ダイコ商店誕生?!
そして商店へ帰路に就いたダイコ達…
「一時はどうなるかと思ったぞ。」
「まったくだぁファロン。おらぁ生きた心地がしなかった。」
「お父さんも、ファロンさんも、そしてダイコもお疲れ様。はいお茶どうぞ。」
「ありがと」
「しかしまぁダイコ!今日はおめぇが一番よくやった!」
「その通りだ。ダイコ。君の機転がなければ暗礁に乗り上げるところだった。」
「よしてくださいよっ。これはみんなの勝利です!」
「お父さんたちの言うとおりだよ!ダイコいなかったらどうなってた事か。」
そういったやり取りの後
ファロンがお茶をすすりながら切り出す。
「なあダイコ。帰るときにロイと話したんだが。」
空気が変わる。ピリッと。
「今後の事業だが、インダストリー商店での継続ではなく、
ダイコ商店として新たに継続してもらえないかと思ってる。
突然の話に、何も言い出せず…
「別にこの事業を放棄するとかそういう話じゃない。むしろ前進させたいんだ。」
「ファロンもおれもこの事業を放棄する気はさらさらねぇ。」
「ダイコ商店を軸に、ぶら下がる形でインダストリー商店、そして今度
新しく立ち上げるファロン商店この三つでやっていきたいんだ。」
「あ、いや…なんといっていいのか…」
「なぁに。難しく考えるこたぁねぇ。ダイコ、お前が頭脳。
指揮をとりおれらが動く。簡単な話さぁ。」
「そういうことだダイコ。おれは新しくファロン商店として、
食材専門の貿易商店を立ち上げる。」
「ファロンさん…」
「もともたぁダイコが生み出したビッチがあってこその今だ。」
「そうだ。だからダイコ。おまえが進ませるんだ。」
「おれはこのビッチがこの世界の食を変えると思っている。」
「その可能性を生み出したのはおまえだ。その責任をとれって話だな。」
「責任…」
「わたしもお父さんたちの話に大賛成です!」
「グランジーナ…」
「私たちに、新しい未来をみせてください。」
「誰も見たことのない。新しい未来を…」
その夜、新しい商店と新しい担い手が生まれた。
それから新しく屋号をかえ、ダイコ商店のサンドビッチとしての
新装開店計画が立案され、予定通り、3日後に改装のため一時お休みし、
改装が始まった。
ギルド管理地となった隣の家屋は、ファロンが交渉し無事譲渡が決定した。
それに伴い急ピッチで厨房スペースの改築が始まり、同時に売り場の改装も始まった。
そしてギルド経由で人員募集を募り、人員の層拡充を進め体制が確実に
固まりつつあった。
次の日、夜インダストリー商店改めダイコ商店にて。
「ずいぶん変わったもんだな。」
「お久しぶりです。マズダンさん。」
「おう。そっちはどうだ?」
「こちらは順調にすすんでます。」
改装中の店内を見て回るマズダン。
居間に戻りテーブルに着く。
「順調そうでよかった。んで…」
「おまえさんから受けた依頼だが…」
少し会話の間が空く。
「はい。」
「実をいうと、まだみつかっていない。」
「そうですか…」
「色々とあたってはいるんだがな。そういったものは今のところどこの工房にも
作成された事実はみつからなかった。」
「やっぱり。いや、無理な依頼をしてすいませんでした。」
やっぱりそういったものはこの世界にはなかったか。
この先どうしても必要になるのに。うーん……
一人黙り、考え込むダイコ。
「おいおい。まだこの話は続きがあるんだが…言っていいか?」
「続き?」
「たしかにお前さんのいうような物は存在は確認されなかったが…」
「ヒントというか、近いものはあった。」
「近いもの?!」
そう言ってマズダンは袋から細長く、茶色の物体を取り出す。
「蘇霊木だ。」
「蘇…霊木??」
「うむ。この木は蘇霊木といって、回復ポーションに広く使われる素材でな。」
「ポーションにですか?」
「あぁ、このエリルトエア大陸に広く分布されているどこにでもある植物なんだが。」
そういいながらダイコを見る。
「実はこの植物に最近ある特性があることが判明された。」
「特性?」
「保存特性だ。」
「!!」
「察しのいいダイコのことだ。もうわかっているだろうが、
回復ポーションの特性維持にこの蘇霊木が大きく関わっていることが
北のエースランドにて確認されたとの事だった。」
「この木に?!」
「だが、どういう条件でその特性が発動されるのかは不明で、
それがどのくらいの期間維持されるかもまだ不明だがな。」
「おれはお前の依頼には応えられそうにないが、もしかすると
その一部は見つけてやれるのかもしれん。」
「マズダンさん…」
「申し訳ないが、ここからバトンタッチだ。」
そういって腰を上げる。
「がんばれよ。ダイコ」
店を出るマズダン。
ダイコの手には蘇霊木が握りしめられている。
「やるしか…ないか。」
もうすぐ静の時期は終わる。残された時間は幾許も無い。
翌日、ダイコ商店にて。
「おはようございます。」
「おぅ! ダイコ。」
「ダイコおはよう!」
「わずか数日ですが、随分と変わりましたね。」
「内部だけの変更だからな。図面書き直せば早えぇさ。」
周りを見渡す。今日はギルドから権利を買い取った隣の家と
つなげる作業を行うらしい。
「おやっさん。ちょっと聞きたいことが。」
「なんだ? ダイコ。」
「おやっさんが前にポーション取り扱っていた時どこで仕入れてたのかなって。」
「ポーションか、おめぇなんに使うんだ? どっか具合でも悪いんかぁ?」
「いや、新しい商品の開発にちょっと。」
「食べたら回復するビッチでも開発するってか? がはは。」
ん? なんか今すごいアイデアもらったような…?
「それもいいけど、改装に合わせて入れ物を新しくしようかと思って。」
「入れ物? それとポーションの何の関係があるってぇんだ?」
「話せば長くなって…」
「まぁいいや。そんな長話する余裕は今日はねぇ。後で落ち着いたら聞くさ。」
「それにおめぇがそんな顔して聞くってことは大事なことなんだろ?」
そんな顔…思い詰めてる顔してるかな…自分
「西の工場区で今まで取引していたポーション専門クランがある。」
そういって紙に地図を描きだす。
「ここにあるからそこでインダストリー商店の名前を出せば売ってくれる」
そういって紙を差し出す。
「ありがとうおやっさん!」
「おう! きばれよ!」




