別れと出会い
物には魂が籠ると言われている・・・。
そしてこの物語は侍の力を手にした青年の戦いの話である。
「これが最後まで村を守りきった侍 ケンジロウの刀だ」
引率の教師がそう皆に説明した。
「じゃあこれでみんなを守ったんですか?」
ガタイの良い青年がそう尋ねた。
「そうだ。しかし自身は戦いの後の傷により死んでしまった。」
それを聞いた一同は興奮した。
「かっこいい!!」
そんな反応に教師は少し戸惑い続けて話した。
「悲しい話だぞ?」
だが聞くはずもなく皆のなかでファンタジーな妄想が広がっていった。
「悲しいけど英雄として名を刻んでここに残されてるわけですよね」
一人眼鏡の少年がそうつぶやいた。
「そうだ!一条!私もそう思ってる」
一条と教師の土間は歴史好きであった。
ゆえに一条はこの1学期学校に欠かさずに来ている。
「侍・・・憧れるな・・・」
自分とは程遠い偉人に思いを馳せていた一条はつい刀に手を伸ばした。
「アチッ」
火花が刀から散った。
「おい何してるんだ」
土間は急いで一条のてを見た。
「静電気とは思えないな・・・不思議なものだ」
土間は手にちょっとした火傷を負っている一条を見て感心した。
「もうちょっと僕の心配してくださいよ!」
一条がそう言った時ガラスの割れる音が鳴り響いた。
悲鳴が聞こえるとクラスメイトの女子が怪物に捕まれていた。
怪物はトカゲのような顔に魚の鱗のような皮膚を持った2mくらいの身長があった。
「はなしてよっ・・・」
苦しそうに叫ぶ努力も虚しく怪物に首を握りつぶされてしまった。
「うわあああ!!逃げろ!!」
近くに人は慌てて逃げ出した。
「僕も逃げないと・・・」
一条は運動はしない方であったが走る速度は速かった。
そのため入り口まですぐに逃げることができたがまだ誰かなかにいる。
どうやら土間を始めとする高齢の客が逃げそびれているようだ。
「くそ・・・殺されてしまうのか??」
目の前で人が殺されるのを止める力はない。
わかりきっていた。
この人生一条が得た教訓は強者に立ち向かわず弱者にならないことだった。
弱者にならない努力をすれば一条のような才能がない人間でもそれなりの生活が保証されている時代。
今弱者は逃げきれない者・・・。
強者はあの怪物。
(俺は逃げれた・・・だから弱者じゃない。)
そう自分に言い聞かせた。
「ママを返せ!!」
小さい子供が怪物に近づいていった。
彼の母親はたった捕まったのである。
「逃げて・・・」
しかし子供は逃げない。
(うそだろ・・・死ぬぞ・・・)
どうなるかは明白だった。
大人でも食い殺されている以上小さい子供なら絶対に食い殺されると。
(走って連れていけば・・・)
今行動すれば救える命があるかもしれない。
(でも俺も死ぬかもしれない)
だが臆病だった。
それに守るべきものが他にあった。
(俺が死ねば悲しむ人もいる)
そう考えると見捨てるのは家族のためな気がした。
「うわあああん離して!!」
子供が捕まれた瞬間彼は決断しないまま走り出した。
怪物に向かって彼は体当たりをした。
「グルルルル」
怪物は同様したのか子供を地面に投げた。
「大丈夫か」
子供を担ごうと一条は両手で子供を掴んだ。
しかし足に違和感がある。
触手が絡まっていたのだ。
「ちきしょう・・・この子供頼んだ・・・!」
引っ張られる前に走り近くの同級生に子供を連れていかれると彼は怪物の方へ引きずられていった。
(思い付きで・・・行動するからこうなる・・・いつもこうだよ)
彼は後悔した。そして諦めた。
諦めると冷静になった。
そして気づいた。
(近くに刀が落ちてる・・・。)
彼は刀を持ちそして怪物に刺そうとした。
だが怪物はそれを見切り爪で彼の心臓を指した。
「しにたく・・・ない」
バタッ
そして辺りに彼の血が流れ出す。
彼は死んだのか?
死んだ・・・しかし魂の状態でその場にいた。
「死ぬとこんな感じか・・・」
霊の状態となり彼は自分の体を見た。
「ひでぇ・・・」
そして人生の終わりのむなしさを感じだ。
「満たされない・・・」
ずっとそう思ってきたが最後までそうだったことに落胆した。
「若者よ・・・」
横になにかがいる。
「拙者の魂がお主に混ざった。」
侍の姿の半透明のそれは一条に話しかけた。
「もしかして・・・ケンジロウさん!?」
その答えに対して侍はうなずいた。
「だが私自身とは言えない」
それに対して一条は首をかしげた。
「つまりだ。私は刀に備わった私自身の未練なのだ」
何やら雲をつかむような話だった。
「つまりあなたは魂の欠片みたいなもんですか?」
一条は辻褄の合う思い付きを答えた。
「それに近い・・・とにかくケンジロウ本人はもう現世にはいない」
そう霊魂はいった。
「霊魂である私はお主と共鳴した・・・満たされない感覚だ」
そのつぶやきに対して一条は驚いた。
「でもあんたは村を守ったケンジロウの霊魂だろ?満たされないのか?」
その問いに対して霊魂は一括した。
「私は生きて人をもっと守りたかった。」
霊魂のその言葉に一条は答えた。
「俺はそこまでじゃないけど生きたかったなぁ」
一条はそう呟き逃げる人々や自分の死体を見た。
「よくわからんがお前も霊魂かもしれぬ」
そう霊魂は答えた」
「つまり本物の俺はもう死んでる?」
一条は事実に混乱した。
「つまりお前が俺を霊魂だと思っているが俺には同類にしか見えないな」
侍はそういい肩を叩いた。
「なっなかよくやろう・・・いろいろ辛いんだ」
侍はそういい座り込んだ。