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ヴァンパイアは実在しました

彼が泣きそうな顔で謝ってくるものだから慌てて

「全然、大丈夫だよ」

と、出来るだけ違和感のない笑顔で言った。そして、少し落ち着いてきた彼が

「貴方から血の匂いがしたからつい、ごめんなさい………」

なんて言ってくるものだから、冗談のつもりで

「吸血鬼みたいなこと言うね」

と、笑って言ったのだが、彼は驚いたような、警戒しているような表情で

「信じられないと思いますが、ヴァンパイアです、僕。」

と言ってきた。もちろん少し驚いたが、彼の事をヴァンパイアだと思ってしまった方が今までの行動に納得がいくためすんなり受け入れてしまった。

「ヴァンパイアって実在するんだ、面白いね。」

彼を安心させるつもりで言ったのだが、僕の反応が予想外だったのか、彼はどこか引っかかっているような顔でじっとこっちを見ていた。僕はそれが少し気まずかったので話題を変える。

「体調が良くないみたいだけど大丈夫?」

唐突に聞かれた彼は、どう答えていいのかが分からないのか戸惑っていた。

「もしかして、ヴァンパイアなら血飲むことで回復したりするの?」

その問いには、彼は少し沈黙してから頷いた。

「だから、あなたから血の匂いがして、無意識に噛み付こうとしてしまったんです。」

彼は未だ肩で呼吸をしながら言う。あの時の気配はそういう事だったのかと僕はようやく理解した。

「でも、血の匂いがするってことは怪我、してるんですか?」

心配そうな顔でこちらを見上げている彼に、これは僕の血ではなくて……と言いかけてやめた。さすがに殺し屋だなんて言えるわけが無い。殺し屋と言ってしまえば聞こえはいいが、これでも一応犯罪者なのだ。引かれるどころか通報されるかもしれない。だから何とか濁して、仕事先に来たクレーマーと喧嘩したという事にしておいた。そして僕は、

「僕の血で良ければ飲んで。」

そう言って、さっきまで彼に掴まれていた腕を差し出した。彼は、最初は

「そんなこと、出来ません。」

と言って断りつづけていたのだが、生存本能には逆らえなかったらしく最終的には

「すみません、ちょっと痛いと思いますがすぐ終わるので。」

と僕の腕を掴んだ。

「痛かったら言ってください。」

彼はそう言って、僕の腕を引き、抱きつくような形で僕の首筋を噛んだ。まさか首を噛まれるとは思っていなくて少しびっくりした。確かに今彼に血を吸われているはずなのだが、痛みは一切感じない。逆に少し気持ちがいいとさえ思う。血を吸われているからか、力が上手く入らずふわふわした感覚に襲われる。一瞬貧血のような目眩に襲われて立っていられなくなり、彼もろとも膝から崩れ落ちた。

「わっ、ごめんなさいごめんなさい。」

彼は慌てていた。

「大丈夫。」

僕は言った。正直まだ少しだけ頭がふわふわしている気がしなくもないが体調が悪い訳ではないから多分大丈夫だろう。

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