第8話 謎の男
(わぁ...無双って本当に出来るんだ...)
将也は政宗を解放したあとの光景を見てそう思った。
政宗は一人で何十人も相手しており、その光景は野獣が獲物を捕らえる光景に似ていた。
その政宗は大量の人間をなぎ倒した後、将也の方へと向かった。
「おーい、こっちは終わったぜ」
180後半位の身長に、将也とは対照的な黒い肌と大きな体格に見あった筋肉、普通に見ればかなり男前の部類に入る。
「ありがとう」
血にまみれた姿で来る政宗にビビり目線を反らしながら、礼を言った。
「で、これからどうすりゃいいんだ?将軍」
「取り合えず、怪我をした人は奥の部屋に行って休憩、怪我をしてない人は歩けない怪我人を部屋に連れていね。とにかく休んで」
政宗の質問に対して将也はテキパキと指示をだしている。コミュ障を患ってはいるが、目を合わせずに声を小さくすればなんとか出来ている。
本当ならば怪我人は病院に運びたいが、理由が理由なので滅多な事じゃないと無理がある。
「なんで...政宗が捕まってたの?」
将也はそこが一番気になっていた。政宗の実力ならばそんなヘマは起こさない筈だからだ。
「んぁ?昼寝してる時に奇襲が来て、そのまま寝てたら捕まってた」
しようもない理由に将也はポカーンとしたが、そういう男なのだと思い、将也は諦める。
(いや、別に怖いとかそういうんじゃないよ?別に注意する勇気がないとかそんなんじゃないから!!!)
「にしても...ドラゴンの野郎達、あんなに引き連れて来てよ、結構なもんだったぜ」
「そうだな、俺も怖かった」
将也としては正直な感想を言っただけなのだが、政宗は納得のいかない表情をして
「よく言うぜ、首折りまくってた奴がよ」
「そんな事したか?」
(嫌々、それはないでしょ。面白い冗談を言うな~政宗さんは)
首を傾げた様子の将也をみて、政宗は将也にとってアレは取るに足らないものだったんだと感じ、少しの恐怖と歓喜がでる。
「ッハ!!お前はそれでこそだ」
バシバシと政宗は背中を叩き、現在二人しかいない廃墟に音が鳴り響く。
他の皆は将也の指示道理に奥の部屋へと行っている。
奇襲のせいでヤバイ感じにはなったものの、最終的には平和が戻り、よかったよかったと将也は心からそう思っていたが...
ガラガラガラ...
倉庫の扉が開く音が聞こえた。ガラガラと大きくそこそこ重量のある扉を一人で軽々と横に引いている。
「ドラゴンの残党か?」
政宗は眉を潜めながら、警戒をする。もしそうならばまた倒さなければならないからだ。
対して将也はビビり、政宗に全てなんとかしてもらおうと完璧に負け犬思考を働かせていた。
「誰?」
出来れば強そうじゃないのをお願いします。と心のなかで念じる。逆光のせいで男が見えない。
カツリ...カツリ...
男が少しずつ歩いてきて、影に入り、その正体が見えてくる。
ドラゴンの残党と見るには歳が入っており、パッと見たところ30前半ぐらいだ。中年とも若者とも言えない雰囲気である。
色のついたグラサンをしており、紫混じりの赤いスーツにオールバック。傷の付いている顔が明らかに堅気でない様子だ。
そんな男がある程度近づいていたが、そこで政宗は呼び止めた。
「おいオッサン!!!テメー誰だ!?」
政宗の威嚇は傍にいる将也でさえビビってしまう程だったが、男はヘラりと笑っている。
「いやなに、ちょっと訪ねたい事があるだけさ」
「一体なに?道にでも迷った?」
将也的には心からの親切心であり、本気でそう思ってのことだったのだが、今の状況だと挑発にしかならない。
「若いっていいねぇ~聞きたいことはそうじゃね~んだよ...」
間延びした喋りで、一旦区切り二人を見据える。それは獲物を定める目であった。
「白虎隊のリーダー...将軍ってのはどいつだい?」