保護2
自分が保護されたのはゲートと呼ばれるダンジョン【迷宮】の
最下層11Fであった。
保護してくれたのは蒼眼とよばれる冒険団で、
その名前の由来でもある<蒼眼のリーナ・団長>が率いる
遠征中に発見・そして今に至る。
ほぼ探索も終え、そろそろ帰ろうかとした時に部屋から光が漏れている、
怪しい部屋があるとの報告を受け立ち入った所、自分がいたとの事で…
地上に戻る時に色々と尋問を受けるも、何も答えられる事もなくむしろ
この状況を教えるという有様に、困った顔をするリーナであった。
しかし…すごい美女…だな。初めてこんな美女見る。
蒼く、腰ほどまでに伸びたまっすぐな蒼髪に、
大きくお人形さんみたいなパッチリとした蒼い眼。
ていうか顔が小さい。身長は自分とほぼ同じだけど、
顔が明らかに小さい。
体には鉄? の胸を覆うプレートみたいな防具を仕込み、
腰には腰布? みたいな同じく鉄? のビラビラが、
スカートかな? を纏っている。
防具を着込んでいるにも関わらず、体のラインがとても美しく、
胸はどちらかというと…無い方だが、
引き締まった腕・足がまるでパリコレに出るモデルみたいだ。
…パリコレ? …モデル?? なんだそれ…?
うーん。口から出た言葉に詰まる。さっきから自分の頭の中に出る言葉に
それはなんだ?と考え込み、そしてまた湧き出る言葉にまた考え込む。
そんな話を聞きながら、しかめっ面をしている自分にリーナは
優しく声をかける。
「大丈夫? さっきから話すたびに苦しい顔してる」
「あ、いや、苦しいというかもどかしいというか…」
「心の中には記憶・言葉の源泉が、湖面いっぱいにあるのに、
それをすくえないというか…」
「考え過ぎは良くないよ。無理して悪化してもいけないし。」
「地上に戻って中央街に行けば医者や神官もいるし、なんとかなるよ。
もしかすると精神封鎖かけられているかもしれないし」
「精神封鎖?」
「あ、魔物が持つスキルの一つなんだけど、魔呪使いの持つスキルを
封じる厄介なスキルがあってね。」
「それかけられると稀に記憶喪失みたいな状態に陥ることがあるの。
それかもしれない。」
「うちにも優秀な治療者はいるけど、たいていは時間経つと
封鎖が解けるし、すぐに解呪できるんだよね。
「だけど解呪かけても変化ないし、もしかすると重度の
精神封鎖をかけられてるかもしれない」
「そこまでひどいと大神官クラスじゃないと解呪できないからさ。
なんにしてもここでは無理っていう話」
「そっか…」
「にしても…装備なしでっていうか丸腰でアイテムすら持ってない
状態でここまで来るってのもほんと神がかり的な状況だよね」
そう。保護されたときに持っていたものは何もなく、
いや、ポケットに薄い青色のカードと
白っぽいカードをだけ持っていた。
掌サイズの薄く青いカードの盤面にはこう記されてあった。
社…会…保険…証……??
なんだこれ…? 幾何学的な模様みたいな文字とも取れる言葉に
何か懐かしい物も感じる。
盤面中央は擦れているせいか上手く読めない。
だけど…なぜか読める…
これは文字だと心が告げる。リーナにもみせたがまったく読めず、
というか文字かどうかすらわからない。
古文書に精通する蒼眼クランの魔呪使いにみせるも
全く見たことのない文字だ…との事で。
同じように白く薄いカードには何やら首の長く黄色い動物?が
描かれており、その隣には
先ほど書いてあった文字より簡素な形でこう書いてあった。
na…na……co…??
ななこ? 読めるのだが、それが何を意味しているのか分からない。
裏面にも細かい文字が書いてあるのだが、何を意味しているのか
さっぱり分からない。
手がかりという手がかりもなく、そうして世界の事を教わりながら
地上へと一歩一歩進める。
「出口だ」