真夜中の決戦!
そうして道しるべを辿ること一時間程度。辿り着いた場所は……
「マハジャドの館……」
「まぁ、途中からそうだとは思っていたけど…」
「いざそうだってわかると、なんかあれだな。」
「このあたりは信じられないくらい警戒が薄いねぇ♪」
ぎょっと後ろを見るダイコ。いたのか…
「乗り込むんだろ? ダイコ♪」
無言で頷く。
そう、これは罠。わざと警戒を薄くしている。
こっちに来いと。理由も多分…
「みんなこっちへ♪」
館の横にある守衛室から侵入する。
守衛室には誰もいない。ここまであからさまにやられると、かえって不気味だ。
館の脇を通り抜ける。どうやらここから侵入して来いと、わざわざ警備をはずしている。
「ここまで罠ですってやられちゃうと、むしろすがすがしいねぇ♪」
とある部屋にたどり着く。すこしだけドアが開いている。
みんな無言で頷く。ガリンがそっとドアノブに手をかけ、開ける。
4人は勢いよく部屋へ侵入。散開して辺りを警戒する!
しかし部屋の中には中央に座っている人が…フレイアが座っている。
その後ろに長身の黒装束男が立っている。
「ずいぶんと早いお着きで。」
男が声を投げかける。
「フレイア! 無事か!!」
フレイアが何回も頷く。口にはなにか物を噛ませて話せなくしているようだ。
「お、おまえは…」
「久しぶりだな。ファロン、ロイ、そして…ガリン。」
「生きてたんだねぇ。驚いたよ。マルコ。」
え? 知り合い??
「こいつは、元冒険者でマルコっていうシーフだ。」
「懐かしいな。お前たち。あの競ってた頃が懐かしい。」
「おめぇあの時死んだはずじゃなかったのか!」
あの時?
「足はちゃんとついているさ、ロイ。」
「なぜお前が今更こんな事しているんだ!」
「なぜ? 今更? それは依頼されているだけだ。」
そういってフレイアの前に塞がるように立つ。
「これはビジネスだ。そこの、ダイコ…とかいったね?」
急に名前を呼ばれ、胸が高鳴る。
「もうわかっているだろ? 依頼主は君をご所望だ。」
わかってるよ! そんな事…
「あまり血を流したくない。ここは迎賓館だしな。それでだ。」
こちらへ一歩踏み出す。
「この子と君の交換といこうじゃないか。」
「なにいってんだお前!」
「外野は黙ってもらおう。」
マルコが指をパチンと鳴らす。
左右の扉から黒装束の男たちが雪崩れ込んでくる。
「君たちはすでに包囲されているんだよ。勝ち目は0だ。」
じりじりと、黒装束の男達が間合いを詰めてくる。
「普通はこんな事しないんだけどな。まぁ昔のよしみに免じてだ。
もちろん受けてくれるだろ?」
威圧してくる男達。一触即発ムードが高まる。
再びフレイアの後ろに立つマルコ。
フレイアと目が合う。しきりに視線を下に落とす。
ん?? 何か伝えたいのか?
よーーーーく見ると、足元に薄くスターサンドが蒔いてある。
変なラインが…まるで文字のように。
さらによく見ると、足にスターサンドがまぶしてある。
フレイアがふがふがと、声にもならない声を発する。
まさか…
「一つだけ聞かせてくれ! なぜこんなことを!!」
「それはきまってるだろ。後ろの厄介な三人がいるからな。」
後ろを振り返るダイコ。その時3人に手で合図を送る。
「少数で襲うにしても、三人がいるなら話は別だよ。
こちらも成功率を上げたいしね。」
合図を理解する3人。
「だから陽動して、お嬢さんをさらって、後日交換ってわけだが…
こんなに早くここに来られるとは。」
そういって笑うマルコ。
「計画は多少変更になったが、まあ、終わりよければっていうだろ?」
緊張する空気。張りつめたテンション…
「さぁダイコ。こちらに来るんだ。」
手招きするマルコ。それに応じてゆっくりと進むダイコ。
「ゆっくりとだ。そうゆっくりと。変なマネはしないようにな。
お嬢さんの美しい顔がどうなっても知らんよ?」
そういってダガーを顔付近に近寄せる。
手を上げ、ゆっくりと近寄るダイコ。2m内に近づいた。
フレイアがこちらを見る。頷いた瞬間…!
