赤蛇vsダイコ
周りには手下が気持ちよく寝ている。
「A・B・C・D・E…」
地面に転がってる手下どもを眼で追いながら
「F…次はアンタだ」
「野郎…!!」
手下Aを戦闘不能にしてから矢継ぎ早に4人を下す。
驚くほどに頭はすっきり。冷静すぎるっていうか。
なんだろうこの感覚は。
それとは対照的に顔面引きつる隊長。
顔は真っ赤に、ダイコの挑発は怒りを絶頂へ誘う。
腰を少し落とす。重心を消し大きく構えたその姿からは
大量の煙が吹きすさむ!!
すごいな。手下とはレベルが違う。
薄いとこ見当たらないし、おっと!
ジャランは一気に間合いを詰めて右一閃!!
寸でのところでかわすも右左っ!
すさまじいコンビネーションを放ち最後は上段へハイキック!
しかし余裕でダイコはこれを回避。
「ック・・すましてんじゃねぇぇぇ!」
ハイキックから流れてバックブローを放つ!
これも眼前スレスレで回避成功!
意外と速いな…さっきとは避ける大変さが違う。
力の流れがすごくスムーズ。わかってはいたけど
これが上級冒険者ってやつだな。
まともに戦ってたら戦いなれていないこちらが息切れして不利だ。
しかし…
ジャランの攻撃は止まらない。
すべてが連続して、繰り出す拳と拳のつなぎ目など
どこにも無く、優雅な舞がだんだんと牙をむき始め、狭まってくる!
うん。左回りだ。
美しいほどの煙の流れ。どこまで戦えばこれほどの流れが
よどみなく構築されるのか。
周りの野次馬は目に追い切れない、圧倒的な体技に度肝抜かれる。
少しでも気を抜けば一瞬であの世行き。
そこに敬意を覚えつつも、わずかな隙も見え隠れしてくる。
癖がある。癖と呼べるかわからないけど、一定の法則がある。
間違いなく右利きで、よほど戦いなれているのか、
力の流れには全く逆らっていない身のこなし。
だからこそ次の攻撃は予測がしやすい。
必ずコンビネーションの最後は右拳、もしくは右脚で終える癖がある!
ラストフィニッシュの終わりを狙う!
流れが綺麗すぎるからこそ…堰き止められたら…力が決壊するっ!!
やるのは…次右フックの後だ!
すさまじい速さの体技を見切るっ 煙の流れを見極めるっ!
その刹那、首を刈り取らんとする鋭利な鎌首もたげた右フックが
ダイコ目がけて繰り出される。
速いっ ギリギリ…
予測済みのダイコはギリギリでかわした直後…
合わせるかのようにジャランの右ひじを進行方向へ思いっきり力を加える!
勢いを付けすぎた右フックは体勢を大きく崩しつつ、
それを嫌がるように力の流れ通り、左回りで体ごと回転し体勢を整えようとする!
逆にダイコは右回転っ! 左拳を思いっきり握りしめ
合わせるかのようにジャランの顎へ左一閃!!!!
「おぁぁぁぁぁぁ!!!」
レフトカウンターが炸裂っ!!!
ゴスゥゥゥゥッツーーーーー
着き過ぎた力の流れが、これまで蓄積されていた力と共にジャランの顎へと一気に
襲いかかるっ!! ジャランの口元からは大量の血が飛び散り
膝がカクンと地面に付き、糸が切れた操り人形のように崩れさる。
その瞬間・・ダイコが一声を上げる前に
「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
囲む野次馬たちから大きな歓声が町中に木霊する!
大歓声にリズは震えてむせび泣き…
メイシャはポカーンとしつつも、すぐに正気を取戻しニヤリとほほ笑む。
周りの歓声にすぐダイコは我に返る。
やってしまった……
「試食会……」
そして空気を読まずに…
「おぅおぅダイコ!! この騒ぎはなんだ!!」
「ダイコさん!!! こ・この騒ぎと…寝ているこの方たちは…」
「はぁぁぁ!! 血を吹いてる!!!」
「おやっさん、グランジーナ…遅いよ」
苦笑いしつつ、よっこらせと立とうとすると近寄る人影が。
「立派な戦いぶりだったね。ダイコ」
蒼い、とても綺麗な蒼いオーラ。
足元から吹き出すその華麗にして荘厳なオーラの元は
「リーーーナさん!!!」
その名前を叫ぶや否や野次馬…群衆は一斉に驚きの声を増す。
「どうしてここへ?!」
「どうしてとは随分な言い草だなぁ」
「キミが酒場で行方不明になってから心配して探しに来たというのに」
「す・すいません!! 連絡しに行こうとは思ってたのですが…その」
「リーナは君がいなくなってから大変だのだゾ」
「マル…さん!」
「マルっ 余計なことはいいのっ!」
「で、今の一戦見させてもらったよ。ダイコ」




