帰還2
今いるゲートとよばれるダンジョンの入り口は、中央圏にのみ
存在しており、南方絶壁に多く存在している。
自分が発見された場所は【月灯りの洞穴】と呼ばれるゲートであり、
比較的中級者向けだ。11階層で構成されており魔物もゴブリン・中層には
オークが住み着いており、人型亜種系で構成されている。
育成にはもってこいのゲートで、蒼眼クランも団員育成の為に
来ていたとの事だった。
ゲートから中央街までは徒歩で3時間少々。そんなに遠くない。
このびっくりワープにまだドキドキしつつも、一路本拠のある
中央街まで戻るのであった。
戻る途中、自分がみんなと服装が違うことに気付いた。
そもそも武装はしていないのだから当然なのだが、形状が明らかに
違うのである。
上下黒の柔らかい布をはおり、白い襟がついたシャツに
何やら首元に赤のロープを巻いている。
最初リーナが貴族? って聞いていたのは後々わかることとなるが…
やたらポケット多いな…この服は。ポケットをまさぐっているとなにやら
古代文字で書いてあり、白く、服に縫い付けてある証みたいなものを発見する。
A…O…KI…? あおき? なんだこれは。
人の名前だろうか。これを作った人の銘なのか…悩んでも答えは出ず、
そうこうしているうちに中央街へたどり着くのであった。
中央街…それは中央圏中央に位置する最大都市の名前である。
そもそも中央圏はこの世界にある3国のどの領地にもあたらない中立地である。
理由は様々あるのだが、まずここにしかないものがある。それは
ゲートと呼ばれるダンジョンである。
ゲートはこの中央圏付近にしか存在せず、それを攻略する目的で
集まった人々達【冒険者】達が最初に休息場所の為に作った
場所が中央街であった。
それは1000年以上前の話であり、当時はもっと国があり空白地も
多数存在していた。
その一つが中央街近辺であり、そこに不思議なゲートが発見され、
そこから発見される未知の鉱石・アイテムを人々は求め、
休息所から村になり、そして街になり、都市になり今日を迎える。
経緯はこのようなものだが、そこに至るまでに様々な組織が生まれ、
その中でも一番重要である組織【ギルド】が誕生したのである。
ギルドとは当初冒険者同士が互いに情報交換等おこなう寄合組織で
あったが、未知の鉱石・アイテムが発見されるにつれて利害の
不一致による冒険者同士の諍いが絶えず行われ、クラン同士の戦争が
危惧される事態となってしまった。
そこで当時12の有力なクランが集まり、自治組織として誕生したのが
【ギルド】であり、今日では様々なサポートや場合によっては法に
よる拘束等行う中央街で一番の組織となったのであった。
国に代わる自治組織と言ってもいいだろう。
ここ数世紀においては、時代の変遷によってギルドに求められるものも
変わっており現在ではこの中央圏を統括し、運営する組織として
機能していた。
その他ギルドが司るものは多数あり、その中でもゲート通行権を
管理している唯一の組織でもある。
ゲートは鍵が無くては入ることは叶わず、現在発見されている
51のゲートは全てギルドが鍵を独占・管理しており、
冒険者たちがゲートに入るにはまずギルドに所属することが
第一条件となっているのであった。
ゲートから発見されるものは全てこの世には今まで存在しなかった
ものばかりで、それは国を治める者たちにとって莫大な利権・利益に
なるものでもある。
ゲートを誰が統治・独占するのかで国の興盛が決まるといった時代も
あったが、多数の実力者をかかえるギルドによって幾度となく防がれ、
今日では唯一の中立地、自治を認められる地域として確立するのであった。
ギルドができてから約900年、今では人口30万を超える都市として
成長を遂げ、一国家並みの力を備えるまでになった。
ちなみに中央街が中央都市と名前を変えないのは
ギルド法に名前が中央街と記されているかららしい。
ここまで来ると変えるには相当労力がかかるから変えない説の方が
有力らしいけど。