第14話 姉とお話
「本当に悪い!!うちの姉貴が暴走しちまって」
政宗は自分の部屋に案内したあと、頭を下げて謝った。あの後、とんでもない勘違いをした姉への弁解と喧嘩が始まり、将也はおいてけぼりだったのだ。
「いや、大丈夫。あの人...じゃなくて、えっと...」
「愛だ、 伊達 愛 悪い奴ではないんだが...あんな感じなんだ」
(確かにとてもパワフルな感じの人だった)
「あ、そうだ。風呂に入るか?先に入ってろよ」
そういって、タンスを開けて自分の寝巻きを引っ張りだす。しかし大きいサイズしかないので、将也の分は自分の小さくなったものを渡した。
「ありがと、じゃあ言葉に甘えさせてもらう」
そういって、将也は案内されながら風呂に行った。
「政宗!!あの可愛い子どこ!?あの真っ白な子どこに行ったの!?」
バタバタと二階から下りてくる愛がそういいながら表れた。
「あ?将軍なら風...」
「言わなくても分かるわ!!安心しなさい!!お風呂にいるんでしょ!?」
シャキーン!!と片足あげて、目元にピースをつけるポーズを決めてそう宣言した。
(だったらなんで聞いたんだよ)
「私もお風呂に入るわ!!じゃあ!!」
ポーズをとき、手を降って本気で風呂に向かおうとする愛を全力で政宗は止めた。
「ふざけんな!!テメーなにがしたいんだ!?バカか!?バカなのか!?ぁあ!?」
見た目は中性的といえども将也は男、いくらなんでも可笑しいと判断し、政宗は全力で止める。
「もう!!ただあの子と話をしたいだけよ!!なにが悪いの!?見た目的に間違ってないじゃない!?」
「性別が間違ってんだよ!!!」
姉弟喧嘩がまた始まりだしそうになったとき、ガチャっと音がなった。
「風呂、ありがとう」
「... ... ...政宗、アンタ風呂に入って来なさい」
「ハァ?なんでだよ!?」
「私はこの子と話したいことがあるから」
愛はさっきまでのハイテンションとは違い、真剣な眼差しで政宗をみる。
将也はなにが起こっているのか余り分かってないが、自分にとって不都合なことが起きているのは理解した。
(え!?絶対にいや!!愛さん怖い!大きい!!話すとか出来ない!!お願い政宗さん!!助けて!!!)
そう願いながら、政宗の目をジっと見つめて助けてアピールをするが、政宗はその視線を勘違いした。
「わかったよ、俺が風呂でるまでだぞ」
そういってドアを開けて出て行ってしまった。
(政宗さぁぁああんんん!!!!??何で!?え!やだ!一人にしないで!!!)
そんな心の叫びは無視され、残ったのは強烈な存在感を出す美女だけだった。
「そこに座りなさい」
そう命令され、愛の向かい側に座る将也。今、将也の頭の中にはライオンの檻に閉じ込められたバンビの気持ちだった。
「貴方に話たいことがあるの」
さっきまでの叫ぶような喋りでないにしろ、とても重い声であるために、その時点で将也にはアウトだった。
「なんですか?」
「貴方、政宗のことをどう思ってるの?」
顔は真剣その物であり、本気で政宗を思っている姉の姿だった。
「政宗から貴方の話は嫌って程聞いたわ。そこをふまえて貴方に聞きたいの。
政宗はね、顔は怖いし性格もぶっきらぼうだし暴力的だし、不器用だから家族以外は愛情表現を暴力で表しちゃう子なの」
それでもと、彼女はいう。
「大切な弟なの」
「... ...」
将也は純粋に羨ましいと感じてしまった。こんな風に家族に大切にされる政宗が羨ましいと。
そして、将也は愛の目を見据えてこういった。
「政宗はとても魅力的で頼りになる人です。それに、暴力とかは余り関係ないです、心配しないで下さい。政宗は...」
(うん、ハッキリ言って僕の方がダメダメだよね。政宗さんには助けて貰ってばかりだし...でも、機会が有れば...多分ないだろうとは思うけど...)
「俺が命にかえても守ります」
(これだけは、誓うことができる)
「そう...貴方は政宗より強いって本当なのね、強者の発言ね...(ボソッ」
ぶつぶつと言ってから、愛はバン!!とテーブルの上に足を乗せて目元ピースをした。
「いいわ!!!認めてあげてもいいわ!!政宗を泣かせたら許さないわよ!!!」
「泣かしたりしませんよ」
「なんでそう言い切れるの!?何か根拠は!?」
「政宗が好きだから」
キッパリとそう言いきった。勿論、友達的な意味であり、純粋な気持ちだ。
「そう、ならよかったわ!フフっ...」
嬉しそうに笑う愛の姿を見つめた将也は反射的に...
「....愛さんって...可愛いですね」
思わず将也はそういった。因みにそれは内面的にも外見的にもな意見だ。
「ふぇ?可愛い?」
「はい、可愛いです」
「...そうだわ!!!いっそのこと!!!私の婿に来なさい!!!そうすれば全ては解決よ!!!」
ビシ!!!
「いやです」
(怖いです)
「なんて...ことなの...この私が...いいわ!!わかるわ!!別に本気にしないでよ!!!さっきのは冗談だから!!!」
(いや、わかってますよ?こんな美女が僕なんかにそんなこと言うわけないし)
「う...ぅう...もう寝るわ!!!おやすみ!!!」
「おやすみなさい」
「あ、ああ!!!私の部屋は基本的にあいてるわ!!!あいてるのよ!!!」
「そうですか、おやすみなさい」
淡々とした返事をする将也に愛は言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にしながら、凄い勢いで二階の部屋にもどった。
「うわっ...さっきの反則だろ...」
そしてもう一人、顔を真っ赤にしてうずくまる男がいた。
姉の名前は愛にしました!!
将也は人間としては好きになるとおもうけど、多分異性としてはみないだろうなー。