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「バン」から始まる英雄譚!  作者: こじましようこ(裏)
第二歩:キミが歩く道は
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バン屋での前哨戦!

■ダッカーランド国 中央街公館【マハジャドの館】執務室にて


かなりの汗が顔から滴り落ちるベルガド。

絨毯には汗染みが円を描くように出来はじめている。


「わかっているな? ベルガド。」


顔をコクリとうなずくベルガド。言葉が出ない。


「私の、いやダッカーランドの威厳と誇りを傷つけた奴はどうするべきか。」


椅子に深く腰を入れる。


「徹底的にだ。やれ。」


無言で頷き、よれよれと執務室を退出するベルガド。


「勝負だと…? いいだろう。」


席を立ち、窓からテラスへ出るクンベル。


「武人として、この勝負受けてたとう。」


空には既に陽はなく、大きく暗雲が立ち込めてきている。

月がその姿を隠れそうになっていた。


■再び、ダイコ商店


みなが忙しく、店内を走り回る。


「お父さん! これ倉庫に逃がしておくね。」

「おう、あ、それとこれも持って行ってくれ。」

「はわっはわっ!」

「あぁそれも倉庫いれとこ。貸して。」


「店内はあらかた片付けている。食材系は倉庫にすべて逃がしてある。」

「なるべく厨房内では、戦闘を避けたいところだけどねぇ♪」

「すいません、みなさん…」

「今更なにいってんだぁダイコ!」

「その通りだ。ダイコ。それに遅かれ早かれ、こうなってたかもしれんしな。」

「じゃあ僕は屋根から監視しよう♪」

「頼む。俺とロイは手筈通りの位置に隠れる。」


4人が円陣を組む。

そこにメイシャが強引に割り込んでくる。

グランジーナも同じく割り込む。

いつの間にかリズもいる。


「わ、私も…」


フレイアが隣に割ってくる。

8人の円陣が出来上がる。

みんなの視線がダイコに集まる。


「ゴホンっ…えーあー、その、ケガには気を付けよう!」


吹き出すみんな。

そして大きく掛け声をあげる!

