06 スキャンダル
国は荒れた。
王の後継者たちによって。
兄弟、親族、親と子が互いに殺し合う悲惨な状況だった。
互いが互いに王を名乗り、平和だった王国は数日後にはすべての国土に血が降り注いだ。ありという町と町、村々の男たちは次々徴兵されていき、残された女たちは途方にくれた。やがて男手がなくなり、田畑は次々荒れ、遂にはまだ幼い子まで国に連れて行かれた。
食べるものがなくなり互いが敵になっていく。
皆、生きることに必死だった。
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「マリー、僕は戦争を止めてくるよ」
「は?あんた、なにいってるの?!」
私は幼なじみの突然言葉に驚いた。
はっきりいってなに言っているか理解ができない。
私たちの国は王位をめぐって戦争をしている。
もう、何年も続いるが、一人また一人と後継者が減っていて、そのうち誰もいなくなるんじゃないかと私は思っている。
誰もいなくなったら次は、漁夫の利のごとく隣の国に吸収されて終わりだろうと私はふんでる。
まぁその際にまた、戦争になるはずだけど。(へんちくりんの貴族に限って生き残りそうだし~)
そんな国の状況が嫌になるのは解るけど、いきなり戦争を止めてくる発言は訳が解らない。
「だから、戦争を止めるんだよ、マリー」
「だーかーらー、意味が解らないって!!」
「僕は王になる」
「はぁ!?」
常々、変な幼なじみだと思っていたが遂に脳みそにお花畑でもできたか?
思わず、頭をジーッと見てしまった。
「・・・えっと、マリー聞いてる?」
「あんたの頭、蝶々でも飛んでるんじゃない?」
「飛んでないから・・・」
「じゃあ、なんでいきなり王になるなのよ?
平民なんて兵士に無理矢理なって死んで終わりよ。
運良く戻ってきても直ぐに別の戦場に連れて行かれちゃうんだから!」
「マリー、僕の父親は第一王子だったんだ」
「はぁ!?第一王子!?」
第一王子って早々に死んじゃった人じゃないの!
確か、一番まともだったから、次男の母親の妃に王位継承前に毒殺されちゃった人!
(まぁそのあとに妃は息子の次男に殺されちゃうんだけどね)
その毒殺を皮切りに継承者が次々、殺し合いをはじめて戦争に発展するのよね~
って・・・そんな人が父親?!
「・・・そうだよ、今までは力がなくて戦うことが出来なかったけど協力者を見つけたんだ」
「だからってあんた騙されてるわよ!!」
私は力一杯叫んだわ!
だって今まで見つからなかった協力者が今、見つかるなんて怪しさ満点じゃない!
「マリー、僕は王族だ」
「今は平民よ!」
「だけど、王族の血が流れているんだ。
なんで、父親が僕だけを逃がしたかはわからないけど、この戦争を終わらせる義務がある」
義務って・・・確かに戦争が終わってくれることは望んでいる。
けれど、そのために大切な幼なじみを生け贄にはさせないわ!
私は目まぐるしく計算を始める。
「・・・マリー、今度会ったら君に聞いてほしいことがあ・・・」
「そうだ!!」
「るん・・」
「決めたわ、私も一緒に行く!あんただけじゃ心配だもの!」
そうよ、一緒に行けば心配も激減するし、余計な虫(女)が付かないようにも見張れるから一石二鳥だわ!
「マ、マ、マリ~!!あ、危ないんだよ!!」
「なによ。なんか文句があるわけ?言っておくけど、私、あんたより強いわよ!!」
すると、幼馴染が少し青ざめた顔でうなずいた。
ギルドランク最年少SSSの私に勝とうなんて500万年早いのよ!!
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後の歴史は語る。英雄王アレックの始まりを・・・。
戦争を憂いて戦いを終わらせるために戦い、
国民に過ごしやすい国を造ることに生涯を捧げたよき王だと。
そして、そのことから英雄王と呼ばれるようになったと。
その傍らに常に妻マリーがいたことを。
だから、英雄王の名誉のため、英雄と呼ばれる所以が妻の策略、妻のほうが英雄王より強かったことは、けして知られてはいけない王家の秘密である。
遅くなりました・・・|゜Д゜))コソーリ