表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/68

第63話 嫌い

家族が好きか嫌いかと問われれば、答えはハッキリしている。


…嫌いだ。









「おい!どうしたんだ!?」


ガクガクと揺さぶられて僕はハッと意識を取り戻した。


「政宗…すまない。ポーッとしていた」


病院の屋上でフェンスの上に座っていたから少し間違えれば落ちてしまったかもしれない。


「気をつけろ…それより、結局どうすんだ?母親を人質に取られてるんだろ?」


事情を知っている政宗は気遣うようにこちらを見てそういった。


あの体温騒ぎの後、無理矢理に全員を帰還させて政宗にだけ状況を説明した。


…その後はポーッとしていたのだ。


「…お前、まさかとは思うが…このまま見捨てようとしてないか?」


その問いかけに僕は…静かに笑って答えた。


「うん。実をいえばこのままお母さんが死んでもいいかなとか思ってる」


僕は…家族が嫌いだ。



昔から何故か、僕の言葉が全部通じていないような違和感や恐怖があった。

どんなに僕が喋っても、その言葉はそのまま伝わらずにかなり曲解されていたと思う。


そしていつしか僕は何故か家族を見下して嫌っているという勘違いが起こり……そして家族が僕を嫌った。


それはもう俺のトラウマだ。



「あのさ…俺は別に将軍の下した決断に文句はないし…それでいいとも思う」


「仮に将軍が家族の耳鼻をそぎ落として骸骨割ってミンチにかけてケバブ作ったとしてもいい」


「それやり出したら俺を殺せ」


というかそんなことしないよ!!何いってんの!?


憤慨した気持ちで反論すると政宗はケラケラと笑う。


「いや、それほど俺は愛があるってこと。…問題なのはお前の幸せだよ」


「俺の…幸せ?」


「おう。…ここで母親を見捨てたらお前は…幸せになれないと思う」


「……僕はあいつらが嫌いだ」


「嫌いでいいと思う。ただ……捨てられないんだろ?」


「……」


「いいたいことがあるんだろ?やりたいことがあるんだろ?それをやり残したら…」


「お前に何が分かる!?」


遮るようにして政宗の言葉を消した。

その行動に政宗は悲しそうな笑みを…まるで駄々をこねている子供をみるように、優しく語りかけた。


「分からねぇよ。お前のことは分からないし、きっと勘違いしてる部分だって多々あると思う」


「なら…」


「だけど!…だからなんだよ。わからないから口を挟まないことにはならないだろ」


「…」


「後悔しない決断をしてくれ」


政宗のその言葉に…。


フーッと頭がパンクしそうになった。


後悔しない決断?無理だろんなもん。

考えてもみてほしい。母親は俺を嫌っているしなんか言葉が通じないんだぞ。助けたところできっと感謝されないし愛されないだろ。やったって無意味だ。




「……あー…」




ごめん。嘘ついた。いや、故意的に勘違いさせた。



嘘では無いし、本心である。

けれど心を守るためにいつのまにか、そんな言葉で身を守ろうとした。


嘘では無いから、相手の解釈しだい、俺は嘘をついていない。


そうやってずっとずっと自分を守っていって……。


けど、後悔はしていないんだよ。

家から追い出されたけど、こんな素敵な仲間や友人が出来て結果的によかったと思う。


家族がいなくなって死んだとしても、僕が直接


「なあ、政宗。後悔しないでっていうけど…きっと後悔はしないと思う」


「将軍…」


「でも、一生『満足』することはないと思う」


いってて気づいた。


あぁ、僕は満足したいのだと。


なんてことはない。欲深いだけなのだ。

友達や仲間に承認されて、家族に認められて、他にもあれやそれややりたいことが沢山ある。




「政宗、僕は満足したいから……ちょっと行ってくる」


「俺もいこうか?」


「いい。君は留守番してろ」


そういって僕は扉へと近づく。

もう覚悟は決めた。ヘタレは卒業だ。


「将也!!」


政宗が俺を呼ぶ。

その声に足を止めて振り返ると、彼はニヤッと笑って口を開いた。


「家族は好きか?」



その問いに俺もニヤっと笑って答える。



「嫌いだ」


そういって扉をしめた。









家族が僕を嫌い?…知ったことか。お前らの事情なんか知るか。無理強いだろうが愛させてやる。



そう強く思うような僕は……きっと家族が嫌いなのだろう。

そろそろ終わりそうですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