お腹が減った……足も痛い……もう……どこを歩いているのか……


 朦朧とする意識の中、それでも私は歩き続けた。しかし、ふと、周りに気配を感じて顔をあげるとそこには、リザードマンたちがいた。




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