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助けてヘルパーさん  作者: 塞翁が馬
12/23

助けて12話目

 鬼の親たちの願いもあって重篤化していた子たちの容体が回復していく。座る事すらできなかった子供がようやく座位で食事をとるまで回復した。


 俺は、まだ安心する事はできない。弱った身体は、余計な合併症を引き起こすかもしれないし。この後にはリハビリだって必要かもしれない。


 俺は、子供の親にその必要性を話す。今が一番大事な時だと


 それから数日、親たちの懸命の看病と治癒魔法の効果もあり、峠は越えたようだ。鬼たちの表情もどこか明るい。すでに回復した子供たちは周囲で遊んでいる。


 俺は、その間に、村にあった井戸の水や肉食する際の注意などを子供の親たちに伝える。水はできれば加熱する方が安全だと言うこと。特に小さい子供のうちは、生水は避ける方がよいと説明した。


 最後まで病気と闘った子が笑顔で走り回るようになるのに2週間もの時間がかかった。その間に聞いた話しでは、俺がくるまでに数人の子供が命を落としていたこと。その後、あっと言うまに子供たちが体調を崩していった事などがわかった。


 今は、警戒すらしていない鬼の子どもにあめ玉をわけている。子供は、種族に関係なくかわいいものだ。


「トシヤ! 遊ぼう」


 無邪気な子供が遊びに誘う。おいかけっこ……鬼ごっこでいいのかな? 逃げる鬼の子供を俺がおいかける。


「トシヤ。少しいいか」


 鬼の長が俺を呼ぶ。子供たちの不満をなだめながら長の元へ向かう。長の家に通された俺に長は頭を下げた。


「礼が遅れた事を謝る。俺達の子供が助かったのはお前のおかげだ。感謝してもしきれん」


 だが、俺は考える。これで終わりじゃない。


「お礼には及びませんよ。俺もこうしてご馳走になっていますしね。困った時には、お互い様です」


「お互い様か……」


「ひとつ、お願いがあります」


「ああ。おまえの頼みなら聞かないといけないな」


「頼みと言うのは、妖精族とのことです。今回の事で向こう側にも不安や心配をかけてしまいました。長には、申し訳ないですが、俺と一緒に妖精族のところへ来てもらいたいのです」


「妖精族のところへ?」


「はい。このままだと妖精族と鬼族は、互いに恨み合うような関係になってしまいます」


「そう言うことか。それは、我らとてそうすることに反対はないだろうが、おまえに何の得がある」


「そうですね。僕には、目的があります。その目的は、この世界の多くの種族が共存できる世界とする事です。ですから鬼族と妖精族が共存できれば、それは俺の目的と一致します」


「面白い事を考えるな。わしにはそんな考えは思いつかん」


「そうかもしれませんね」


「だが、さっき言ったようにおまえには恩義がある。承知した妖精族に謝ろう」


 長が謝罪を引き受けてくれる。もう少しだ……


 俺は、長と2人の鬼の男と一緒に妖精のいる森へと進む。


「妖精たちよ。トシヤだ。今日は誤解を時に来た。姿を見せてくれないか?」


 しばらく気配がなかったが、1人の妖精が現れた。


「どんな御用かしら?」


「言葉のすれ違いから誤解があった。少し話しを聞いてほしい」


 俺は、丁寧に事の顛末を語る。なぜ鬼が妖精を襲ってしまったのか。なぜ鬼が追い詰められていたのかを……


「そのような事があったのですか? それでこのようなことが……」


 すると妖精は、懐から小さな包みを取り出す。


「それは?」


 俺が聞くと


「これは、そうですね。マジックアイテムなのですが、月の雫と言うものです。万病にまでは効きませんが、少しくらいの病ならば握らせておけば回復するものです。ただし、このマジックアイテムは、私どもの側を離れるとただの石ころになってしまうのです」


 俺は、鬼族に妖精族の話しを伝える。


「では? それを手にしても無駄だったと言うのか」


 鬼族の男ががっくりとうなだれる。


「そこでなんだが、今日は、今回の謝罪と提案があるんだが」


 俺は妖精に提案する。まずは、鬼族がきちんと謝罪する事


「それと、俺からの提案だ。それぞれ聞いてほしい。この森には危険な魔物も多い、外敵も来るかもしれない。鬼族には強い戦士がおり、魔物や外敵に強い。だが、妖精族は戦いには向かず外敵には弱い。しかし、鬼族は、怪我や病気の時に頼れる魔法や薬がないが、妖精族には病を治す魔法や薬がある。そこで、森は鬼族が守る。妖精族を外敵や魔物から守るんだ。そのかわり、鬼族の中に怪我や病気の奴が出たら妖精族はそれを治療してもらうようにする。2つの種族が助け合えば、今よりずっと豊かな暮らしができるだろう」


 俺は、双方に同じ話しをする。妖精も鬼も戸惑っている


「言葉が違ってもルールは作る事ができる。たとえば、この場所に……そうだな。この石の上に花を添えたら。鬼族が治療を求めていると言う合図としよう。その花を見たら妖精族は鬼族を治療する。鬼族は、普段から妖精たちが暮らしやすいように森を巡回するってのはどうだ?」


 さらに具体的な提案をする。


「そうしている間に、話し方や伝え方もわかるようになる。歩み寄ることができれば、もっとできることが広がっていくぞ。互いに利益があればそれは大きな発展につながるんだ」


「俺達は、トシヤに救われた。そして、妖精に悪い事をしてしまったからその案には賛成だ」


 妖精を見る。すると妖精は、急に姿をかえ女王の姿となった。どうやら女王が変装していたようだ。


「そうですね。あなたの言っている事は、悪い話しではないわ。むしろ私達にも利点があるから」


 そのあとは、簡単に約束事をまとめるため俺が通訳を繰り返す。すると


「うん? 今、妖精族の言葉が少しわかったぞ」


 鬼の長が言う。


「あら、そうね。気がついたらあなた方の言葉もなんとなく理解できるわ」


 神のヘファイ様のお力かもしれないな。長と女王だけかもしれないが、片言くらいなら通じそうだ。


「よかった。これで俺も安心して旅だてるよ」


「もう旅に出てしまうのか? おまえだったら村の者も不満はいわんだろう」


「そう言ってくれるのはうれしいな。けど、目的のある旅だらかどうしても行かなくちゃならないんだ」


 鬼も妖精も残念がってくれるのはうれしいな。


「あの子たちが、あなたにって」


 妖精女王が、そう言って出したのは、ミニマムの実だ。確かにうまいが。まあ、1つくらいなら影響ないしなもらっておこう。


「ああ。喜んでもらうよ。じゃあ、お礼にあめ玉を少し渡しておこう。鬼族の子供にも喜んでもらえたからな」


 俺は、女王にあめ玉が入った袋を渡す。


「それじゃ。仲良くするんだぞ」


 俺はそう言うとリュックにミニマムの実を入れて担いだ。ようやくヘファイ様が望んだ関係を少しだけ示す事ができたな


 ヘファイ様……俺できるだけ頑張るから



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