助けて19話目
バードマンの代表カラコム達と共に巨人族の城へ向かう。途中バードマン達と色々な話しをしたが、話すとさまざまな情報も知ることができた。ポコロもバードマンと俺との会話を聞いているうちにところどころの会話を聞き取ることができたようで、時折、会話に混ざってくるようになる。カラコムもポコロの言葉の端はしを聞き取ることができる事に驚いていた。
巨人族とバードマンの間にあった様々なすれ違いや誤解がゆっくりと解けていく。
巨人の城に着くとバードマン達は少し緊張したようだが、ポコロが大丈夫と伝えるとホッとしたのか覚悟を決めたようだ。
巨人の城の入り口には、タイクーン王が、娘の安否を心配して待っていた。
「ポコロ……無事か?」
「父さま。私は、大丈夫です。それよりもバードマンの皆さんが」
ポコロの案内でカラコム達バードマンが、王に膝をつく
「通訳いたします。バードマン達は、先日の諍いについて謝罪したいとのことです。また、こちらからの提案については賛同し、今後可能な限り共に歩みたいとのことです」
「父さま、私にもバードマンの言葉が片言ながら理解できるようになりました。彼らのおかれていた状況を聞きましたが、本当に追い詰められてのことでした。今回のように話し合う機会があれば、あのような悲劇は決っしてなかったものと思います」
タイクーン王が、ポコロの肩をたたく。わかっていると言わんばかりに
「トシヤよ伝えてくれ。我らは、今回の事は我らとバードマンが歩みよる機会であったと考えることにした。これからは、共に助け合い互いの繁栄を望もうではないかと」
言葉をバードマンに伝える。タイクーン王の言葉を知るとバードマン達は、涙を流し喜んだ。
「トシヤよ。巨人の王に伝えてくれ。我らは、これより巨人族とともに生きる道を選ぶと。共に助け合う事で多くの子供たちに未来を用意したいと」
これで、ようやく提案を両者が受け入れた。言葉の壁を乗り越え共存の道を歩むと。
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それから数日、両種族の打ち合わせが続く。俺も通訳に忙しい。よくよく聞けば、ワイバーンは巨人族にとって貴重な食料であり、ごちそうなのだそうだ。ワイバーンが群れでいると聞いた巨人族の戦士たちが、今後、ワイバーンを見つけたら情報が欲しいとバードマンに伝えるとバードマン達が驚いていた。
あと、バードマンの女たちが、自分たちの羽とトワと言う木のツルをほぐして繊維にしたものを加工し生地にしたものを巨人の王に有効の証として進呈した。衣類事情にも課題のあった巨人族にとってなによりの贈り物となったようだ。
種族間の交流が進む中、カラコムの提案でバードマン達が巨人の言葉を覚えるようにするとのことだ。これで意思疎通が進めば、さらに加速的に協力関係が築かれることだろう。
さらに数日後、提案していた事案の1つである食糧問題の改善について動き始める。俺はリュックの中からこの世界の野菜をいくつか取り出し、簡単に調理して食べさせた。双方の代表数名に味見をしてもらい食べられる事や調理の仕方を理解してもらう。畑で作るのは、地球のおよそ10倍はあるような巨大なサツマイモにした。両種族の代表にも好評だったからな。サツマイモは、量もさることながら保存にも適しているので期待したい。
農作業と言う概念がない両種族に適材適所を考えながら役割分担する。大木で作った農作業用具を巨人が使うと一気に開墾が進む、巨人が開墾すると岩だらけの荒地もあっと言う間に畑に変わっていった。大型重機も顔負けだな。ある程度畑の形ができたら細かな管理はバードマン達の役割だ。
こちらから農作業について細かな事までのすべてを教えるつもりはない。これから共同して作業していくためには、2つの種族で相談しながら工夫をしていく必要があるから。
また、狩りをする戦士たちと連携して牛型の魔物の群れを探した。バードマンが上空から捜索し発見すると巨人達と連携して魔物を事前に作っておいた柵の中に追い込んだ。柵は、巨人族の協力で建てられ、かなり広大な面積を柵で囲うことができた。この中で牛型の魔物を飼い増やして食べる事を提案した。バードマンの長老の話しだと、牛型の魔物は年に数回子供を産むようなので雄数匹と多くの雌を飼い増やして食べる事にした。これも両種族の協力があって初めて可能となる。
今回の事で、2種族が連携して狩りをすると効率が良い事がわかる。索敵は、バードマンが行い、巨人が狩れば大型の魔物でも簡単に狩ることができる。
こうして色々な形で2種族が協力体制を作る事で、お互いに必要とする関係が構築されていく。
俺と共に行動していたポコロが、畑で共同作業を続ける2つの種族を見ながら
「一緒に力を合わせるとできる事って増えるんだね」
「ああ。お互いにな。それぞれの生活だってきっと豊かになるだろう」
「トシヤは、この世界をこんなふうにしたいの?」
「そうだな。これも共存の形の1つだしな。争い奪い合うだけよりも互いを認め合い協力し合えば豊かになれることもあるからな」
「ねえ? トシヤは、この後も世界を旅するのでしょ。その旅に私もついていっちゃだめかな?」
突然の申し出だな。だが、仲間としては申し分はないし、きっとヘファイ様も喜ばれるだろうな。
「俺は、今1人だが、実はもう一人獣人族の仲間がいるんだ」
そう言って俺はマジックストーンを取り出してポコロに見せた。
「これは、仲間の位置を示すマジックストーン。今これを頼りにその仲間がこちらに向かっているんだ。おそらくあと数日もすれば合流できると思っている。俺は、同じ目的を持つ仲間……少し違うか。同じような目標を持つ仲間と旅をするつもりだ。獣人族の、そう彼女は、種族間の争いで犠牲者がでない事を願い俺と旅する事を決めた。君は何を目的に旅をするんだい?」
「そうね。今回の事で私は、たくさんの事を知ったわ。他の種族との関係を絶ち、自分たちで生きるこことは間違いじゃないけどきっと正解でもないと思う。結局、いつかは他の種族と関わりをもたなくちゃいけない。だったらたくさんの事を知れば、恐れたり疑ったりせずに関係を持つことができると思うの。今回だってバードマンの事をもっとよく知っていればもっとうまく付き合えたはずだもの。共に歩むには、言葉も文化も違う。でも相手の事をきちんと理解できればうまく共存することもできると思うの」
知らないことは不安につながる。知らないことは恐れにつながる。相手を知る事は、融和への第一歩か……。
「なら、ポコロの目的は、世界を知る事だな。たくさんの種族に会い互いを理解するって事だ」
「そうだね。もっと色々な種族の生活や生き方なんかも知りたいわ。そして、うまく付き合うために色々とアイディアを出すの。そしたらもっとお互いに幸せになれると思う」
「俺は旅への動向には賛成するが、タイクーン王が反対するんじゃないか? ポコロは巨人族の王女だろう?」
「確かに私は、王女だけど。ほら今は小人と同じサイズだし、当分は戦士の仕事もできないから。その間に色々と勉強するのは、巨人族にとっても良い事だと思うの。だから反対されても私は、父さまを説得してみせるわ」
決意は固いようだが、あの王がはたしてそれを許すだろうか。
「わかった。それはポコロに任せるよ。そのかわり説得できなければこの話しはなしだぞ」