第11話 ヤクザ視点
白虎隊のリーダーで将軍と言われている男の特長は、白い肌に白い髪、それとは対照的な赤い目。
そして...とてつもない異常者。
あるものは、その異常性とは狂暴さだという。
あるものは、人を人とも思わない冷酷さを挙げている。
色々な噂がでて、ちょいと興味が沸き、その将軍とやらに会うことにした。
可愛い部下がやられたというのもあるが、わしの真の狙いはそこだったのだ。
「俺が将軍です」
そういった小僧の実物の感想を言うならば...人形のようだった。よく容姿の整った人間を人形のようだという場合があるが、この場合は比喩表現なしで人形みたいだった。
整い過ぎている容姿、血の気のなさや、表情の乏しさをみて、本当にあの異常と呼ばれている将軍なのかと疑問に思う。
何より余りにも貧弱な細くて華奢な体。身長も足りていない。
「ふむ、なるほどねぇ」
自分より、体格も狂暴さもある男を従わせている辺り、最低限のカリスマ性や人望はあるのだろう。
だが、それだけだ。
わしは奴に銃弾をぶちこんだ。死体はどこかへ売るつもりだった。アルビノなんてのは珍しいものだ、高くつく。
もし、運良く急所を外して腕や足とかに当たったのならば... ...その時は金持ちの女に売ってやろう。
いや、いっそのこと薬漬けにして戦利品として持ち帰ってやろう。綺麗な顔をしているから桜義組の奴等は喜ぶだろう。
そう思っていたんだが... ...
ガキン!!!
「おやまぁ、外れちゃったよ」
小僧は澄まし顔で避けた。
いや、澄まし顔じゃない。楽しそうに笑っていた。殺されるかもしれない状況で面白そうに...確かにこれは異常者だね。
「さっきの音は一体なんだ!?」「将軍、ご無事ですか!?」
煩い外野がガヤガヤと現れ、わしはウンザリした気分になった。
折角楽しそうになってきたのに。
「よるな、距離をおいて」
駆け寄ろうとする外野に小僧はそう指示をだす。懸命な判断だと褒めてやってもいい。
「赤城さん...だっけ?なんでこんなことした?」
よこの男から聞いたであろうわしの名前を淡々とだし、小僧はそう質問した。
「お前さんの仲間がうちの組に暴行をしたんだよ」
その答えをいってやったら小僧はやはり淡々と人形のような表情で、その三人をみつめた。
「すまねぇ将軍!!」「将軍のことを...貧弱とか悪口言われて...」「つい...」
それに対して小僧はなにも言わない。やってしまったものは仕方がないとばかりに、こっちを見てこう言った。
「そっちの言い分は分かった。でも殺されたくないから他の条件にしてほしい」
意外だった。いや、人間だれしも生きたいと思うものだが目の前の小僧はそもそも生き物なのかどうかが疑わしい無機物さだった為に生きることを望むというのが意外におもえた。
所詮はこいつも自分勝手な人間か...
理不尽だとは思うが、そんな落胆がでてしまった。いや、それでいいのかもしれない。それが人間なのだから。
「あぁ、いいよ。他の条件に変えてやろう」
わしは落胆しながらも条件をかえることを許可する。本当は剥製にでもしてやりたいが、今回だけは許してやろう。
三人の男たちに銃をむけていった。
「この舎弟たちに銃弾ぶちこむのと...」
そして今度は小僧にむけて銃を定める。
「お前に銃弾をぶちこむの...どっちがいい?」
こんなの、悩む必要ないのだろう。回りがザワザワとしている。
しかしその大半は舎弟が銃で撃たれるのを望むものだった。小僧が撃たれるというのは考えもしていない。
わしもそう思って静観していた。
だが...可笑しなことがおきる。
「ふむ...」
納得したような顔で小僧はこちらに歩いてきた。
「将軍?...」
それに対して驚愕の声もあがるが、小僧は普通にこっちに歩いてきた。
「小僧...どうするつもりだ?」
わしの問に小僧は白く細い手でわしの手首を掴んだ。いきなりのことで一瞬同様するわしに構わず、ゆっくりとよく聞こえる声でこういった。
「自分の死を選ぶ」
そして、小僧は自分で引き金をひいた。