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第24話 頭を痛ませる

「....は?」


将也は思わず呆けてしまった。美咲の提案はそれ程までにトンチンカンなものに思え、まるで神父がいきなり拳銃を持ち出して暴れたかの様なインパクトがあったのだ。


「養子縁組み合いしましょうよ。私の息子になりなさい」


「....腕のいい脳外科の先生教えましょうか?」


「それどういう意味よ!?」


将也が思わずそう言ってしまったのも無理はない。

養子縁組み合いなんて、そんな簡単に出来るものではないことも法律上の手続きも大変なのだということも知っている。


仮に養子縁組が出来たとしても、里親制度のように子供を返品出来る訳ではないので、後になっていらないとなっても取り返しがつかない。

そもそも、親が親権を放棄してくれない以上それは無理なことなのだ。


もっとも、そんなことを将也が知っている辺り過去に本気で親と縁を切ろうとしていたのが伺える。


「ぶー!!いい考えだと思ったのにー!」


「何処がですか...」


「あ!そうだ!いっそのこと沙織の婿になりなさいよ!」


「嫌です」


即答であった。


まぁ、美咲も本気で言った訳ではないのだが娘をそこまで拒絶することもないじゃないかと複雑な気持ちになる。娘をもつ親の気持ちとは迷宮入りする事件のごとく難しいのである。


「あ、もしかして彼女とかいたな~?」


「なんで知ってるんですか!?」


「え?本当に?」


養子縁組みについて互いに冗談として処理をしたのか、その後は雑談をしていたが...


それを終わらせる声が響いた。


「美咲~誰と喋ってんだ?」


聞き覚えのある声とともに足音がなってくる。


「ヤバイ、早く戻って(小声」


「部屋が分かりません(小声」


「客室はここから三番目の右の部屋!!(小声」


「はい(小声」


小声で将也は返事をした後、忍者のごとく庭の方のドアから消えるようなスピードで出ていった。


丁度タイミングよく、部屋に夫の信彦が入ってくる。


「誰かいたのか?」


「猫ちゃんと話してました~」


「そうか!」


ニカッと、美咲が惚れる一因となった太陽のような笑みを向ける信彦。

それでいいのかと思うかも知れないが、妻を心から愛している信彦は理屈でない勘で美咲の安否が分かるので大体のことは気にしていない。


「今日は騒がしいけれどどうしたの?」


十中八九、将也絡みだらうと予測はしながらも美咲は話題を変える為に聞く。


「ああ!実はな、あの将也がこの家に来たんだ!」


「それはよかったですね~」


誘拐したの間違いではないのだろうか?


と、美咲は思ったのだがキラキラとまるで子供のような笑みを向ける信彦を見てると絆されてしまって余り気にしない。


「そうなんだよ!凄く成長しててな!アイツ凄く強くなってて...うちの若い衆たちとかやられてるの多かったんだ!」


「まぁ!それは凄いわね!」


多分、パニックになったり色々な偶然やヤケクソの産物なのだろうと美咲は理解したがあながち間違いでも無さそうなのだ指摘はしない。


あの可愛らしく綺麗な顔のせいで昔っから女性に誘拐されそうになったり貞操の危機があるので武道の心得はあることを知ってるので、強くなったというのも嘘ではないのだろう。


「沙織も多分、将也に惚れてると思うぜ...」


「あなた、沙織に会わせたの?」


「あぁ!...っと、将也をまたせてるからもう行くな」


時計を見た信彦は名残惜しそうに、しながらも楽しそうな顔で部屋を後にした。


残された部屋で美咲は天井を仰ぎ、仰天している。


「なんてことをしたのよ...」


愛する夫とはいえ、この時ばかりは一瞬本気で殴りたくなってしまった。


沙織は大切な娘であり、愛する娘だ。溺愛する愛娘の婿相手に、夫は将也を選んだのだろう。そこまではいい、それはいいと思うのだ。


将也が心優しくて、勘違いとはいえ何だかんだで本当にカリスマ性溢れるいい子であるのは認めるし、沙織の相手にもピッタリかもしれないし沙織自身、多分ではあるが将也が好きかもしれない。

それならば問題がないように見えるかもしれないのだが....


好みの問題とも言うべきか、彼の思考の問題とも言うべきか、前の彼女の問題もあるのだろうか、はたまた彼自身の問題なのかはしらないが....



「将也し絶対に振り向かないわ...」


根本的な問題があることに、親として美咲は頭を痛ませた。

養子縁組について頑張って調べたんですけど、あってますかね?

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