帰還3
中央街を囲うように高い壁…城壁みたいなものが
先が見えなくなるまで続く。
その前には堀があり、水が貯められている。
もはや川という大きさの堀だ。
中央街には複数の出入り口【門】がありここは南門【アレス門】。
戦争用に備えてあろうと思われる門だ。左右には塔があり、
矢を装備している兵がチラチラ視界に入る。
門の大きさはゲートより大きく高さ30mはあろうかという大きさに
幅も同じように30mはあろうかという広さ。
門番みたいなものいるしこりゃ本格的だ。
…なにが本格的??
そう心にささくれたつ違和感をスルーしつつ門を抜け
一路中央街中央部にある大聖堂へ向かう。
門から連なる大通りには軒を連ねるように商店が立ち並ぶ。
武器・防具・何やら怪しい色をした薬っぽい何か、食糧。
ここ南門はゲートに一番近く、冒険者が必ず立ち寄るルートであるため
そういった商店が数多くあるとのことだった。商店だけではなく、
ギルドの分店や公共施設・宿屋・酒場などとても密集している地域らしい。
キョロキョロしながら初めて見る品々に心奪われつつ、大聖堂へ到着し
さっそく大神官へ診てもらうことになった。
「リーナ団長。我々は先にギルドへ報告行ってきます。」
「ごめん! お願い。後で酒場で合流しよ!」
クラン員達と分かればなれになり二人で待合室へ移動した。
「あの、リーナさん。なんか色々と面倒かけてしまってすいません。」
「気にしないでよ。あそこで放置なんてできるわけないし」
「それに…いろいろと…その…興味あるし…」
「興味?!」
「あ、いや…えと…その…ほら! 丸腰で最下層行くくらいだし
どれほどのレベルの冒険者かなーーって」
顔を少しそむけつつモジモジしながら慌てて反応するリーナ。
「冒険者…か。そもそも自分って冒険者なのかな…?」
「え? いやまず間違いなく冒険者でしょ」
「なんで? そう言い切れる根拠は??」
「だってゲート内にいたのよ? てことはまず間違いなく冒険者でしょ」
「ゲート内にいたことが根拠なんですか??」
「そりゃそうよ。だってゲートに入れる鍵持ってないと入れないもの。」
「鍵…?」
「そうよ。ゲートに入るには必ず鍵が必要であり、鍵はギルドに
所属している冒険者でないと手に入れられないもの。」
「だけど…鍵とか何も持ってなかったですよ??」
「あぁ…鍵っていうか証っていうか」
「そだ。その前に登録紋確認してもいい??」
「登録紋??」
「そう。冒険者がギルドに加入したら背中にギルド所属の
登録紋を魔法で刻むの。」
「加入した時期とか名前とかそういう類のもので、
のちにクランに入ればそのこともね」
「じゃあ…リーナさんも登録紋背中にあるんだ?」
「もちろん。さぁちょっと背中めくってみて」
この妙に動きづらい服の上着をめくりつつ、背中をリーナに見てもらう。
「……ない。」
「そんなわけ…隠されてる?? いや…そんな登録紋あるとか聞いたことないし…」
リーナは困惑の表情をみせつつ、ぶつぶつと独り言を言い始めた。
ちょうどその時、大神官の使いが待合室から本殿まで移動の連絡が告げられた。