第50話 病室
途中からいきなりシリアスです。
「なんで……お前が……」
「俺も……仲間……」
騒がしさかろ、目を覚ますと、政宗と睨みあっている元親さん、そして、ギュウギュウに詰められている白虎隊のみんな……
「……アレ?ここは……」
ギシギシと痛む体に鞭をうって起き上がると……
「うぁぁああああん!!!!将軍が目覚めたっすぅぅうう!!!」
「びょぉうぶぐぅぅんん!!」
泣きまくっているみんなに抱きつかれ、僕の骨はパキリという音がなり、そして死んだ。
ポンポンポン……チーン……
「お前らぁぁあ!!病み上がりの将軍になにしてんだ!?離れろ!!将軍!!起きろ!!」
圧迫感がなくなったかと思ったら、今度は政宗がガクガクと揺さぶってきた。……いや、本当に病み上がりだから、本当にやめてくれ。
「停止 気悪」
言語崩壊するくらいには本当にヤバかった。
取り合えず、痛むからだにバシバシと鞭をうって起き上がって、周りを見れば、真っ白な部屋と消毒液の臭いがした。
「ここは病院だ……コイツが血塗れの将軍とその弟を連れて来て、そのまま病院に運んだんだ」
「弟は……幸人は無事?」
「あぁ、兄さん兄さんと興奮状態だったから、今は薬を打たれて眠ってる……ん・な・こ・と・よ・りだ」
政宗はブチギレた顔で僕に顔を近づける。うん、殺人者の顔だ。
「コイツはなんだ!?なんで元凶のコイツがいるんだ!?つーか、仲間とかほざいてんぞ!?」
「仲間にした」
「将軍のことを殺そうとしたんだぞ!?」
「お前だって、俺を殺そうとしてたからいいだろ」
それを言えば、政宗は顔を真っ赤にして「それは……黒歴史なんだ!消せ!!」と叫んでまたガクガクと揺すられた。周りをみると、何故かみんな顔を背けている。
「つまり、俺は今日からこの将軍さまの奴隷だ!よろしくな!」
「テメーは黙ってろ!!」
「そっす!!そっす!!奴隷はこの俺『料理作りの葉山』っすよ!!」
「違う!!『肩揉みの佐浜』っす!!」
「お前らも黙れ!!」
パンパンにつまった部屋で、政宗はシャウトした。いやさ、ここは病院だから取り合えずみんな静かにしようぜ!!
「ちょっとぉ!!ここは病院ですよ!?静かにしなさい!」
看護師さんらしいおばちゃんが怒って、出ていけと叫んだ。
「この子は絶対安静なんですからね!!」
怒ったおばちゃんパワーはスゴく、みんなは気圧されてでていった。
政宗と、元親さんを置いて。
うん、殺気がやばい。
「説明すると、長宗我部 元親は白虎隊の仲間になった。以上」
「それは……もうお前の性格上仕方ねぇし、俺も人のこと言えねぇから別にいいけどよぉ……」
そうだね、君は反対する権利なんてないよ。僕は君に殺されかけて、最終的に屋上からdiveしてdieするところだったんだからね。
その時とくらべたら、血が吹き出たくらい大丈夫だ。5人目あたりになって、死ななきゃいいや状態になった俺をなめるなよ。
「でも……コイツ、剣山組だったんだぞ?」
「そんなの知らない」
そもそも剣山組ってなに?何組?よく分からないんだけど……恥ずかしいから言わないけど、誰か説明して。
「(なるほど……ヤクザすら眼中にないか……)」
「(流石、俺たちの将軍だ……)分かったよ。もう何も言わねぇ」
やれやれと言ったポーズを決めたあと、元親さんに向かって拳をだす。
「よろしくな元親☆(取り合えず死ね)」
「よろしくな政宗☆(お前が死ね)」
二人は笑顔で拳をたたきあった。うんうん、男同士の友情っていいね。
歪んだ空間、拳と拳をぶつけあって出来た衝動、笑顔の奥に隠された怨念。
どこにも不自然な点は見当たらないね。
「俺たちは固い友情で結ばれた!」
ほら、政宗もそんなことをいってるから大丈夫だね。
「あぁ、濡れたティッシュ以下の固い友情だ!!」
うん、全然大丈夫じゃないね。
二人は相変わらず睨みあっていた。
「(でも……なんだか日常に戻れた感じがして……いいね)」
後で幸人の病室にいって、巻き込んでしまったことを謝ろう。みんなにも、心配かけたことを謝ろう。
……あぁ、やっと日常が戻る。
そう安心しかけていたとき……
ガラララ……
病室のドアが開き、白虎隊の誰かが入ってきたのかと思ってそっちを見ると……
「よくも……幸人を危ない目に合わせたわね……!」
黒髪に、赤い口紅の女性が鬼のような顔で表れていた。そして、僕の方へと歩き……
思いっきりの平手打ちをかまされた。
「貴方はどんだけ人に迷惑をかければいいのよ!?この化け物!!」
顔をよく見れば、それは鬼ではなく、 母(薊)さんで、 薊(母)さんで……
……薊さんだった。
それを脳が理解したとき、条件反射なのかは分からないが、僕は……
「ごめんなさい」
笑っていた。
ただ口角が釣り上がっているだけの……気持ちの悪い笑みだったと思う。
薊編をただいま考え中。
将也の苦笑いは、他人から見れば綺麗な微笑み。




