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「バン」から始まる英雄譚!  作者: こじましようこ(裏)
第三歩:英雄が生まれた日
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連合加盟!

第三歩:英雄が誕生する日。


 通商連合とのいざこざから丸一か月が経った。商店の方も順調にサンドビッチの販売を続け、商品の数も最初と比べると倍以上になった。早い段階で仕入れの強化と、調理を拡大したのが好走したようだ。

 収益も安定し、それにより商品開発や研究に回すこともできている。良い環境がまさしく築けているのだ。


 食品の仕入れも初期とは比べ、ファロンが組織立ってやってくれる事により原料不足には陥らなくなった。むしろ、市場以外でここまで大量に取り扱う商店はそうないだろう。


 調理にも変化が訪れた。ガリンが料理人として来たのは、商品開発においてもかなりの助けとなった。自分で天才というだけあって、確かに調理の腕は抜群。特に味覚がするどく、こちらがイメージで伝えるだけで、考えていた味を再現するのだ。ウザいけど、今やダイコ商店には必須の人物でもある。


 おやっさんはもともと手先が器用という事もあり、今では建物の改築や設計の方を担当してもらっている。大工仕事は得意だったが、まさか設計図面をかけるとは。人は見かけによらないというか。

 今はとにかく業務拡大の時期で、増築・新規工場建築に忙しく駆け回っている。


 グランジーナはもともと数字に強く、今では財務全般を一手に担ってくれている。ギルドに払う手数料・税金から、業者に払う代金等、お金にまつわることなら何でもである。拡大計画の資金計画の相談にはグランジーナは欠かせない。


 メイシャ・リズは売り場の責任者として頑張っている。特にメイシャ隊の働きはすごい。接客はまるでメイドのように、その天使のほほ笑みでお客様に対応する姿はかなりのファンを獲得している。聞くところによると、メイシャ隊という私設ファンクラブもあるとかないとか…

 リズは相変わらずだ。ふぃぃぃって感じ。たまに仕事を手伝ってもらったり、フレイアのお世話をしてもらっている。フレイアのお世話? それは機会があればあの事件も語る機会があるだろう……


フレイアは研究に没頭している。保存性理論を発表し、魔法学最後の難関といわれた保存エネルギーの解明をした今一番注目されている女学者だ。それを応用した理論の研究に日々励んでいる。



 あの誘拐事件後、何か嫌がらせ等してくるものかと思っていたが、驚くほど何もせず、むしろクンベルから使者が送られ、なんと謝罪してきたのであった。配下のベルガドが勝手に動き、誘拐・脅迫をしてゴメンナサイと…そういう事にしたいらしい。


 大人の判断でこの謝罪を受諾。首謀者のベルガドは既にダッカーランド内で逮捕され、裁判中との事。さすがに通商連合と戦争なんかできないだろうと…この判断に至ったわけだけど。

 なんか釈然としない。この謝罪において、ギルド側からも暗に受けなさいよと圧力かけられる始末だし。ホント、大人の世界は闇だらけ。政治が絡むと厄介なことです。うん。


 こっちも向こうと戦争する気はなかったから、渡りに船なんだろうけど。

 むしろこの程度で済んでよかったとファロンも言ってたし。商店続けられるだけでもありがたい事だと

割り切ってこの1ヶ月を迎えたわけで。



 そしてダイコ商店店主の自分だが、フレイアと協力しながら保霊箱の改良開発を行っている。

 ダッカーランド通商連合主催のお茶会時に告知した通り、あれから1か月後の本日保霊箱の販売が開始される。初期から比べると重さや頑丈さはもちろんの事、目玉の保存機能を大幅に向上させている。


 初期の保存性能は不安定な面があり、保存期間がバラバラな部分が問題であった。そこで保存力を新たに定義し、理論と現実のかい離を埋め、安定的な製品を作り出すことに着手。

 フレイアが新たな定義、式等を構築し、どのくらいの物・エネルギーを持った物体をどのくらいの保存エネルギーで保存できるかを実験によって解明させることに成功。それにより、保霊箱がようやく試験販売から量産へ移行することになった。

 バリエーションもお弁当サイズの箱型から、液体専用の水筒型・蓋がないオープン型の保霊皿を本日販売する。



 当初の予定では、あの発表後1週間内で発売する予定だった。しかし問い合わせの量が半端なくきてしまい、更にはギルド経由で各国から販売取扱の打診が、相次いでくる事態に発展してしまう。

 初めの計画では店頭のみでの販売にする予定だったが、商店周辺がパニックになってしまう恐れがあるとギルドから待ったがかかってしまい、ギルド主導の元、販売割当が設定される事になった。

 ギルド側からしても、各国に恩を売る機会でもあり、またギルドの商店クラン連合の地位向上にも繋がるわけで。三国のパイプ強化や、政治の駆け引き材料にもなるこの機会を逃すはずもなく。


