助けて21話
メキッ! バキバキ・・・
「すごいな・・・」
「うん。すごいね・・・」
ポコロが、熊型の魔物と対峙する、ポコロは熊の両手首をがっしりと握り組み合う・・・熊は必死に爪を振り下ろそうと試みる。熊とポコロだが、身長は熊の方が若干高く体重はあきらかに重い。しかし、力比べの結果、膝をつきながらこらえるのが熊の方だった・・・
トシヤとヒルデは、それを側で眺めているのだが、苦悶の表情を見せる熊を見てそう感想を述べた。
「ねえ・・・私、巨人サイズの時と同じくらい力があるような気がするんだけど・・・」
熊と対峙しながらも余裕を見せるポコロがこっちを見てそう言った。どうやらこれでもまだ本気じゃないようだな・・・。熊どころかドラゴンとかだって力でねじ伏せてしまいそうだ・・・
「よっと」
それほど力を込めない気合で、ポコロはひょいっと自分よりも大きな熊を持ち上げて放り投げた。おそらく熊の人生初体験なのだろうが、宙に投げられた熊は受け身もとれずに地に落ちる。ずずーんと言う大きな音があたりに響くと仰向けになった熊にポコロが止めとばかりにこぶしを打ち抜いた。打撃は腹部に決まるが、衝撃で熊の下の地面にも亀裂を作った。熊は、口から大量の血を吐いて絶命する・・・
「うん。俺はポコロを怒らすのは止めておく・・・」
「そうね・・・私も遠慮しておくわ」
「ちょっと何二人で、人を危険物扱いしているのよ?」
旅の途中でポコロの力を試すと言ってはみたもののここまで力が強いとは・・・巨人族の戦士なみの力を持った人族みたいだな・・・
「さて、熊の魔物も倒したけど・・・、ヒルデやポコロは、解体や調理はできるのか?」
「か、解体はある程度経験あるけど・・・私は、どちらかと言うと斥候と遊撃を担当していたからあまり得意じゃないわ。調理は、その・・・苦手で、簡単なものくらいなら作れるよ」
「私は、戦士だったから狩りが専門だな。ああ・・・でも大型魔物の解体しかしたことがないな。料理はまったくしたことがない」
どうやら両名ともあまり戦力にはなりそうにないな。
「食べ物には困らないけど。魔物は俺のリュックの中に保存しておくよ。料理は俺が担当するしかないな」
少ししょんぼりする2人。
「そのうち料理の得意な仲間もできるかもしれないしな」
旅を続ければそんなこともあるだろうな・・・
3人で色々な事を試したり、お互いに戦い方を伝えたりしながらひたすら西に向かって歩く。時々、俺抜きで何かを話している2人を見るが、仲が悪いと言うこともないようでほっとした。
3人は、休憩を取りながらもほとんど歩き続け、夕方頃にはその日野宿する場所を決める。仲間ができたので夜も交代で眠ることができるのが大きい。
俺が朝飯を作っていると起きてきた2人が、「おはよう」と言ってたき火の周りを囲む。
「今日は何ご飯?」
人族のご飯に現在夢中のポコロが食い入るようにフライパンの上を見る。
「今日は、朝からで申し訳ないが、鳥肉のソテーとコンソメスープ、あとはパンだな」
「トシヤの作るご飯って調味料?ってのが入っているから美味しいのかな?」
ヒルデも不思議そうに言うが、この世界では、まだは塩くらいしか調味料を見ていない。味噌塩醤油に砂糖、胡椒、酒に味醂にコンソメやら使える俺は特別なのかもしれないな。
「そういえば、この世界に酒はないのか?」
「えっとね。ドワーフが好きで作っているって聞いたことがある」
ポコロが言う。
「人族と獣人族もお酒を飲むわね。人族がブドウとかでワインとか言うお酒を造っているよ」
「そうか。まったくないわけではないのか」
酒は、飲めないわけではないが、あまり得意でもなかったな。一度、記憶がなくなるほど飲まされてからは、飲み過ぎないように気をつけている。
「トシヤ!何かに囲まれてる!」
突然、ヒルデが叫ぶ。囲まれている?