空は完全に月を雲が覆い隠す。時間は深夜に入る。



「襲撃にはおあつらえ向きの状況だねぇ今夜は♪」


屋根の上から一人佇むガリン。


あれから、予想される事を話し合った。

プライドの高そうなクンベルだから、今日明日にでも深夜に2Fの研究所を

襲ってくるのが最もあり得るという事が、みんなの見解であった。

自分もそう思う。やつが本当の商人だったら、時間をかけて外堀を埋めてくるだろう。

だが、部屋で話した時のクンベルは商人ではなかった。

戦い好きの、戦士のようだった。


今宵は月が全く出ていない。まさしく襲撃にはもってこいの状況。

明日よりも今日が一番確率が高い。

しかし、襲撃が分かっていても相手は国を率いる8商の一人。

ここ、中立地の中央街に大っぴらに兵は出すのは無理だ。

だけど、少数精鋭ならどうだ? 間違いなくそっちの方を選ぶだろう。

それもこちらが襲ってくるとわかっていても、防ぎきれないほどの強力な精鋭を。


だからこちらは抵抗しない。いや、抵抗はするけどまとめて一か所で。

襲撃されて一番嫌な状況は、複数同時の分散した戦力による

多方面襲撃作戦だ。なにせこちらは戦力が薄い。各個撃破が出来ず分散されたら

勝ち目はない。だったらまとめて一気に叩く。これしか勝機はありえない。

だから最初は抵抗しない。最初は。


2F研究室に残るのはダイコ。餌役だ。

その中に潜むようにおやっさんとファロン。

そして、ここには急ごしらえの罠も仕掛けている。

更には飛び切りの仕掛けも。


「お、ご到着だね♪」


闇に溶け込むガリン。

ダイコ商店の周りには、黒装束を着た複数の人影が、闇にまぎれて近寄ってくる。


「かなりの手練れだねぇ。これは一苦労するなぁ♪」


2F研究所の窓ガラスに小粒の石が「コンッ」と当たる。

ガリンさんの合図だ。後ろを振り向く。おやっさんとファロンは無言で頷く。


すぐに包囲は完了し、網を狭めてくる。


「1F窓からの侵入ね。お手本通りで安心さぁ♪」


ガリンも移動を開始。


暗闇と静寂で包まれる店内。そこに黒装束の男たちが侵入してくる。

辺りを見回す男たち。誰もいないことを確認して、2Fの研究室を目指す。

階段の下で足が止まる。研究室内で誰かいるのを確認。

黒装束の男達は手で合図を送る。


足音立てずに忍び寄る。2F研究室前まで忍び寄る。

ドアのガラス越しに、灯りが灯っているのを男たちは確認。

音もなくドア開く。


「だれ? そこにだれかいるのかい?」


黒装束の男達は無言でドアを開ける。

灯りが消える。お構いなしに研究室内へ突入する男達。


1…3…5 5人! 数を確認! そして…


黒装束の男達が距離を詰める。その時部屋内に強い光が放たれる!

強烈な光! 暗闇に慣れきった男たちの眼に飛び込む強烈な光!!


「ぐはっ! 何を!」


その時後方に潜んでいたおやっさんとファロンが襲い掛かる。

視界を潰された黒装束の男達はとっさに、手にダガーを装備するも、

一足早く間合いを詰めたおやっさん、ファロンの一撃を喰らう!


崩れ落ちる黒装束の男達。ダイコもお構いなしに仕込んでおいた角材を

思いっきり顔面へ殴りつける!


あっという間に5人を倒すダイコ達。

異変に気付いた残りの黒装束の男達は、続々と店内に入り込む。

ダイコ達も部屋を出て、階段を降りる。


1Fへ降りたその時、厨房から声が聞こえる。

そちらへ向かうダイコ達。


「君たち動かないでおくれよ? 大事な鍋に傷ができてしまう♪」


厨房内にはすでに男が4人倒れている。

残りは…2人!


駆け付けたダイコ達をみて、襲撃が失敗に終わったと判断したのか

一目散に、厨房勝手口へ逃げる黒装束の男達。しかし。


「あ、そっちは…!」


ドンッ……!!!!!


開けた瞬間に爆発が起きる!!

音と爆風が厨房内に巻き起こる!