フレイアが大きく真上に足を蹴り上げる!
つま先には少量のスターダストが、勢いで舞い上がるっ。
舞い上がったスターダストはエネルギーがほとばしり、そして…
目くらましっ? っとダガーで防御しようとした、その時!
ドンッ!!!!!
強烈な光と、爆音と、空気があたり一面に吹きさらす!!!
勢いでフレイアは横に吹っ飛び、マルコは強烈な光と爆風で後ろに吹っ飛ぶ。
その瞬間ダイコがとびかかる!
急に視界がクリアになり、残光なんてお構いなし。
あの時と同じ世界が…静寂の中にゆっくりと映る風景。
マルコのまわりに煙が見える。赤蛇並みの量がある。
決着は一瞬だった。
後ろに飛び退くマルコは、すぐに体勢を立て直す。
向かってくるダイコを捉え、ダガーを構える。
構えた右腕から、ダイコの首筋、頸動脈へまっすぐと伸びる。
淀みない体の連携。不意を襲っても無駄のない身のこなしが、
マルコのレベルの高さを物語る。
その必殺の一撃をスレスレで見切るダイコ。
右へ抜けていき、合わせるかのように拳を胸に、心臓目がけて振りぬく!
ダイコの拳は、全身の煙が集まったかのように激しく荒ぶる!
触れた瞬間、黒装束の内側に仕込んであったブレストプレートが窪みだす。
メリメリと音を立てて砕け散るっ!
胸筋にめり込むダイコの拳。
拳が埋まる。
マルコの身体に突き抜ける衝撃!!
突き抜ける衝撃は、マルコを身体ごと後方へ飛ばす!!
窓まで吹っ飛び、派手に突っ込む!!
テラスからマルコが消える!
周りが更なる音に顔を向ける。
その刹那、3人は動き出す。
後は乱戦だった。
瞬く間に黒装束の男達を葬り去る。
大きな広間にたくさんの男達が、意識を失い伏せている。
おやっさんが最後の一人を思いっきり殴りつけ、戦いは終戦する。
「こんなもんかぁ?」
「ふう。いい汗かいたさ♪」
「久しぶりの戦闘だから腰が痛いっ。」
フレイアを縛っていたロープをほどく。ついでに口にかましたロープをほどくと…
「うあぁぁぁぁ! 怖かったぁぁぁぁぁ!!!」
飛びつき、抱き着き、わんわん泣き叫ぶフレイア。
よしよしとばかりに頭を撫でるダイコ。
「周りが騒がしくなってきたね。そろそろ出ようか♪」
一同は来た道から、迎賓館を出る。
警備を手薄にしたのが裏目に出たみたいだ。
そして一路、商店へ帰るダイコ達。
商店に到着すると、グランジーナ達が出迎える。
後片付けをする従業員の姿も見える。
「ふぃぃぃ! ふいっ! ふいっ!!」
さすがにそれは解読できんわリズよ。
みんながフレイアに駆け寄り、お互いの無事に安堵し、涙する。
「なんにしても、みんなよくやった!」
ファロンがみんなを褒め称える。
「一時はどうなるかとおもってたぞ。」
おやっさんもやっと一息。
「まぁ天才のボクがいれば、これくらいはね♪」
今日は許すよ、ガリンさん。ウザいけど。
「とりあえずは片付けましょう。」
時刻は既に4時を回る。
「やばいな。そろそろ仕込まないとまずい時間だ。」
店にはすでに片付けを始め、従業員が急ピッチで仕込み始めている。
彼らには盗賊が押し入り、撃退して今はギルドでダイコ達が
取り調べを受けていると話してあった。
ナイス! グランジーナ!
「今日はいろいろ朝からあるが、気を取り直していくよっ!!!」
ダイコが檄をみんなに飛ばす!
それに応えるみんな!!
