酒場にて…
入るとすぐに店員と思われる綺麗なおねーさん…に声をかけられる。
あれ…この人…耳が頭の上にある…??
「こんばんわなり! リーナ!!」
なり…? おまえは公家か…ん公家??
いつもの葛藤をしつつも、店員の耳とよくみたら尻尾がある。
失礼とは思いつつもジロジロみていると
「もうお仲間たちは上で始めているなりよ!」
「そして…この私をジロジロと嘗め回すようにみている男は誰ナリか??」
はっとした顔ですぐ視線を外に逸らす。
「あ、あぁこの人はちょっとゲート絡みで知り合った人で」
「あ、ダイコといいます。はじめまして」
「そうナリか。まぁいいナリ。はやく上へ上がるナリよ」
追い立てられるように2Fへ上がるダイコたち
「半獣人のリミラっていうの」
「あの店員さん?」
「そうそう。耳としっぽ珍しかった?」
「…多分。記憶になかったのかも」
2F奥のテーブルに陣取る集団が蒼眼クランとすぐに分かった。
上がるとすぐ見つかり手招きされ、集団に加わる。
椅子に座るとすぐにお酒っぽいものがグラスと共に届けられる。
「お酒…」
「ダイコはお酒飲めるの?」
「うーん。多分…」
「飲んだことあると思う。多分」
匂いを嗅ぐと甘い匂いが。果実酒のようだ。度数は控えめらしい。
一般的にまず最初の一杯はこの果実酒【チョーヤー】らしい。
なんか聞いたことあるような無いような…
「では本日の遠征を無事に終えられたということで」
「みんなの無事を喜びつつ」
「乾杯!!」
乾杯の音頭を取ったのは副団長のマルヤ・スカーナ
みんなには副団長というよりマルちゃんってよばれている
マスコット的な位置な人らしい。
マルちゃんは身長が140㎝ほどしかない小人族で、職業は魔呪師。
簡単に言うと魔法で敵をやっつける役らしい。
髪は瑠璃色のショートカットで
とても活発なやんちゃな子っていう感じ。
実際にゲート帰り際で戦いをみたけど、本来後衛なのに前線に出て魔物を
魔法で葬る姿から別名:肉弾魔 と周りから言われてるらしい。
すごい魔呪師らしいけど…こうやって見てる分にはまるで
自分の娘みたいな感じだな。何歳なんだろう。15くらい??
「だーーかーーらーーあたしぁいきおくれているのですーーーー!」
「は、はぁ」
「げーとにこもってもう10年くらいだけどーー」
「いっーーーーーーこうにあいてがみつからないのですーーー」
やばいこのマスコット。絡み酒だ。しかも性質悪いやつだ。
飲み始めてからまだ30分しかたってない。そんなに言うほど飲んでない。
「いやでも10年も無事に帰ってこれるだけで
凄いことじゃないですか。あはは」
「ん10年…??」
「そうよ。この身捧げて10年近く…あああああああ」
あれ…? このマスコット15才くらいと思ってたけど。
それだと5歳くらいから所属してることになる。
「あ、、あの、、つかぬ事聞きますが…いくつの時からゲートへ??」
「あぁん? 15のころからだ。」
「なんかもんくありそうだなこのやろーーーー!」
「え? じゃ…じゃあ10年ということは今25歳??」
「らいねん30だコノヤローーー!!!!」
ええぇぇぇぇ!! どうみてもこれ未成年だろ。
三十路手前とかありえん。。。
自分より年上…? いや。その前に自分何歳なんだ??
「マルはとても30にはみえないでしょ?」
「らいねん30だコノヤローー! まだだ!」
「ふふっごめんごめん」
そういって他のクラン員にも絡み始める。
「お酒弱いのに好きなのは悪い癖よね」
「あ、いえ」
自分の隣に来たのは治療師のヤン・ゴールドバーグ。
複数いる治療士の中で筆頭格のヒーラーさんらしい。
ていうかこのクラン総勢何人いるんだろ。
自然なカーブがかかった肩より少し長い黒髪に整った目口鼻。
美女だ。うん。美女。このあふれ出る色気は酒場に映える。
握りこぶし一つ分の距離は急に距離を縮め、顔がまじかに接近する。
「細い目…」
「あ、一応見えるくらいは開いてます…」
「うふふ…おもしろいコ」
酒場にはいろんな匂いが充満している。
お酒の匂い。煙の臭い。油のにおい。
だけどこの空間には嗅いだことのない、いい匂いが充満している。
「あなた…登録紋ないんだってね」
急に胸がドキッとする。登録紋がない事の重大さではなく。
「あ、はい。ないみたいで…(汗」
「うち…くる?」
「うち? このクランですか??」
急な話で目が泳ぐ。泳いだ先にヤンと目が合う。
しばらく見つめあっていた二人のわずかな隙間から
鬼のような顔をした団長様が割って入る。
「なにしてるのかしら おふたりさん(怒」
ひきつる鬼がそこにある。
「あらリーナ。ちょっと勧誘をね」
「この子登録紋ないっていうじゃない。だったら…ねぇ?」
どういう顔をしていいかわからない自分に、鬼は睨みつける。
「ダイコはどうするの? 今後。」
不機嫌そうに言い放つ。
「いやどうもこうも。」
「いまの自分は今日から新しく生まれたようなもんだし」
「そもそも冒険者とかの前にこの世界すらわからないわけで。」
「いうなれば赤ちゃんみたいなもんで」
冷や汗をかきながら言い終わる前にリーナと自分の間を割り込むように
ヤンが腕を絡め寄せる。
「じゃあこの赤ちゃんは保護者が必要ね」
「わたしお母さん役よりはもっと別の役が得意だけど…」
再び胸が高鳴る。
その時横からもたれかかる誰かが。天の助け? いや…