強烈な音と爆風が通り抜ける厨房。勝手口は扉ごと跡形もなく粉砕され、

外に黒装束の男二人が寝転がっている。動いていない。


「し、死んだ?!」


合わせるように腕がピクリと動く。が、血だらけでとても無事とは言い難い。


「死んではいねぇが、重傷だな。」


周りを見回す。男たちの影はない。

あるのは倒れた黒装束の男達だけ。


「これで全部みたいだね♪」


ガリンは器用に厨房に寝ている男達を縛り上げる。

っていうかこの人、4人も一人で倒したのか? あんなに短い時間で。


「おやっさん。ガリンさんって何者?」

「んぁ? あいつも普段言ってるだろう。天才だと。」


ファロンが苦笑いしながら、


「言いたくないけど、まぁそういうやつさ。」

「ふふん! だから言ってるじゃないか。ボクは天才だと♪」

「それより、ダイコの作った爆弾もえげつねぇ威力だなおい。」

「ボクの厨房が危うく破壊されるところだったさ♪」

「これがスターサンドを利用した爆弾か。」


保霊箱を作る過程で偶然にも発見された【スターサンド】。

これにはある特性というか、扱いづらい面もあった。

奇跡を細かく砕けば砕くほど、反比例するかのようにエネルギー保存量が上昇する

この特性は、溜め込んだエネルギーを不安定にさせる部分があった。


そう。ちょっとした衝撃で爆発するのだ。

低エネルギー状態ならさほど心配いらないのだが、ある一定の量を入れてしまうと

急激にエネルギー暴走・爆発してしまう、危険な状態へと変化してしまうのだ。

輝石糊を作る過程で発見した特性だが、今回はこの特性を利用し、扉の隙間に

仕込んでおいた。最初の目くらましとしても使用している。

少量だったのだが、まさか勝手口ごと吹っ飛ぶとは…


最後の追い立てる足止め用に仕込んだ罠だけど、

とどめの一撃になるとは…使用には厳重な注意が必要だな。これは。


研究室内に寝転がってた男達を縛り上げる。

11人か。ガリンは外にいた人数と数が合うと告げる。

死にそうな二人はさっさとギルド送りにして、治療してもらおう。


商店周りには徐々に人が集まり始めてくる。

さっきの爆弾の音だ。あれだけ大きな音もすれば何事? ってなるよね。


「おれはさっさとギルドに通報してくる。」

「お願いします。」

「この人達は何も身分を証明するも物ってないねぇ、まぁ当たり前か♪」


縛り上げたときに着用しているものを調べたものの、武器から何まで全て

そこら辺で買い求められる物しか身に着けていなかった。


「アサシンだろ。間違いなく。」

「通りでボクと同じ匂いがすると思ったさぁ♪」


ガリンさんはアサシン? そんな冒険職あったのか…?


「ダイコ勘違いするんじゃねぇぞ。ガリンは元シーフだ。」

「おいおい! 僕は闇から闇へ、音もなく忍び寄る天才アサシンさぁ♪」


うん。どうでもいい。

それよりも気がかりなことが一つ浮かび上がる。


「おやっさん。グランジーナ達は?」

「倉庫だろ? そういや終わった事伝えてなかったなぁ。」


おかしい。さすがにこの外の状況位、わかってもおかしくない時間が経過している。

ファロンとガリンは顔を見合わせる。急いで倉庫へ向かう。


「みんな無事か?」


ファロンが倉庫の扉を開ける。

そこには横たわるグランジーナ。

辺りを見回すとリズ、メイシャも横たわっている。


「おい!」


慌てて駆け寄る。口に手を当てる。息はある。

周りを見渡す。みんな生きてると手で合図が。


「グラン! 目ぇ覚ませ!! 何があった!」

「お、おとおさん…ここは…」

「グラン! 何があったぁっ?!」

「フレイアさんが…」


フレイアがいない! しまった!! 狙いはそっちか!


「陽動か。くそっ!」

「どうやら本命は、フレイアちゃんだったみたいだねぇ」

「ガリンの警戒の網を潜り抜けたやつか…」


急いで商店の外に出るダイコ。

周りを見渡すも、野次馬しかいない。


「さすがにもうこの辺にはいないだろ。」

「だけどまだ10分位しか経ってません。遠くに逃げるにしても、

人を抱えては遠くに行くことは無理でしょう!」

「しかし、逃げた方向すらわからねぇぞ。」


ガリンは屋根に上って周りを見るも、手を広げて首を横に振る。

くそっ! 良く考えれば、これはむしろ一番可能性の高い事だろっ!!!

なんで気が付かなかったんだ! 俺は…


とりあえず商店すぐ脇の大通りに出る。

人気はない。周りを見ても怪しい人影すらいない。

すぐに追いかけてくるファロンとおやっさん。


「とりあえず手分けして探そう!」

「おらぁ、南を中心にまわる!」

「俺は東側にいってみよう。交易ルートに逃げた可能性もある!」

「お願いします。自分は西側へと…」


そう言いかけたその時、地面にある違和感が。

近づいてよく見てみる。


「なにやってんだ?ダイコ」

「そんなとこ何もおちてねぇぞ!」


みんなには見えないけど、自分の、俺の目にははっきりとわかる。

淡く光る地面…スターサンドが光ってる!

フレイアだ! あいつが残した自分への道しるべだ!!


「ここにスターサンドが! 多分フレイアが落としていったんだ!!」

「スターサンドが? 俺には何も見えないが…」


僅かな量のエネルギーを帯びたスターサンドは、地面や他の砂に紛れると、

夜であっても通常人の眼にはまず見えない。通常の眼なら。

だがダイコにははっきりと、道しるべのようにはっきりと、光の点が見える。


「こっちです! いきましょう!!」


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