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「バン」から始まる英雄譚!  作者: こじましようこ(裏)
第二歩:キミが歩く道は
30/46

フレイアと箱

ここから西の工場区までは徒歩でおよそ2時間少し。

地図に書いてある場所までは工場区に入ってから少しまた歩く。


工場区は商店がある地域とは随分と変わった風景だ。

密集した住居の煙突からは何やら怪しい煙が立ち昇る。


通りに入ると今まで嗅いだことの無いような、

鼻にツンとくる匂いがそこらじゅうにまき散らされる。

 通りを歩く人々も魔呪師みたく、ローブを着た如何にも研究者っていうか。


怪しい地区。この一言以上に言い表された言葉は他にないだろう。


地図を頼りにわき道を入っていく。

このあたりのはず。辺りを見渡す。


「おっ。ここか。」


無事ポーション専門クラン発見。しかし…


「あれ、扉開かない。」


扉の周りを見る。鎖が取っ手下部に巻きつけられている。

そもそも人気がない。あれ…まさか…

足元に打ち捨てられた、ぼろぼろになった紙を見つける。

そこには


「……もちまして、このクランは解散します。ありがとうございました。」


……

………

解散ーーー?!


「まじかっ! なんて日だっ!!」


なんてこったい。遠路はるばる来たのにまさかの解散。

バレイションの時といい、なんか上手くいかない気がする。


嘆いてもしょうがないか。他探そう。

周り見ると似たようなとこありそうだし。


そこから3時間、しらみつぶしに尋ねまわる。


「そういうことやってねーんだわ。」

「おまえの言ってる意味わかんね。」

「正式にギルドから依頼かけてください。」


等々…まさかの連続お断りとは。

12か所目を断られたときは久しぶりに心が折れた。


はぁ…やっぱムリなんかなぁ…

木々生い茂る芝生の上でゴロンと空を仰ぎ見る。

木々の隙間から優しい日差しと雲が見え隠れ。

雲はいいなぁ…自由でいいなぁ…


放心状態がどれくらい経ったのか


ゴロゴロ…

何か近づく音がする。


「ゴンっ!」


痛ったぁぁぁぁ……!!!


自分の頭に何かとてもとても固いモノが直撃する。

慌てて飛び起き頭を触り…うん、割れてない。

ホッとするとすぐ声がかかる。


「ゴ・ゴメンナサイ!! ケガはありませんか??」



これがこの後の運命を決定づける出会いだったなんて。




「もう大丈夫ですから。」


頭に少しだけできたたんこぶを擦る。


「本当にすいませんでした。うっかりポーションの瓶を落としてしまって。」


頭にぶつかってきたのは丸いガラスで出来たポーションの瓶。

もちろん中身入り。


「ポーション割らなくてよかったよ。ははは」

「本当にすいません…」


それを手に取り


「ポーション作ってるんですか?」

「あ、はい!」


瓶に名前っぽい、銘かな? 刻印されている。

「フ・・レイア。フレイア?」

「そ、そうです。私の名前です。」

「君の名前なんだ。申し遅れました。自分は南の冒険者ブロックで

商店を営んでいるダイコといいます。」

「ダイコさん?」

「私はここでその、アイテムメーカーをしていたフレイア・ランティスです。」


アイテムメーカーをしていた…?言い方に何かひっかかる。


「していた? 今はしてないみたいな言い方ですが…」

「あ、いや、その、実は…さっきやめたばかりで」

「さっきですか?」


そこから身の上話が始まる。

北の国エースランドからはるばるこの中央街で、アイテムメーカーになるため

門を叩いたが、クランに入るも失敗続きで…先ほど追い出されたらしく。


「そうなんですか。」


なんという重い空気。聞くんじゃなかった。


「ダイコさんは…どうしてここで昼寝していたんですか?」

「そっちも失敗続きっていうけどこっちもね…」


今日の出来事を簡単に説明する。


「そんな事が。ちなみになんですが、何を依頼しようと…?」


今日辞めたとは言え、依頼内容が気になるご様子。


「今日追い出された私が聞くのもアレですよね。」

「いやそんなことは。」


こんな駆け出しな子に話してもしょうがないけど。

藁をもつかむってやつ? む? これそういう意味だったのか?

