表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/37

二十話 道中会話 そして、前戦プレイヤーはチートすぎる

「え、えーと……」


 ルースがどっちなんでしょうかと言わんばかりに僕の方を見る。


「そうだな……」


 僕は呟きながら考える。

 経験値だけを考えるとルースと一緒にエクストラボスを倒しに行くことは効率が悪い。

 なぜならエクストラボスを倒すことが出来なければ経験値を全く手に入れることが出来ないためだ。


 しかし、その分倒せた時に得ることが出来ると思われる経験値は魅力的だ。水龍を倒した時、僕のレベルは4上昇した。水龍は第一のボスと同じフィールドにいたことを考えるとまだ弱いボスに当たるはず。それにも関わらず、レベルが4も上昇したのだ。

 前戦のプレイヤーであるルースが見つけたというエクストラボスは当然のことながら水龍よりも経験値が多いだろう。その分、強力であることもまた想像できるが……。


「わう?」


 いぬがどうしたんだ、と言うかのように僕を見て鳴く。

 そうだな。悩む必要なんてなかった。ただでさえ、経験値を得る手段が限られてしまっていたんだ。闘技大会のためにも今は少しでも力を得たい。

 僕はミイとリーンを見た。

 二人は僕に判断を委ねているのか、僕と視線が合った時に頷きを返した。


「分かった。ルース、一緒にエクストラボスを倒しに行こう」

「ありがとうございます! では、早速エクストラボスがいる場所へ案内します!」


 相当嬉しいのか、ルースが嬉々として案内を買って出た。僕はその様子に少々面食らいながらも後ろについていき、移動するのであった。



         ◇



「ここがセカルドかあ」


 エクストラボスの場所へ移動するため、次の町に転移した直後にミイが口を開いた。

 そこは石造りの建物が多く存在していた始まりの町とは打って変わり、木造の建物が多く立ち並ぶのどかな村とでも言うべき光景が広がっていた。


「初めてきたけど、始まりの町とはだいぶ違うんだね」

「ええ。見た目は町というより村という感じですから驚きますよね」


 リーンの言葉にルースが同意する。

 僕も辺りを緑が随分と多い場所だな、と思いながら見渡す。

 NPCなのか、時折歩いている村人のような姿も見える。

 ここではどんなイベントがあるんだろうな。

 先を急ぐ必要があるとはいえ、ゲームとして楽しむべき要素――イベントクエスト――について僕は思いを巡らす。


「そういえばルースさんが持っているランク6の称号スキルってどんなものなんですか?」


 ミイがルースに訊ねた。

 確かに気になるな。正直、他の人が持つ称号スキルは存在を知っていても詳しい内容はほとんど知らない。実際、三貴神のスサノオが持っているという≪神格者≫というスキルについて、僕はどんなスキルなのか知らないからな。ルースが教えてくれるか分からないけれど、教えてくれるのなら他の人が持つ称号スキルについても少しは見当がつくというものだ。


「私の称号スキルですか……?」

「はい! おねえ――ヒカリが持つスキルについては本人から聞いたことがあるんですけど、他の人が持つ称号スキルって全然知らないので、訊いてみたいと思うんです!」


 ミイには現実世界で≪天使ちゃん≫のスキルについて教えたことがある。≪天使ちゃん≫のスキルは変身や変化といった姿を変えることがメインのスキルであるということを伝えた時のミイは微妙な表情をしていたが。


「ふむ……。そうですね。エクストラボスに挑むのですからお互いの情報は交換しておいた方がいいですか……。分かりました。私が持っている称号スキル≪刀剣の担い手≫について、教えましょう」

「ありがとうございます!」


 ルースの返事にミイが嬉しさを隠さず返答した。

 それにしてもすごそうな名前が出てきたな……。≪刀剣の担い手≫か。刀剣に関わりがありそうだけれど、どんなスキルなんだろうか。


「私が持つ≪刀剣の担い手≫は簡単に言うと刀剣をいくらでも扱えるようになる称号スキルです」

「いくらでも……?」

「はい、いくらでも、です」


 ルースの言葉にリーンが意味が分からないといった様子で聞き返す。

 そこに答えたルースだが、苦笑いをしていた。どうやら自分のスキルが非常識であることを十分に理解しているみたいだ。


「色々説明するよりも見てもらった方が早いですね。私が持つ≪刀剣の担い手≫はこんなスキルです」



スキル名称:刀剣の担い手(ランク6)

扱い:称号スキル

効果:このスキルを持つ者は刀剣の担い手の称号を得る。

  (この称号は消すことは出来ない)

   刀剣の担い手のスキルを持つ者は刀・剣の武器系統に限り、

   装備制限がなくなる。

   装備制限がなくなったプレイヤーは通常一本しか装備出来ない装備を

   いくらでも装備することが可能となる。

   装備が二本の間は両手装備となり、

   三本以上の場合は思考操作によって操作が可能となる。

   なお、このスキルを持つ者は運営が主催するPVに出場することになる。

   ……出てください、本当にお願いします!

技能:思考加速(レベル5)・・・自らの思考をAIが補助してくれる。

なお、AIが補助してくれる思考は刀剣の担い手に関することのみ。

   刀剣の心得(レベル3)・・・刀剣類の装備をしている場合に

                 攻撃力を上昇させる。

                 上昇させる効果は一本につき、

                 1.2倍となる。



「……これって壊れスキルにもほどがあるだろ……」


 あまりにもあんまりなスキルの効果に僕は思わず呟いた。


「あはは……。本当にそうですよね……」


 ルースも苦笑いだ。実際、使っているからこそ、スキルの効果を十分に理解しているのだろう。


「え? お姉ちゃん? なんでそんなにすごいの?」

「……ミイ。ルースの持つスキルは刀剣類の装備一本につき、攻撃力が1.2倍になるんだ」

「うん……? そうみたいだけど、それがどうしたの?」

「一本につき1.2倍になるんだ。確かに一本や二本ならそれほど増加率も大きくないだろう。……いや、それでも正直大きい気がしなくもないけれど」


 僕の説明にミイはいまいちよくわかっていないみたいだ。これはもう結論を言うしかないな。


「ルースの思考加速の効果によってただでさえ強力な刀剣の心得が更に悪化しているんだ。ルースに聞きたいんだが最高で何本まで装備したことがあるんだ?」


 僕はより説明をしやすくするためにルースに訊ねた。僕の予想が正しければかなりの数を――


「そうですね。今まで装備したことがあるのは10本ほどですね。まあ、今回のエクストラボスに挑むためにアイテム欄には限界まで刀剣類を詰めていますので、50本は装備可能かと」

「…………え?」


 僕は信じられない思いでメニューを開き、ヘルプツールの中にある電卓を呼びだすと数字を入力して計算してみた。


 1.2^50≒9100


「どう考えてもこんなのチートだろ……」


 出てきたあまりにもあんまりな数字に僕は思わず呟く。


「……どうしたのお姉ちゃん?」


 未だによく分かっていないミイに何故か癒しを感じた僕は思わず、抱きしめたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目立ちたくないので転生特典は魔力ゼロでお願いしますっ!
新連載始めました。よろしければ見ていただけると幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