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助けてヘルパーさん  作者: 塞翁が馬
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助けて4話目

 草木が風に揺れる大地、風に運ばれる匂いは自然の豊かさを鼻腔に伝えてくる。目を開けたときに広がったその光景を見て僕はひと時の間呼吸も忘れて見入ってしまった。


「すごいな……」


 360度ぐるりと見渡してみたが、電線も電柱も見えない。草原の中にもタイヤの跡はなく、改めて別の世界に来たことを感じる。


 僕は、自分の持ち物を確認する。ヘファイ様にもらったリュックには、食料と水が入っている。手には剣が1本。身体には、軽い皮鎧を着こんでいる。ふと身体を動かしたくなって剣を振ってみるが、重そうに見える剣を軽々と振り切ることができた。


「身体が軽いし、力もあるみたいだな」


 ヘファイ様にもらった身体は、地球にいた時のものとは大きく違う。まあ、本当に別人の身体なのだから仕方ないのだが……髪はやや長めだけど邪魔になるほどではなく色は黒髪、身長は180cmくらいで体重は70kgくらいだろうか……。前の世界にいた時よりも少し視線が高くウエストも太いのでそんなものだろう……


 一通り身体を動かしてからリュックから水筒を取り出し水を含む。ふーっと一息入れると水筒をリュックにしまう。


「さて、ここはどこで……僕はどこにむかえばよいのかな」


 周囲をきょろきょろと見る……視力も種族間の中心くらいなためかかなり遠くまで見通すことができる。張力も同様に集中すればかなり小さな音も聞き取れた。


「太陽が1つってのは地球と一緒だな……目印は太陽って事で太陽に向かって進むか」


 僕は、特に目標とするものもないため太陽を目印に進むことにした。背の長い草をさけるように草原を進む。道がないので時折、足を取られそうになるが、この身体はそんなことをものともしない。


 しばらく進むと不思議な感覚がした。なんだろう何かがいるような気配が


 僕は集中してその気配の方向を探る。あの茂みからだな……僕は剣を抜き警戒しながら茂みへ近づく


「よるな! 人族が」


 近づく僕を一括するように怒鳴り声響く、僕はびくりと驚くが視線は外さない。茂みには、人型の生き物がいて……血の匂いがする。


「こちらに敵意はないよ。怪我しているのだろう?」


「なっ! なぜ私たちの言葉を知っている?」


「色々な種族の言葉を知っているからお話しくらいは大丈夫だよ」


 優しい口調で僕はしゃべりかける。茂みの隙間からチラチラと見える姿から相手は獣人族の女の子のようだ。


「ち、近づくな……」


「怪我をしているのだろう? 無理しないで治療したほうがいいよ」


 僕は武器をしまい敵意がないことをアピールする。


「し、信じられるか!」


 どうやら人族の信頼は、獣人族にはないらしい。どうしたものか……ほっておくのもかわいそうだしな……と僕が迷っていると怪我している女の子がぐらりと倒れ気を失った。無理をするから……


 僕は、茂みを越え、倒れた女の子を抱えあげるときれいな場所を見つけ横に寝かせる。右足と右手を何かに噛まれたのか少し食いちぎられている。痛々しい傷を確認すると頭の中で治癒魔法を使うイメージを持つ・・・なるほど。僕は、右手に暖かい光をイメージすると右手に光が灯る。それを手の傷口にかざすとその光は傷口を柔らかく包み込んだ。少し様子をみて手をよけてみると傷口の肉がもりあがり出血も止まっていた。リュックから水筒を出して傷口を洗い流しこびり付いていた血を洗い流す。少し女の子の服を引きちぎり水筒の水でぬらすと痛みのせいか苦しそうに呼吸する女の子のひたいに乗せる。

 再び、治癒魔法を使い右足の治療を始める。さっきよりもコツのようなものがわかってきたので少し強めにイメージすることができた。右足の傷もみるみるうちに塞がっていき、いつしか女の子の顔色も良くなっていた。リュックを探る僕は、リュックの中に何枚かの未使用の服を見つけたので、その中の1枚を出すと引きちぎって包帯がわりに巻き付けた。患部はほとんど治ったけど皮膚がまだ完全に完治していないから傷口にばい菌が入らないようにした。救護の知識はヘルパー時代に覚えたからな……


 寝ている女の子を見ると耳の位置が少し違うのと尾がある事以外は、人とそれほど変わらないと思った。もう少し意識が戻るには時間がかかるかもしれない。今のうちに何か食べ物を用意しておくか……。火魔法を使うイメージをすると使い方がなんとなくわかる。さっきの治癒魔法と同じ感じだな……


 薪になりそうな木を集めると右手に火をイメージするとぼっと火が現れて薪に火をつけることができた。リュックから肉なんかを取り出し、その辺にあった木を刺して火の側においた。少し待つと、ジュージューと美味しそうな音が聞こえるようになる。 


 ふと後ろで布がこすれるような音がしたので振り向くと獣人の女の子が起きていた。


「まだ、あまり動かない方がいいかもよ……せっかく治した傷口が開いたら残念だしね」


 僕が声をかけても返事はなかった。そのまま会話もなく肉の焼ける音だけが2人の間に響く……


「肉が焼けたみたいだけど食べないか? 怪我を治すにも体力が必要だよ。それにその足じゃまだ歩くことも走ることもお勧めしないよ」


 僕は、焼けた肉が刺さった串を差し出すが、獣人の女の子はそれを払い飛ばす。


「あーあ もったいない……」


 僕は、貴重な食料を拾うと汚れた部分をそいで、また火にかけた……。女の子を見ると再び意識をうしなったようで崩れるように倒れていた。


「無理をするから……」


 僕は、女の子を横に寝かせると上から布団代わりの上着をかける。包帯をといて……再び治癒魔法をかける……ようやく傷口の皮膚も再生を始めたようだ。結局傷は手よりも足の方が深く広範囲だったため足の治療に時間を要した。噛み傷は、治りが悪いって言うからな


 治療を終えると僕は、焼けた肉を口に入れる。すっかり夜になったあたりを警戒しながらたき火の火を守りつつ僕は浅い眠りについた。




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 肘が、ずれた拍子に僕は目を覚ます。たき火も消えてしまっていたため少しがっかりしたが、少々不用心に夜を越えた事を反省した。


 そして女の子の姿が見えない。かけてあった上着はそのままに気配がなかった。


「あの怪我でなんでもなければいいけどな」


 逃げた事よりもその後の事を考えると少し心配になった。たき火の後を片付けると僕は、再び歩きだす。獣人の女の子がいたくらいだからそれほど遠くないところに獣人がいるのだろう。また、その女の子の様子から人族は獣人族と敵対している事は予測できた。


「融和も簡単じゃないか」





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