いつもの葛藤をしつつ…


「実はとある箱をつくりたくて」

「箱? ですか」

「そう。うちの商店食品を販売していて。」


そういって袋から箱を取り出す。


「サンドビッチって知ってる?知らないか。最近売り出したばかりだから。」


箱をあけてサンドビッチを差し向ける。


「どうぞ。今日のお昼に作ってきたんだ」

「あ、これ…この形! 知ってます! ここでもかなり噂になってるました!」

「西にも伝わってるんだ! そりゃあ嬉しいな」

「実物は初めてみましたが…信じられないくらい美味しいとか」

「そんなサンドビッチだけどよかったら」

「いいんですか??」

「どうぞどうぞ!」

「では、いただきます。」


そう言いサンドビッチを手に取る。

はむっ 小さい口にサンドビッチをほうばる。


「うわぁっ…信じられない!」


目を真ん丸にして二口、三口、早くなるペース。


「もっとあるから(笑」

「あ、す、すいません(汗」

「こっちがボテトサラダ味。試してみて」

「いいんですか? こんなに…?」

「商店帰ればいっぱいあるから」

「で、では。お言葉に甘えて…」


今日は快晴。木々から差し込む光は暖かい。


「とても、本当に、今まで食べたものの中で一番おいしかったです!」

「そこまで喜んでもらえるとこっちも持ってきたかいがあったなぁ」


差し込む光がフレイアの髪を優しく照らす。

オレンジ色。初めて見る髪の色。肩まで伸びたセミロングの髪が

妙に色っぽく。顔はまだあどけなさの残る少女の顔なのに。


「髪の色気になりますか?」

「あ、いや、そういう風に見てたんじゃ」

「オレンジ色の髪とか珍しいですよね」

「やっぱり珍しいんだ?」

「私は北のエースランド出身ですが、そこでも少数部族の出でして」

「私の部族はみんなオレンジ色の髪なんです」

「そうなんだ。でもかっこいいな」

「かっこいい…ですか?」

「表現方法まちがったかな??」


二人に笑いがこみ上げる。


「そういや話の途中だったね」


サンドビッチを入れていた箱を手にして


「このサンドビッチを入れる箱なんだけど、これを鮮度そのままに

保存できる箱を探しているんだ。」

「鮮度保存…できる箱」

「そう。実は今というか今後起こり得る問題で、

賞味期限の問題を抱えているんだ。」


「見ての通り、サンドビッチは生系食材だから傷みやすい。」

「だけど、これは冒険者向けに販売しているもの。遠征には不向きという弱点が

あってそれを何とかしないとこの先間違いなく立ち行かないことになりそうなんだ。」


うなずくフレイア。


「そうですよね。確かに明日までは持ちそうにありません。」

「実は売り出してすぐの時、三日くらい置いて食べた冒険者がいて」


えっという顔でダイコをみるフレイア。


「腹痛で済んだけど、その時に思ったんだ。今の時期ならいいけど、

終わって通常に戻ったら、と。」


静の時期は後もう少しで終わる。

その後はどんどん気温が上がる動の時期に入る。


「今ですら、1日しか保てない食品なのに動の時期に入れば。」

「そうですよね。問題続出ですよね。」

「せめて2~3日くらいは保てるようなそんな箱ができたらなと思い

ここへ来たってわけさ。」

「そういうことだったんですね。それでここで寝ていたと(笑」


フフっと笑いあう二人。


「要求していることがどれだけとんでもないことか、

ここにきてよくわかったさ。」

「私はこの道にすすんでまだ1年ですが…今までにない方向性の

アイテムということはわかります。」

「やっぱりそうだよねぇ」


「アイテムは基本エンチャント【付加】かポーション【癒】の

2大種類に分かれますから。」

「それをはみ出していることは重々承知しているんだけどね。」

「保存属性の維持はアイテムメーカーにとって永遠のテーマって知っていますか?」

「いや、そう…なんだ?」

「はい。かの大創造物者サジが成し遂げられなかった有名なテーマで、

保存という属性を明かすことはアイテムメーカーにとって一生のテーマでもあります。」


「保存属性ってそんなに難易度高いんだ…?」

「サジの創造列書という、アイテムメーカーにとっては教科書みたいな

作り方を説いた本があるのですが」

「その本の中に 【付加】【癒】【保存】この三種が

そろって初めて完成をみるとかいてあります」

「その保存がいまだにどういう原理で働いているのか全くわかってなくて

というのが今の状況だったりします。」


「わかってなかったのか。」

「結果として保存されるのですが、なぜ保存が働くのかが分かっていないんですよ。」

「む、難しい…」

「私も保存属性を解き明かすことを主に研究していたんですが、

その、金にならない研究って見られちゃって」

「それで追い出されたってわけか」

「そうなんです…」


木漏れ日の隙間から優しい風が身体を撫でる。

言い終わったフレイアの横顔を見つめる。そして、


「やってみるか?」

「はい?」

「箱作り」


目を見開き、驚いた顔でこちらを見る。


「だってさ。誰も引き受けてくれないし。」

「え? いやだって私まだ未熟者というかこの道入ってまだ1年で…?!」


袋から箱ではなく、細長い茶色の木を取り出す。


「これなんだかわかる?」

「蘇霊木…ですよね?」

「そう。この大陸中に生えてる木らしいんだけど」

「はい。アイテムメーカーにとってはお馴染みの材料です。が…それが?」

「最近になって保存属性が備わっていることがわかったらしい」

「え??それは本当ですか?!」

「詳しいことは自分にもよくわからないんだけど、

北のエースランドが最近新たに発見したって話らしい」


「知りませんでした…」

「自分も聞いていて十分理解できているわけではないけど。」

「保存属性があるといわれている素材は多少ありましたが、まさか蘇霊木にあるとは」

「わからないもんだよね。そこらへんにある、ありふれたものが

希少な保存属性も備えていたって。」

「ではポーションの【癒】の効果保存も蘇霊木から発現していた可能性が高そうですね」


フレイアの瞳に意欲の炎がメラメラと灯しているのがよくわかる。


「ひまなんでしょ?」

「は、はい」

「そんなに時間は、1週間しか上げられないけどさ。」


目を合わせじっと見る。


「挑戦してみない?」


ダイコを見返し力強くうなずく。


「挑戦させてください!」


日はいつの間にか傾き、オレンジ色に空が染まろうとしていた。


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