助けて3話目
「僕が……」
「君がいたユーテリアの世界は、私の世界とはだいぶ違うじゃろう」
「そうですね……」
地球は、人間が占拠している……動物や他の種族は、ペットや動物園に押し込め……いくつもの種族を絶滅させ滅ぼしている。この世界もどれかの種族が勝ち残れば、他の種族に対して同じことをするのだろうか?
「トシヤくん……私は君にこの世界の融和の鍵となってもらいたいのじゃよ」
「融和の鍵ですか?」
「そう……このまま何年も経てば、きっとどこかの種族がどこかの種族を滅ぼすじゃろう……。私は、それを否定はしないが、共存の道がないのかを知りたいのじゃよ」
「僕が、どのようにして融和を図るのですか?」
「実はな。君にはすでにいくつかの力を与えてあるんじゃ。その力をもってこの世界の共存の可能性を探ってほしい」
ヘファイは、そう僕に言うと後ろから鏡を取り出し僕の方に向けた。そこには
「え? 僕じゃない……」
「いや、君なんじゃけどな……。ユーテリアの世界から君を連れてくるのは可能なんだが、どうしてもこの世界に合わせて身体を変えなくてはならないのだ。それで君のために用意した身体が今君が見ている姿と言うわけじゃ」
そこには、若くたくましい男性がベッドに腰かけていた。両手で顔を触る姿が、鏡に映るとようやく自分の姿と納得できた。
「君には、承諾もなく勝手に身体を作ってしまったことを許してほしい」
「いえ、ずいぶんと立派な身体をいただきましたので不満はありません」
「そうか……それはよかった。後な……君には特別な力を授けてある」
「特別な力ですか?」
「そうじゃ。まず君の身体なんじゃが、すべての種族の中間程度としておいた。力は、巨人族や竜族にはかなわないが、人族や獣人族から見ればかなりの力になる。同時に魔法の力も妖精族や不死族にはかなわないが、巨人族や獣人族から見ればかなりの力になる。これは、種族のもつ特徴や力だけで優劣はつかない事を説明したいからじゃ。君はどの種族にも劣り……どの種族よりも優れていると言うことじゃな。あと君の身体は、最低限、剣やら槍やらを使えるようにしてあるくらいかの……」
「次にじゃが、君には君だけしか使えない特別な魔法が使えるようになっている」
「特別な魔法ですか?」
「その魔法なんじゃがな、補助系統の支援魔法なのだが、少々特殊でな。お主の考えに賛同したり、方針に共感した者を強化する魔法なのじゃ。お主の考えに理解をしめしてついてくるものやお主を敬うような者は、お主の側にいるだけで大幅に強くなれる。欠点は、お主の考えを否定したり敵対するとその効果を失うことじゃな」
「と言うことは、僕はグリモールで色々な種族に歩み寄り、種族の共存や融和を唱え賛同者を募ればよいのですか?」
「簡単に言うとそうじゃな。お主が多くの種族から仲間を作り、共に過ごし生きる姿を見た者達が共存や融和の道に気付くことができればよいとわしは思っておる」
「その魔法は、何か使う条件とか詠唱とかが必要なのですか?」
「いや、そのような条件や詠唱などはない。条件と言えばお主の側にいる事が唯一の条件じゃろうな……」
「具体的にはどのくらい効果があるのですか?」
「そうじゃな……身体はかなり強くなるから力や素早さが大きく増すじゃろう。使う魔法なんかもより強くなる……。その効果なんじゃが、お主との距離が縮まる事でさらに高まっていくようになっておるからの……。本当に信頼しあえればとんでもなく強くなれるかもしれん」
「信頼や絆が、強化の目安と言うことですね……」
「そういうことになるの……お主自体が強いのではなくお主と仲間が共に戦うから強くなれると言うものじゃ」
「わかりました。僕にうまくできるかはわかりませんが、ヘファイ様のお考えに僕も賛同いたします。できるだけ多くの種族との絆を作り共存の道を模索できるように活動することにします」
「おお、なんと理解の早い。ユーテリアも要望どおりの人物をよくも紹介してくれたものじゃ。おおそうじゃ……それで思い出したがの……ユーテリアからもギフトが届いておる」
「え? ユーテリア様からもですか」
「まあ、あまり表情を見せぬユーテリアもお主の事は、ずいぶんと気に入ったのじゃろう。お主には、ユーテリアの加護が与えられておる。あやつの加護には、回復魔法と状態異常への耐性がついておるからずいぶんと便利なのじゃ。使い方は、自然とわかるからの……きっとグリモールでも活躍するじゃろうて……」
ユーテリア様ありがとうございます。
「あとは、お主にグリモールの様子を少し伝えておかんとな」
ヘファイは、グリモールについて語る。
グリモールには、多くの種族の他に魔物とまとめられる知性の低い生き物が生息している。それらの魔物は、時に食料であったり、貴重な素材であったりする半面、種族によっては命を脅かす脅威ともなる存在でもある。
グリモールには、多くの魔法が存在しており、種族によって使う魔法の種類も変わる。魔法が使えない種族はないが、獣人族や巨人族には使える者が少なく、妖精族はすべての者が魔法を使う事ができる。
グリモールに共通の通貨はなく、人族などでは金貨や銀貨を使っているが、種族によっては通貨の概念がない。
「こんなもんかの……後聞いておきたい事は何かあるか?」
「僕の言葉は通じるのですか?」
「おお。忘れておったが、グリモールには種族毎に言葉があるが、お主にはどの種族の言葉も話せるようにしておいたから大丈夫じゃ」
「なんだがか至れり尽くせりですね」
「いや、お主のむかう世界は、決してやさしい世界ではないからの・・・気をぬくと簡単に命も失いかねん場所じゃ。特にお主には他種族にかかわる事を求めておるからおのずの危険も増すじゃろう」
「はい。十分に注意しますね」
「一般的な剣と皮の鎧と……おおそうじゃ魔法のリュックも必要じゃな。これは、グリモールでは、そう珍しいものではないが、なんでも入れておけるリュックじゃ。生き物以外はなんでも入れることができて出そうと思えば中からいつでも出すことができる便利なものじゃな」
「すごいですね、こんな魔法の道具がいっぱいあるのですか?」
「グリモールには、魔法の道具を作る種族も多いからの・・・わしの知らない魔法の道具もあるじゃろうよ。後、お主が仲間を作ったときに仲間たちと居場所が共有できるマジックストーンなども入れておこうかの……」
「何からなにまでありがとうございます」
「準備は良いかの……一度グリモールへ行くとわしも気軽に声がかけられるようになるからな……。何か困ったことがあったらグリモールにある神の石碑と呼ばれる石に念じるのじゃ。そうすればわしと連絡を取ることができるからの……」
「はい。神の石碑ですね。何かあればご連絡します」
「うむ。それではいつまでも引き留めてはおけんからの……」
そう言うと熊のような身体を揺らしながらヘファイ様は、何かの魔法を使う。すると僕は光で包みこまれ……グリモールに旅立った。