周囲に視線を飛ばすが、なかなか相手を見つけられない。
「どこに?」
ヒルデに聞くもヒルデも首をふる。
「気配は、間違いないけど。姿がみえないわ」
確かに何かがいるような気配があるが・・・。どうにも姿を補足できないな、どれ試しに・・・。
「燃えろ!」
なんとなくだが、気配のある方向に向かい火魔法を使う。ごおおおおおおっと勢いよく炎が手の先から噴き出した。
「え?」
「「ええ?」」
今までに使った火魔法とはけた違いの炎が吹き出し、驚く俺に驚く2人・・・。おかしいな、煮炊きか着火程度にしか使えなかったんだが・・・。噴き出した炎が気配のある場所まで到達すると
「ギチギチギチ」
大きな顎を鳴らす・・・巨大なカマキリが姿を現した。魔物か・・・
「擬態する昆虫だ。まだほかにもいるかもしれんからな。気をつけろよ特にあの鎌には!」
ヒルデとポコロにそう指示すると剣を抜き現れたカマキリに対峙する。1m以上ある鎌は、光沢を放ちその鋭利さを示す。一応会話もしておくか・・・
「あーあー。俺の言葉がわかるか?」
「ギチギチギチ!」
だめだな・・・完全な魔物だ。上段から振り下ろされる鎌を剣でいなし、追撃に入るがもう1本の鎌で受けられる。剣と鎌が触れ合う毎にキン!と甲高い音がなり響く、数合打ち合うも互いに決定打が出ない。どうやらヒルデ達もそれぞれ現れたカマキリと戦闘に入ったようだ。
さて・・・。もう一度火魔法を試すか、さきほどと同じ方法で炎を出す「燃えろ!」、再び燃え盛る炎がカマキリを襲う。
「ギギギギ!」
昆虫系は、炎を嫌うだろうよ。炎でダメージを負ったカマキリを剣で追撃する。両手の付け根付近を両断し、危険な鎌を取り除くと武器を失ったカマキリの首を落とす。
振り返り、ヒルデを見ると素早さで圧倒したのか首を後ろ側から切りさいていた。ポコロは、数撃被弾したようで、腕には切り傷ができていたが、カマキリを組み伏せ圧倒していた。
どうやら3匹で行動していたようで、それぞれが1匹ずつ倒す事になった。ポコロが組み伏せたカマキリの首をひねるようにちぎる・・・。嫌な音が聞こえたあとも身体はビクビクと動いていたが、そのうち動くのをやめた。
この鎌は何かに使えるかもな・・・。そんな気持ちで魔物の死体を回収する。その後、ポコロの腕の傷を治癒魔法で治療していると
「今度は、会話もできるかもね」
とヒルデ指を指す。指の先には、やや小さい人型の種族が数人立ち、こちらを警戒している。
「あー。言葉が通じるか?」
「お?僕たちの言葉が話せる?・・・なぜ・・・」
「ああ。俺達は、色々な種族の言葉を話せるからな。それでお前達は?」
「僕たちは、ホビット族だ。君達は、強いな・・・あのカマキリを倒すとは」
「まあな。それなりには、戦えるつもりだ。それよりも狩りの邪魔か何かをしてしまったか?」
「いや。僕たちにはカマキリは倒せないから。僕たちには、特別な力も魔法もないからこの森でひっそりと暮らしている。君たちがよければ僕たちの村へ来ないか?強き者は歓迎する」
友好的な種族だな。反対する理由はない。
「ああ。それじゃあ。遠慮なく村にお邪魔することにするよ」
「僕たちについてくると良い」
ホビット達に連れられる形で村へと向かう。道中聞いた話しでは、この森の先に三日月型の湖があり、そこには、3種族がいる事がわかった。
「それで、湖にいる種族はどんな種族なんだ?」
「1つは、魚人族。水中と陸地を行ったり来たりできる種族で湖の東側に住んでいる。人魚や半魚人とかだね。もう1つは、獣人族の中の猫族だよ。湖の西側に住んでいる。そして、僕たちホビット族が南側に住んでいるんだ」
「獣人族がいるんだ・・・」
ヒルデが関心を持つ。
「数が、一番多いのが獣人族だよ」
「それぞれが共存しているのか?」
重要な事を聞く・・・しかし
「それがね・・・。僕たちは、争いを好まないからできれば皆仲良くしてほしいのだけど。獣人族と魚人族はとても仲が悪いんだ。それで僕たちがいる南側は、よく2つの種族が争うので迷惑しているんだ」
「あれ?わざわざ南側に来るの?」
ポコロが聞く
「北側には、毒を持つ魔物が多く生息するからみんな近寄らないんだ。それで、獣人族は湖を渡れないから南側を通行するんだよ。魚人族は、湖を渡れるから直接獣人族のいる場所に行けるのだけど、数が少ないからあまり攻めたりはしていないみたいだね」
ホビットの話しをまとめると。数が多く湖の覇権を狙う獣人族が度々魚人族を攻撃している。魚人族は、数が少ないが地の利があって有利な戦いをしている。間に挟まれてホビット族が迷惑していると言う感じだ。
「なぜ獣人族と魚人族は、争うんだ?」
「昔は、魚人族が湖で獲る魚と、獣人族が狩った魔物なんかを交換したりする交流もあったみたいなんだけど、いつの間にか仲たがいして争うようになったんだ。詳しい事はわからないよ」
昔は、それほど仲が悪くなかったのか・・・。
「それでホビット族はどうしているんだ?」
「僕たちは、自分たちの森を荒らされなければ良いだけだよ」
静観か・・・。獣人族と魚人族が争っていても関係ないのかもしれないな
「あ、もうすぐ僕たちの村につくよ」




