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ヴァンパイアを保護しました

僕は、彼にしがみついたまま数分地面に座りこんでいたため、いつの間にかふわふわとした感覚も無くなっていた。

彼も血を吸ったからなのか、さっきと比べ物にならないくらい元気だった。

さて、彼には色々聞きたいことがあるのだがまずは

「君、帰るとこはある?」

という事だ。これがずっと心配だった。

本人がヴァンパイアだと言っているため実際の年齢は分からないが、少なくとも高校生くらいに見える。そんな彼が、体調が悪い中、夜のこんな場所に1人で居るのはどう考えてもおかしいと思ったのだ。

案の定彼は、

「帰る場所、ない、です。」

と震え声で答えた。僕はそんな彼から事情を聞くべく、

「言える範囲でいいから、何があったのか教えてくれない?」

と言った。彼は優しく頷きながら答えてくれた。


彼から聞いた話によると、彼は幼い頃に両親を亡くしていて今までは彼の親戚の家で暮らしていたらしい。だがその親戚の待遇はひどく、ついには家を追い出されてしまったという。彼は、

「まぁ親戚の態度には耐えられなかったですし、そのうち出ていこうと思っていたので丁度よかったかもしれないですね。」

と、作り物のような笑顔で言った。

彼が親戚にされていた事はまぎれもなく虐待だった。だから彼が家を出ることが出来たのはいい事だと思う。

ただ、このまま彼が1人で暮らしていくには1つ問題があった。ヴァンパイアは、普段の食事とは別に血液を飲むことでしか補えない栄養分があるらしく、その血液は特定のヴァンパイアと人間との取引で貰っているのだという。

つまり、彼の周りに頼れるヴァンパイアが居ない今、彼は血液を摂取する事ができないのだ。僕は、そんな彼を放っておく訳にはいかなかった。


彼を目の前に、これからどうするかを考えていた時、僕はふとある考えが浮かんだ。

僕は職業柄、人を殺す。だから殺した人からなら誰にもバレずに血液をもらう事が出来るのではないか。殺し屋とヴァンパイアって実は相性が良いのではないか、と。

我ながらいい案だと思う。それにちょうど僕の家は1部屋空きがあるし、いっそのことうちに来てもらったらいいのではないかと思った。だから僕は彼に、

「行くとこないなら、うちにおいでよ。」

と言った。

その言葉に、彼は明らかに困惑しているようだった。まぁ今日会ったばかりの知らない人に、いきなり家においでなんて言われている訳だから、彼の反応が正しいのだが。

彼に不審だと思われない為にも、こうなった経緯をきちんと話した。その時に自分が殺し屋だということも話した。でも彼は僕の予想に反して、僕の事を怖がったり逃げようとしたりはせず、しかも

「まぁ現に僕もヴァンパイアですからね。」

と明るく言った。


経緯を話し終わったら、彼は黙り込んでしまった。

やはり怪しかっただろうか、困惑させたのかもしれない。

数分の沈黙が流れた後、それを破るように、

「いくら、払えばいいですか。今あまり手持ちがないんです。」

と突然彼が言った。

正直本当にそんなつもりはなかったからビックリして、

「お金なんて取らないよ。丁度死体が勿体ないと思ってただけだから。うちおいでって言ったのはついでみたいなものだから。」

と、慌てて訂正した。

本当に慌てていたから、後からよく考えてみると所々日本語がおかしい。死体が勿体ないってなんなんだ。

でも彼は僕の言いたいことを察してくれたようだった。そして彼は、

「お金はいつか払います。1日、いや、今夜だけでもいいので泊めてください。お願いします。」

と僕の前で丁寧に土下座をした。僕はまた慌てながら

「本当に気にしないでいいから、だから顔上げて、ね?」

と、地面に頭をつけている彼を全力で止めた。

それでも彼は、地面に付けた頭を一向に上げようとしなかった。

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