 ギルドがこの販売を主導していい面もたくさんあった。今回とりまとめで判明した取引希望量である。

こちらとしては1日あたり1000個位の生産量を考えていた。ところが、中央街だけでも初回取引希望量が数万あり、更に三国から来た希望量は数十万もの注文がはいってしまう。こりゃ店頭で販売していたら、商店周りは業者の波で大変なことに。これで欠品が続けば不満からの暴動や治安悪化もあり得るとの事で。

 希望取扱いを希望している交易商だけでも数千あり、こんなものダイコ商店でさばけるほど事務処理能力もなく、そこを一手にギルドが窓口として取りまとめてくれるのは、大変ありがたいものであった。


 そこで販売を延期して、予定していた生産工場の生産能力を再度引き上げる事になった為、1ヶ月の後ろ倒しとなったのであった。もちろんギルドの強力なバックアップもあって1ヶ月で体制が整ったんだけど。

 色んな資材や、必須な機材が最優先で回してもらい、人員の確保や交易整備まで全て優先して構築して

もらって……そこまでの価値がある保霊箱を作り出せた事は、本当に凄い事を成し遂げたのだなぁと今更ながら実感するわけで。


 既に割り当てに応じて三国へ輸出を開始しており、予定された量が無事出荷された。

 もちろん、今後も安定量を輸出し続けなくてはならず、最優先交易品として指定されている。

ギルドが言うには、これからはもっと多くの注文が入ることだろうと。軍事関係の方で大量注文が入りそうだと、すでに下交渉に入っていると連絡が入っている。


 そんなこんなで、本日ダイコ商店の前にはいつも以上の多くの冒険者が並んでいる。

 いつもなら販売即売り切れ…なんて事が常だったが、今回は十分な在庫を用意している。

 そうして6時。開店する。


「保霊箱のみをお買い求めの方はこちらへお並びくださいぃぃぃ~!」


 店内はいつも以上の活気に包まれている。サンドビッチを買い求めるお客も多いが、冒険者クランが団体で保霊箱を買い求めに殺到している。蒼眼以外は関係が薄いからあまり考えなかったけど、こっちにもある程度割り当てをまわしておくべきだったか。今更ながら気付いてしまう。


 そんなこんなで、初日は無事終了。店内はいつも以上に疲れ果てているメイシャやリズがいた。

 その後ギルドから呼び出しがあり、今ギルドに来ているわけだが……


「初日お疲れ様。いつも以上に人が並んで大変な状態だったと報告は受けてますよ。」

「いえ、この程度で済んでむしろ良かったなと。ギルド側からの支援がなければとても。」


 そう言い出されたお茶をすする。今目の前に座って話しているのはギルドの商店クラン連合代表【セルランド・アーリマン】少し髪が白髪交じりのこの人は中央圏商店クランを取りまとめる商店クラン連合の一番お偉いさんで、今回の騒動に割って入った張本人だ。


「しかしながら今回の保霊箱販売。これにはギルド側からもお礼を言わねばなりません。」

「そんな事は。こちらは手厚い支援を受けて、むしろなければこんなすんなりと販売なんて無理でした。」

「商人歴はたしか…2か月くらいでしたか?」

「はい、その位です。」

「それならわからない事でしょうが、今回の保霊箱販売はこの中央圏にとって大変な利益となりました。」


そういって分厚く束ねた冊子を差し出す。


「これは…?」


そこに書かれていたのは、今回卸した店舗が記載されていた流通量の取りまとめた資料だった。


「書いてある通り、今回の流通量を店舗・商域によってまとめたものですが、その中でも東のエントランド。今回はそこの央国経済連合との久しぶり大きな取引が生まれました。」


まじまじと資料を見るダイコ。


「央国経済連合…ですか。たしか三大商人連合とか言われている…」

「そうです。エントランドにおいては、商人といえるかはわかりませんが。ここ中央街には三国の公館があるのはご存知ですね?」

「たしか、このギルド本部の北側にあるとこですよね?」

「ええ、この中央圏はその三国の公館があるのですが、それはひとえにこの中央圏中立地のバランスを保つためでもあります。」


「…中立を保つには、三国の力が拮抗しているからこそという事ですか?」

「その通りです。ですが、東のエントランドとは実のところ、中央圏と関係が疎遠なのです。」

「意外ですね。たしかあそこは共和制の国家ですよね。だったら尚更こういうとこには敏感かと思ってました。」


「昔はその通りでした。ですが、40年前に起きたエースランドとエントランドの紛争がありまして。」

「40年前…紛争ですか。」

「その紛争を終わらせるためにこの中央圏が仲介に入ったわけですが。その事で未だに根に持たれていまして。」


「仲介者が根に持たれるんですか? 落とし所をつくってもらって、むしろ感謝されてもいいのに。」

「当時の戦況からすると無理もない事で。実は南部を電撃作戦によって制圧され、軍事的優位に立っていたのですよ。」

「なるほど。そういう時に仲介ですか。停戦における領土割譲はなかったんですか?」

「ええ、実は南部を領土制圧がまずかったというか。こちらは王国との交易路を遮断されて、3本の経済路を分断される事態に陥りまして。力のバランスが一方的に傾くと、中央圏が一番立場が危なくなるというのもあり、ギルド総力を挙げて、停戦させたというのが真実となります。」


