第18話 車の中
目を覚ますと、ガタンゴトンと揺れていて寝かされていた。辺りを見渡すと何か車の中にいるようだ。
車の中は結構広く、少し小さいバスのようであった。
「目が覚めたか?坊主」
声の方向へと目を向ければ、スポーツ刈りでサングラスをかけている黒服の男がいた。
その他にも前に2人ぐらいいて、車を運転している人も同じく黒服だった。
...え?何この状況、一体何なの!?ねぇ!!本当に怖いよ!
「なに、これ....」
体を動かそうとしたら腕を縛られていた。結構痛いし、本当に何なの!?俺、縛られる趣味とかねーよ畜生!!
俺は体が痛いので、取り合えず寝返りをうつ。
「安心しろ、悪いようには....グワッ....!」
縛られていない足が、黒服さんに当たってしまった。って、そりゃそうだよ!!そりゃ当たるよ!!ここめっちゃ狭いんだから!!
「テメェ....ゲェ!!」
当たってしまった足を元に戻そうとしたら、今度は別の人に当たってしまった!本当にすみません!!
謝ろうと顔をあげたら今度は横で待機していた人の顔面に俺の頭がぶつかってしまった。
....でも、これってチャンスじゃないか?
体勢を何度も直そうとして腕を縛っていたヒモはとれている。
黒服さんたちには悪いけど、これってチャンスなのかもしれない。たまたま当たった足とか頭とかのせいで、まだ黒服さんたちは痛がっている。
俺はこの気を逃すかと思いながら、ドアを開けて出ようとする。
ハッキリいって、運行中だから危ないかもだけど頑張ればなんとかなると思うし俺の体は頑丈だから大丈夫だと思いたい。
この時の俺は逃げることに必死で、単純で当たり前のことに気づけていなかった。
車が走っているということは、乗っている人がまだいるということだ。
「ッハハハ!!お前、面白いな!」
ガン!と、いきなり体に衝撃が走る俺の耳に笑い声が聞こえる。
爽やかそうで、安心出来るような声だけど、どこかネチネチして残酷そうな声だった。
まだ車が走っているということはこの人は助手席にいたのだろう。本当に俺はバカか!?
「さっき見てたんだけどよ、スゲーな。目が覚めたらいきなり暴れ出すんだもんな」
俺の腕を背中に回されて固定され、頭は窓に押し付けられている。何故か耳元で喋り、距離が物凄く近い気がする。マジ怖い。
暴れたんじゃないんです!!あわよくばとか思ってたけど、本当に最初は無抵抗でいこうと思ってたんです!
「まさか、当たるとは思わなかった....」
窓に顔を押し付けられていて、喋りずらい。
「ハァ...若い衆にはガッカリだ....まぁ、お前が強すぎるんだけどな」
何かぶつくさ言っているが、次の瞬間に凄く声が低くなり俺の耳元で囁いた。
「こんなことは言いたくねーけど、白虎隊の奴等に危ない目を会わせたくないなら、大人しくしろ」
大切なんだろ?
酷く恐ろしい声で言われる。元々、拘束された時点で暴れるつもりはなかったけど、友達のことを言われて更に力が抜ける。
皆だけは、絶対に巻き込んではダメだ。
「わかった」
「慈悲深いことだな、そんなに仲間が大切かよ...」
何かをぶつくさ言っているが、ギリギリと腕を固定されているのが凄く痛くて、それどころではない。
「お前、本当に顔変わんねーな。結構痛くしてんだけどな...」
いや、もう充分痛いです。
「腕、細いな~こんなんでよく生きていられるな」
あの、身体中まさぐるのやめてください。腕に力いれるの止めて下さい。足を触るのやめて下さい。
「胸筋もスゲー薄いな....」
胸を触らないで!!揉まないで!!いやぁぁあ!痴漢です!痴漢です!
「兄貴!すみません!やられてしまいました!」
「申し訳ございません!」
やられた何人かが回復したみたいで、俺を拘束している金髪ピアスさんに謝っている。
俺はやっと金髪さんが胸を揉むのをやめてくれた。俺の無い胸触っても意味無いんです。
「あーいいよ、いいよ。元々コイツはお前らには手におえねーし....もうすぐつくと思うしな」
キキーと、車が止まる音がした。
その瞬間、いきなりドアが開かれて俺は外に出される。
そこは和風の屋敷で、少し小さい城だと言われたら納得してしまうようなとこだった。
日本風情ただよう庭に池や小石が綺麗になっていて、松の木や桜の木も植えられている。京都でこんな感じのがあったような気がする。
拘束されてさえいなかったら、今すぐにでも観光したいと思える場所だ。
「連れてきました」
金髪さんともう一人の人がそれぞれ俺の腕を拘束して、無理矢理に座らせる。
イザというときにいつでも折ることの出来るように固めている腕が物凄く痛くて怖い。
「おぉ~来たか」
歓迎の様子で俺の前に表れたのは、一言でいうならワイルドな美中年。
この状況を誰か説明してください。
久々に更新出来ましたよ!長らくすみません。
久しぶりなのでちゃんと書けているか心配です(^o^;)