空はすでに白みはじめる。
こうして、長い長い夜が終わったのであった。
そしてそのまた夜。
「うはぁぁぁ! 今日はとんでもない日だった!!」
メイシャが居間で叫ぶ。
「ご、ご迷惑をおかけして、その……」
「フレイアさんのせいじゃないよっ! 無事でよかった!」
「ふぃぃぃぃぃ!!」
ファロンとガリンが居間に入ってくる。
「おまえたちもご苦労さんだったなぁ」
二人に向かっておやっさんが労をねぎらう。
「まぁボクが…(以下略」
「おれは丸1日ギルドに監禁だったぞ。腰が痛い。」
ファロンは商店で起こったことをギルドに報告するため、早朝から出向き
今帰ってきたのである。
「今後の動きはどうなるんでしょう?」
「俺らが迎賓館で暴れたことはさすがに言えんからな。
賊のせいってことにしてるが。」
「あんなことしておいて、通商連合側には何もなしってこと??」
グランジーナがぷんぷんしている。
「しょうがないだろ。向こうは戦うには巨大すぎる相手だ。」
「むしろ、強盗事件という事にしておくのが落としどころさっ♪」
たしかに、これは向こうへ投げたメッセージ。
見逃してやるから、これで手を引けと無言のメッセージ。
「ここは中立地ですからね。これ以上大ぴらにしようもんなら、
今度はギルドと通商連合の争いになるし。」
「さすがにダッカーランド側も、ギルドと揉め事起こしたくないだろうしな。」
「しかしまぁ、おまえら通商連合が奪いに来るほどのモンこしらえたんだなぁ。」
「あたし達ってもしかして凄い有名人??」
ニヤニヤするメイシャ。
「有名なのはダイコとフレイアだろ。」
舌打ちするメイシャ。
「しかしボクは驚いたよ。ダイコがあんなに強いなんて♪」
「そうだな。俺も驚いた。赤蛇を倒したことは伊達じゃないな。」
「いやいや、あれはマグレというか、運の問題っていうか。」
「おいおい。あのマルコはマグレで倒せる程の相手じゃねないぞ。」
うんうんと頷く3人。
「そんなにすごい人だったんですか?」
「あぁ、もうずいぶんと前の話だが、当時最強のシーフの座をガリンと争ってた位だ。」
「え? ガリンさんと??」
「ふーん。パパ凄いじゃん。」
「いやぁ、昔の事だけど天才だから♪」
「ただその当時、先を争う様に俺らのパーティーと、
マルコのパーティーで競い合ったゲートがあって。」
「懐かしいねぇ♪」
「そだそだ。あの時最後の支配者がめっさ強くてなぁ。」
「全滅覚悟で戦った時に最後の一撃をマルコがモロくらってな。
勢いでゲート内の亀裂に落ちて、それっきりさ。」
「さんざん終わった後さがしたんだがなぁ。
結局見つからず死んだ事になってたわけさぁ。」
「そうだったんですか。」
しかし誰も失わずに済んでよかった。ほんとに。
「でも2か月くらいで私たちすごいビッグになってね?」
「ポーション売ってた頃と何もかも違うなぁ。」
「俺のとこも紡績業より、食品卸の方が順調だしな。」
「この天才もここにやってきたし、全てが順調ってことだよダイコ♪」
「で、これからどうするんだダイコ?」
これから…か。
「とりあえずは世界を騒がすその保霊箱を量産ですね。」
「量産技術は既に確立しています!」
「じゃあ生産拠点を急いで整備だなぁ!」
「今後は国相手の商いってことだ。」
その言葉にみな強い決意を瞳に灯す。
「これがダイコ商店の進む道ってわけかぁ。」
動の時期を迎え、開店2か月目のダイコ商店であった。
■某屋敷にて。
「それでおめおめと尻尾を巻いて帰ってきたってわけか。ベルガド。」
顔に大汗をかいて、床に跪くベルガド。全身が震えている。
「私は言ったよな。徹底的にやれと。」
びくんと大きな身体を震わせるベルガド。
そこに一人の男が音もなく忍び寄る。
「いやー失敗してしまいすいませんねぇ。」
クンベルが近づく男を横目で見る。
「マルコか。お前がいてこのざまとは。」
「向こうには腐れ縁がいましたしね。それにイレギュラーも一人いましたし。」
そうやって胸をさするマルコ。
「この後どうするんで?」
軽く問いかけるマルコ。
「一旦は中止だ。今回は賊の侵入という事で丸く収まったが…」
「まぁギルドにはバレバレでしょうねぇ。」
「様子をみる。動いているのは我々だけでもないしな。」
「北と東もどうやら動いてるみたいですしね。」
席を立つクンベル。
「その前に今回のしこりだけは取っておかないとな。」
そういってベルガドを見るクンベル。
今にも泣き崩れそうなベルガド。これが最後に確認されたベルガドの姿であった。
第二歩:キミが歩く道は 完




