初日終了…そして
「いや…恥ずかしい限りというかなんというか」
「おい…この血ぃ吹いて倒れてる奴はジャミラじゃねーーか!」
「ジャランだ」
「…ジャランじゃねーーか!!」
オヤジ…おまえ…
「このすごく強かったチンピラ隊長を知ってるんですか?」
「知ってるも何もコイツは蛇鎌のとこの赤蛇じゃねーか!」
「クラン員・・!」
「キミが倒した相手は第一級冒険者で悪名高い【赤蛇ジャラン】だよ」
「っく…」
最初にのした手下Aがタイミング良く? 目を覚ます。
「いててて…隊長?!」
「気分はどうだい? 赤蛇のとこの…」
「んんっ!!! 蒼眼のリーナ!!! なぜここに!!」
「隊長は…ひぃぃ!!! きょ、狂犬!!!」
「狂犬?! コロすぞ」
「ひぃぃぃぃ!!!」
「ガランっ話できんだろ!」
「きみのとこの隊長はあそこで寝てる。死にはしないだろうが…帰って
早く手当てしてあげるんだな」
「た・隊長!!!!」
「ケガはないかい??」
「おかげさまでというか、奇跡的に無傷です」
「しかしまぁキミを探し当てたと思ったらこの騒ぎ」
「キミと出会うのはいつも驚きの中だな…ふふ」
二人に近づく一つの影。
いい感じのふたりに割って入るこの影は…
「どうですか?! 本日新発売の【サンドビッチ】は!」
満面の笑みを向けて差し出すは本日発売のダイコが死守したサンドビッチ!
だが差し出す試食をすぐに横からガランがかっさらう。
「きゃっ」
「バン・・かこれ? いい匂いだ。食欲をそそる」
こぶし大のサンドビッチを丸のみするかのごとく一口で平らげる。
もぐもぐ…ムシャムシャ…ごくん
サンドビッチが形なくして喉を通過した直後
「おいこれなんだ!!!!」
「うめぇじゃねぇぇか!!!!」
目をまんまるにして叫ぶガラン。
その横でこっそり食べてるペイロットも続けて
「なんという食感! これがバンというのですか!!」
半信半疑でマルも口にする。
「うまーーーーーい!!なにこれ!?」
3人が続けて叫ぶその光景にあっけにとられたリーナに
「リーナさん! これは自分がここで初めてつけた足跡・・証です!」
そう言い差し出すダイコに、ほほ笑みながらサンドビッチを口にする。
「うまっ!!なになにこれは・・・?!」
驚きの表情で言いつつも、少し困ったその顔はこう告げる。
「これでダイコくんに貸した恩はチャラになるの…かな??」
少し困ったその顔はほのかに赤く、上目使いの彼女の顔がとてもなんというか…
「まだまだ恩返しはこれからですよ!!」
こぼれるほどの笑顔でこれに応えるリーナ。
興奮と歓喜のショーで心は満たすもお腹は満たされず、このやり取りを見た
野次馬たちはこぞって試食を食べにくる。
そこからはもうパニックといっても言いだろう。
次々に渡された試食品は、あちらこちらでうまいの連発!!
1時間前まではだれも手に着けなかった試食品はあっという間に空となる。
人の波は商店へ押し寄せ、力の限り増産し対応する。
調達から帰ってきたファロンも巻き込まれ、明日の食材を使って対応する。
23時過ぎ・・ようやく商店は静寂を取り戻す。
「ふぃぃぃぃ・・・疲れましたぁ」
「一時はどうなることかと思ったけど。」
「明日の食材からっぽだぜ」
「朝一で仕入れにいかないとダメだな」
「リズ! 明日は一緒に朝市でかけるぞ」
「ふぃぃぃぃぃ早起きムリですぅ」
「ロイ! 明日も早いから帰るぞ。食材は可能な限り早く持っていく」
「おぅ。今日はご苦労さん。明日もよろしくな」
「ロイって・・おやっさんの名前?」
「そうだ。しらんかったのか?」
「おやっさんはおやっさんだから(笑」
一同に笑いが生まれそして・・・24時過ぎ
台所で明日の為の整理をするダイコ達
「ダイコさん今日はありがとうございました」
「波乱すぎる初日だったけど」
「明日はもっと大変だ」
「ですね」
沈黙が台所を支配する。
「この世界って不便だよなぁ」
「不便・・ですか??」
「決まったことにあらがわないというか」
「新しいものを拒否してるんじゃないかって思うんだ」
「新しいことを?」
「だって食堂とかないんだよ?」
「家で食べ物は作る以外の選択肢がなかった」
「世の中は流れて、そして変わっていく。変わらないものなんて何もない」
「でも、いままであったものが変わるとそれはそれで寂しいものですね」
「うん。でも、それでも新しいもの見たいじゃない?」
「そうやって周りが不便から便利になり、時代を紡ぐ。」
「自分は・・・俺は・・この世界の不便に挑戦したい」
「便利なことって素敵なことだよ」
自分がここにいる意味…なぜ記憶がなかったのか。
鍵は時代を動かすことによってのみ明かされる、
そんな気がしてはならない4日目を終えるのであった。




