表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

ヴァンパイアに出会いました

20:00頃、東京

日本は3月後半で、まだ少し寒い。

数年前から殺し屋をしている僕は、殺す時に便利だからという理由でいつも何枚か着ているので寒くはない。

殺し屋は、もちろんバレてはいけないものや事を沢山持ち合わせている為、多少の変装をしている。でも映画のように大袈裟な変装はしない。今の見た目は仕事帰りのサラリーマンのような感じだ。

今日はすぐ任務が終わったから久々に早く帰って沢山寝たいと思っている。

気配を消して出来るだけ人目につかない道を選んで歩く。これは殺しの際にやる事なのだがもはや癖になってきていて、プライベートでも人がいない道だけを歩いていたら同僚に逆に怪しいからやめろと言われた事がある。

今日は、僕の顔を見た奴ら(ターゲット)は全て殺しているからわざわざ狭い道を行く必要も無いのだが、無意識に来てしまったのだから仕方がない。今更引き返すと余計に怪しくなる。

でも今回は知らない土地ということもあり、気づいたら怪しげな裏路地にたどり着いてしまった。

幸いにも今は誰もいないようだったが、早くこの薄気味悪い場所から抜け出したくて少し早足になる。

そしてその気味の悪い裏路地からそこそこ離れた頃、いきなり人の気配を感じた。

殺気やマフィア特有の気配は感じられなかったから、さっきの場所から追われてきたという訳ではなさそうだ。出来ればただの通行人であることを祈っている。

とりあえず気配の正体の様子を見るべく、気配を消して裏に回り込む。そして徐々に距離を詰める。

そうこうして、半径3m内に入り込んだ時、いきなりターゲットの気配が変わった。何かを狙っているような気配だ。

僕はしっかり気配を消して、音を立てないように動いていたはずだったのだが、まさか気づかれてしまったのだろうか。

だとしたら、相手は僕よりもずっと上の存在だろう。

まだ気づかれたと決ったわけではないが、何があってもいいように一応袖の中に隠していた武器を構える。そして、さっきよりも慎重に気配を消して、ターゲットを観察する。

見ればそこには、高校生くらいの青年が座りこんでいた。

体調が悪いのか、苦しそうに肩で息をしながら俯いている。

何かを狙っているような気配はもう感じなかったから、さっきの気配は気の所為だったということにして、武器を隠して彼に近づいてみる。

彼との距離が残り1.5mほどになっても、呼吸の音で足音が聞こえないのか彼はこちらに気づいていなさそうだった。さすがに心配だったので

「大丈夫?」

と、声をかけてみる。

目の前の彼は苦しそうに呼吸を繰り返すばかりで返事をしてくれそうにはないが、それでも頑張って僕のことを見上げようとしてくれているのはわかる。

警戒されないようにしゃがんで目線を合わせる。

これも殺しで身につけた技術だ。相手や周りの人に警戒されては殺しにくいから、安心させて信頼を得るところから始めるのだ。

しゃがんだことでさっきよりも距離が近くなり、再び俯いてしまった彼の顔もよく見えるようになった。

彼はとても整った顔立ちをしていて、ギリギリ女の子に見えなくもないような、中性的なかわいらしい顔をしていた。

そして、全体的にとても細かった。

身長は高校生男子の平均より少し低いくらいだろうか。低くは無い。そんなに細くてちゃんとその身体を支える事が出来るのか、と思うくらいには細い。

そして彼はすごく色白だった。白くて綺麗な肌、というよりかは何年も太陽に当たっていないのではないかというくらいに白く、少し病的に見えるほどだ。近くで見てみるとそれがよくわかる。

そんなことを考えていると、彼の気配がパッと変わった。さっきと同じで、まるで別人になったようだ。

彼は獲物を狙っているような眼をしてこちらを睨んでいた。

そして案の定、次の瞬間にはもう腕を掴まれていた。

武器を取り出そうにも彼の動きが早すぎて間に合わなかった。

噛まれる、と覚悟をして受け身をとった時、彼はピタッと動きを止めて涙目でこちらを見上げていた。そして震えながら

「…ごめんなさい。」

と言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