「そういう事だったのですね。それで根にもたれて、交易量も落ちて…と。」

「そうです。もちろんその後の経済的な見返りも行ったのですが、なかなか。そこでこの保霊箱が登場して、事態は40年ぶりに

いい方向へと向かう兆しができたのです。」

「それで、ギルドとしてはありがとう…と。」

「その通りです。改めて今回の保霊箱の件ありがとうございました。」


深々と頭を下げるセルランド。それに恐縮しきりのダイコ。


「もちろんギルドとしても、この功績に対して何もしないというわけはいかないわけで。」

「すでにギルドには随分と助けてもらっています。工場建設もそうですし、交易優先指定までしてもらって何と言っていいか。」

「それはギルドとして当然の事をしたまでの事です。そのために商店クラン連合はあるのですから。」


ばつの悪そうな顔をするダイコ。


「いえ、その、商店クラン連合に加盟してなくて…その…すいません。」

「気にすることはありません。むしろ本日はその事でお呼び立てしたのですから。」


えっ? とセルランドを見返すダイコ。


「保存性理論もそうですが、このような偉業を成し遂げた商店にはぜひ商店クラン連合に加盟していただきたく。」

「連合にですか? ですが、確か連合に加盟するには色々と条件があったような…」

「そうです。ある一定の功績と継続期間やもろもろ加入条件はあるのですが、今回は箱の功績を連合としては高く評価しています。つい先日の会合時にも理事全員から速やかな加盟を迫られたぐらいで。」


苦笑いするセルランド。


「そのような事になっていたとは。もちろん加盟できるのであれば是非。なにせ中央街に商店を構えているのですから。」

「ありがとうございます! その言葉を聞けて、あの理事達の重圧から解放されます。」


フフッと笑う二人。


「今回加盟に辺り、色々な規約については後で記した物をお渡しします。まぁある程度は把握してるとは思いますが。」


そういってまた別の紙を机に置くセルランド。


「そこには加盟における契約書と、階位について記したものです。」

「階位ですか?」

「はい。商人階位です。これは知っての通り、商人クラン連合が持ってる色々な施設や特典がありますが、

功績に応じて商人ごとに階位を設定しています。簡単に言えば、ギルドにより大きな貢献してくれた商人に

より大きな恩恵をあたえるわけです。」

「冒険者で言う級ですね? それの商人版だと。」

「その通りで。本来加盟したばかりだと、第10階位なのですが、今回は第3階位からの特別入会となっております。」


第3階位。どのくらい凄いことがさっぱりわからない。だけど、ここはリアクションしとかねば。


「それは大変過分な階位を!」


大げさに驚くダイコ。


「むしろ第1階位でも誰も文句は言わないと私は思いますが、重荷になっては元も子もないですから。」

「ありがとうございます! 謹んで入会させていただきます。」


契約書にサインをするダイコ。こうして世界三大連合の一つであるギルド商店クラン連合に加入した。


「そして、もう一つなのですが。」


豪勢に金で細工してある封筒を机に置くセルランド。何やら似たようなものを最近見たような…


「実は本日、エースランドからダイコさん宛てに招待状を預かった次第で。」

「エースランドから招待状ですか??」

「ええ、ダイコさん宛てというよりは、ダイコ商店に所属しておられるフレイア女史宛てなのですが…」

「フレイアがですか? もしかして保存性理論でですか?」

「そうです。エースランド王立学術院からフレイア女史へ、今回の保存性理論における解明についての功績を称えるため、

勲章と称号を授与したいとの事です。」


たしか入学するのも大変とか言っていたあの学術院か。


「知っての通り、世界の知識がそこにある、とまで言われる学術院からの勲章授与です。それも他国の商店お抱えの学者への授与は前代未聞の事で。これは連合、いやギルドとして是非出席して頂きたく。」


うーん。いきなりの事で正直何と言っていいか。あの魔王フレイアがまさか勲章を授与とは。


「こちらとしてはもちろん断る理由はありません。むしろ喜んで出席させます。フレイアもさぞ喜ぶことでしょう!」

「ありがとうございます。早速なのですが、明日エースランド公館へ、フレイア女史をぜひ向かわせて頂きたいです。」

「わかりました。連れて行きます。」

「そこで改めて授与の正式な通達と招待がなされる事になります。」


朝一で美容殿に行かせないとダメだな…

そうしてギルドにてセルランドとの会談は終わった。みんなに伝えることが山盛り過ぎてて何から話そうかな。



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