第19話 桜義 信彦
癖のある茶色の髪に悪戯っ子のような目。それとは対照的な長としての雰囲気。どこかワイルドな美中年は何故か前の開いた浴衣をきてニヤニヤと笑っていた。
「おーおー、可愛い顔をしてんな~」
両腕を拘束され、俯いている俺の顔を無理矢理上げてニヤニヤと笑う。その笑みは天使みたいでも悪魔みたいでもなく、例えるならばそれらを暇潰しで作った快楽主義の神様のような笑みだった。
どこかで....見たことがあるような....
「覚えねーか?俺のこと」
耳元でボソりと呟く美中年さん。どこかで見たことはあるような気はする。けれど....何かがひっかかって....
俺が答えを出す前に彼は顔を上げてニカッと笑った。
「見た目、弱っちそうだけどな~」
「騙されないで下さいよ、コイツ大分暴れてたんですから」
「へ~見たかったな~」
「何を呑気なことを....」
俺の腕を拘束している人が呆れながら言うと、彼は面白おかしく笑っていた。この笑みも見たことはあるが、今はそれどころじゃない。
「ここ、どこですか?」
俺は思ったことを口にする。この場所は一体なんなのだろうか?目の前の男も意味不明だし、周りの怖い人たちも何なのか分からない。
「カッカッカ、お前ら何も教えずに連れてきたのかよ」
「これでも必死だったんですよ!?この子暴れるし強いし!!何なんですか!?」
涙目で下っぱみたいな人が必死でいっている。この人たちはアットホームな感じでありながらも、美中年への敬意が分かる。
「こいつスゲー暴れたんすよ!?」
嫌々、そこまで暴れたつもりはないですよ?
「そんなに暴れてない。大袈裟すぎ」
「カッカッカ!そう言ってるぞ!お前ら弱すぎだってよ、精進しろ精進」
「....はい」
ジト目でこっちを見る黒服さん。嫌々!!違うから!そういう意味で言ったんじゃないから!信じて下さい!
「もう離してやれ、目がギラギラしてやがる...クク」
一体何が面白いのか、美中年さんはずっと笑っている。笑い上戸なのだろろか?
俺の腕を拘束してた人たちは美中年さんの指示通りに離してくれた。本当に痛かったから離してくれて本当によかった。
ギシギシとなってたもん僕の腕。あ、僕っていってしまった。
「ここは桜義組の家だ。俺の名前は 桜義 信彦 ここの長だ」
信孝さんという名前らしい....何故か 織田 信長を想像してしまったが、名前は信長ではなく信孝さんだ。
「何故、こんなことを?」
怖いので喋りたくない。だって怖いから。
「んにゃ、ただの暇潰しだ。まぁゆっくりしてけ」
ヘラりと笑う信孝さん。....ひ、暇潰しだと!?そんなことの為に痛い目に合わせたのかよ!?畜生!!許さねーぞ!!復讐してやる!!
靴に画鋲いれてやっからな!!
「あ゛?どうした?」
「なんでもないです」
うん、やめよう。平和万歳。
「まぁ、お前がグレたのも仕方ねーとは思うし、あんな家庭環境じゃそうなるのも仕方ねーか....でも実をいうと結構俺は嬉しいんだぜ?こうなったのも何かの縁、俺の組に....将也?」
和風造りの部屋に入り、俺は信彦さんと二人っきりになった。和室の中で茶とお菓子を食しながら、俺はポー...っと天井をみる。
頭の中をカラッポにして、天井を見ていると何か思い出す感覚が出てくる。確か....昔の俺もこんな感じの和室でポーっと天井を見てたな~
そうそう、幽霊とかに怯えて天井を走ってる鼠とかの音に過剰反応してたな~
「おい、将也。どうしたんだ?」
ポーっと天井を、見すぎて信彦さんに不信がられる。ヤベ!何も聞いてなかったし!!え?え!?
いきなり声をかけられて僕はパニックになってしまい...
「誰かいる」
「天井にか?」
「うん」
まるでアホなことを言ってしまった。ってバカか!?なんで幽霊いるとか言ってしまったんだ!?子供か俺は!?
「わかった、今向かわせる」
俺の言葉をバカにしてるのか、呆れてるのか信彦さんは笑顔を引っ込ませてキリッとした表情でそんな冗談をいう。
「もう、いません」
俺は必死にフォローした。フォローの仕方も子供っぽい。もう泣きたい。もう嫌だ。恥ずかしい。
「っち」
信彦さんが舌打ちをした。怖すぎて死にそうだ。というか殺されそう。もう迂闊に喋りたくないよ~....
勘違い視点をいついれるかでめっちゃ悩みます(^o^;)よかったら感想下さい!最近ちょっと迷走してます( TДT)




