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助けてヘルパーさん  作者: 塞翁が馬
17/23

助けて17話目

 王の許可を得たポコロは、自分を包んでいた布を器用に裁断すると簡素ながらもきちんとした服を作った。


「一度、小人みたいな服を着てみたかったんだよね」


 大きな巨人には、選べるほどの服を作ることはできない。大量の素材が必要なため作るにも膨大な時間がかかるからだ。


「男ものかもしれないが、少しきれそうな服をあげるよ」


 俺は、リュックから未使用の着替えを数枚出してポコロに見せる。ポコロは女性だが、身長は俺よりも大きく2mくらいはあるからな。小さくなっても巨人に変わりはない。小さくなってもポコロが着れる女性物はなかなかないだろうしな。結局、何とかきれそうな服を選び、準備を済ませる。


「ちなみにこの身体っていつまでこのままなのかな?」


 ポコロから予想していた質問が届く。


「すまないが、俺にもはっきりとわからないんだ。状態異状耐性が高い種族だと早めにもとに戻るらしいが、ポコロがどのくらいでもとに戻るかは正直わからない」


「そっか……じゃあ。それまではこの身体を楽しまなくちゃね」


 ポコロは、明るく振る舞うがきっと不安もたくさんあるのだろう。


 準備がある程度できた俺とポコロは、王たちから幾つかの条件や考えを聞き、妥協できそうな部分を検討する。ついでに幾つか提案してみると「そんなことができるのか?」と言われたが、まあ、交渉次第だろうな。


 ポコロが親善大使って扱いで、俺は同行のボディーガードってことになった。


 出発する日は、途中まで巨人の男性に送ってもらい。そこからは徒歩で歩くことになった。


「うわー! すごいねこれ」


 今までの視線では見ることのできなかった世界が広がり、ポコロは驚きを隠せない。


「上から見てる景色とは全然違うね」


 そういうと茂みで野イチゴのような物を見つけ口に入れる。


「あんまーい。こんな果物があるんだね~」


「おいおい毒があったらどうするんだよ」


「トシヤがいれば毒は大丈夫でしょう」


 これまでは小さすぎて味などわからなかったのだろう。ふと、リュックからパンやらを取り出してポコロに渡した。


「これって? 人族の食べ物?」


「ああ。パンって食べ物だ。小麦っての粉にしてから焼いたものだな」


 説明も適当だが、パクリとポコロがかじりつく。


「うわっ! これ美味しいね。いつもこんなの食べているの?」


「そうだな。これが、主食の一つだからな」


「いいなー。色々な食べ物が食べられて」


 巨人の食生活はけっこう寂しいからな。どうしても材料のサイズが足りない。巨人サイズのパンを作る方法なんてないだろうし。


 ガサッ!


 俺達の前に鹿型の魔物が顔を出す。ポコロが獲物とばかりに近くにあった木を拾うと猛然と襲いかかる。しかし、今までの経験からかうまく近づけない。


「もうすばしっこいんだから」


 今までは一歩で近づき頭上から一撃だったんだろうな。俺は、リュックから巨人の街で自作したクロスボウを取り出すとてこの原理を使って矢をつがえる。魔物に狙いを定めると


 ドスッ!


 首筋に矢が突き刺さると、数歩歩いた後に魔物は倒れた。倒れた獲物に向かってポコロがやったとばかりに近寄る。


「あぶない!」


 倒れたばかりの魔物がまだ死んだとは限らない。案の定、鹿の魔物は、最後の抵抗に角をポコロに振り上げる。


「痛いっ!」


 ポコロの右手に角が触れるとそこから鮮血が流れる。俺は剣を取ると魔物の首に差し込み止めを刺した。


「早く手を出して!」


 すぐに傷口を見る。浅いが15cmくらいの裂傷ができている。これならと治癒魔法を使う。みるみるうちに血が止まり傷口がみみずばれのようになっていく。一応包帯を巻いて治療を終える。


「痛い。痛いってこんな事なんだね」


 ポコロが言う。巨人を傷つける事ができる魔物はほとんどいない。怪我することも少ない巨人は、痛みを知らないのかもしれない。


「そうだな。痛いってのは、それだけ怖いってことだ。だけど、弱い側は痛みを避けるために色々と工夫するようになるんだ」


 そう言ってクロスボウを見せる。


「自分の力で狩れないときは、相手に合わせて道具も使う」


「バードマンたちには、それが毒だったと言うの?」


 ポコロは、少し理解したのかも知れない。


「そうだな。そう考えてもいいだろうな」


 実際、巨人と戦うならどの種族も考えることだろうしな。ポコロは、少し考えるしぐさを見せる。きっとこれまでの事やこれからの事を考えているのだろう。


 ポコロと一緒にバードマンの住処へ歩く、遠くに旋回するバードマンの姿が見えた。


「おそらく巨人からの報復を警戒しているな」


「どうするの?」


「わざと見つかって話し合いに持ち込むつもりだけどそれでいいか?」


「今の私は、すぐに巨人だとは思われないと思うし覚悟はできているよ」


「わかった」


 ポコロと少し開けた場所を捜し、ちょうど良い場所を見つけると


「おおーい。ちょっといいかー?」


 大きく手を振りながら警戒中のバードマンに声をかける。声をかけられた事に驚くが、同時に自分たちの言葉を話されたことで困惑する。旋回しつつ、俺達の頭上まで来ると


「人族か。このような場所に何の用だ」


「バードマンの皆さんにご相談とご提案があってまいりました。もしよければ代表の方にお会いしたいのですが、いかがでしょうか」


 丁寧に要件を告げる。対応したバードマンも自分だけでは返答できないと考えたのか


「よし、ここで待て。すぐに確認してもどる」


 そう言うとあっと言うまに空に消えた。空中戦ならかなり強い種族だな・・・。ポコロとしばらく雑談しながらバードマンが戻るのを待つ。しばらくすると少し身なりの良いバードマンが先ほど話したバードマンと共に現れた。


「お前らか我らの言葉を話す。人族と言うのは?」


「はい。少々違いもありますが、おおむねそのとおりです」


「どのような提案かを聞こう」


「あなた方バードマンと巨人族の事で相談があります。また、それとは別にあなた方にとっても都合のよい提案を持っています。もしよければきちんとした形でお話ししたいのですが」


 空の上と地面からでは、ゆっくりと会話もできない。首も痛いしな。


「よかろう。お前達を街へ案内しよう」


 身なりの良いバードマンが街までの同行を許可した。巨人と揉めている中、何か好材料となるようなものがあるなら受け入れると言う姿勢かもしれない。バードマンに案内されつつ、岩場をうまく使った独特の街がバードマンの住処だ。崖の面に対してあちこちに穴が開いており、それが入り口となっている。空を飛ばない種族では、簡単に攻撃することもできない作りだ。


 一番地面側にある入り口には、門があり外敵に備えている。俺達は、そこへ案内され、腰かけて待つように指示された。見張りに数人のバードマンの男が槍も持ち構えている。

 先ほどの身なりの良い男と共にいつしか巨人の城で貢物を納めに来たリーダーの男が現れる。


「お前達か? 人族の使者と言うのは」



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