第3話 教室
やっとのことで、俺は校舎に入れることが出来た。
学校の校舎は小さいわけではない、若干大きな学校である。ちょっと前に大きな改装をした為か清潔感が溢れた空間は、いい学校の基準に当てはまるであろう
まぁ、学費が安くてある程度の面目が立てれるならば将也はどこでもよかったが、この学校でよかったとは思っている。
……そうでも思わないと、教室のドアを開けることが出来ないからだ。
(よし…)
ガラララ……
将也が教室のドアを開けると、教室は一気に静まり返ってしまった。
(毎度思うけど…俺、嫌われてんのかな?)
将也はそんな事を内心涙目で思いながら教室に入った。その瞬間、生徒は十戒のように道を明けていく。
その目は尊敬や憧れや劣等感等、さまざまな物があるが将也は流石に慣れているのか、それともそんな余裕は存在しないのか…
多分後者ではあると思うが別段気にしないようにしながら席についた。
するとイミングよく、担任の先生が現れた。
「おーい、今から英語のテストを始めるぞ」
その言葉に回りはガヤガヤするが、あらかじめ言われていた事ではあるので、別段不満もなくテストが始まる。
将也もテストの準備をしようと、筆箱からシャーペンを出そうとするが……ない。
買うのを忘れていた事に気が付き、誰かに借りようとなけなしの勇気を振り絞り必死で声を出す。
「すみません、誰かシャーペン持っていませんか?」
その言葉に全員が将也の方を見た後……混乱が始まった。
「俺のシャーペン使ってください!!使いやすいっす!」
「私のを使って下さい!最新モデルです!!」
「僕のは新品です!!」
我先にとばかりにシャーペンを将也の机に置き始め、シャーペンの山が出来た。一体何のこっちゃか分からない。
「ありがとうございます」
とりあえず、将也は適当にシャーペンを選んだところ……
バタン!!
選ばれた一人の生徒が嬉しさの余りと緊張のし過ぎで倒れてしまった。
「またお前か五十嵐!!一体どれだけ面倒事起こせば気が済むんだ!?」
(ぇぇええ!!??俺のせい!!?)
教師が指差し、文句をいいながら倒れた女子を保健室まで運んだ後、無事にテストが再開した。
「よーい始め!」
担任がそういい、一気に筆記の音がする。
(朝のテストだからそこまでレベルは高くないんだよね……)
将也の通う学校は逸脱して凄い学校という訳ではないがそこそこに偏差値が高い進学校であることは事実である。
倍率もゆるやかに上昇しており、学力向上にも力を入れている為に、決して朝に行われるテストは簡単ではないのだが将也は簡単だと勘違いしている。
勘違いしているのは将也が変な方向の頭脳をもっている為であるという事を本人は自覚してない。
テストは終わり、今日の一位を発表される。
(眠たいなぁ…ふわぁ…)
「今回の1位は五十嵐将也だ……またかよ」
(え?誰って言ったの?)
睡眠不足が祟り、この時間帯は基本的にポー…ッとしている将也は、一瞬誰が言われたのかを理解出来ないでいた。
それを周りは余裕だと思い、また伝説が刻まれる。
「お前は本当に嫌味な奴だな…」
「すみません」
何故自分が怒られているのかが分からないが、とにかく謝ろうと思う。
睡眠不足によって脳みそがトロけたようになっている将也は深く考えることをやめて、そう結論つけた。
大体、目の前にいる担任教師はよく自分にちょっかいを出すのである。一体何故なのかは分からないが、そういう性分なのだろう。
「っち…本当に嫌味な奴だ」
将也の反応を余裕とうけとってしまった担任は、将也を睨みつけながらも授業を始めた。
(だから何で!?何でこんなに俺って嫌われてるの?俺、普通のことしかしてないよね?)
担任の態度をそう思いながらも、その心情を口に出さない限り誰も弁解はしてくれないのであった。