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第二章 修行と誓い

15歳の時、俺、シュウと幼なじみのエレナは孤児院から引き取られることになった。

だが、それは俺が養子で引き取られたのに対して、エレナは‘’奴隷’’だった。

最後まで泣き叫ぶ彼女の手を取れなかった俺は決意した、修行して彼女を助けると…。


孤児院を出た日


 俺は後ろを振り返らなかった。


 振り返れば、エレナの顔が思い浮かんでしまうから。


 十五歳の俺は、魔法名門の貴族の屋敷へと向かう馬車の中で、拳を握り締めていた。


 (強くならなきゃならない)


 この世界で、力のない者は何も守れない。エレナを救うためには、俺が力をつけなければならない。


 だからこそ、俺は修行にすべてを捧げる覚悟だった。



---


魔法の修行


 俺を引き取った「セフィロート家」は、歴史ある魔法使いの名門だった。


 その家の当主であり、俺の師となった男――ライオネル・セフィロートは、口数こそ少ないが圧倒的な魔力と知識を持つ人物だった。


 「お前には、これから3年の間で我が家に伝わる《感受変換》を学んでもらう。もちろん、死ぬことなんて当たり前にある」


――秘匿魔法「感受変換」 ――


精神作用系魔法であり、効果は至ってシンプル。俺が感じたり受けたりした正の気持ちや負の気持ちを様々な能力に変換可能だということ。

そしてそれは、変換対象は自分だけではなく、他者も対象に取れる。例えば…


‘’この子を救いたい’’


そう強く意識するとその子の治癒能力向上させることが出来る、だが、傷口をすぐに塞ぐとかではないので、回復魔法との併用が必要だ。


他にも、‘’誰かを助けたい’’や‘’皆を守りたい’’と強く意識すると身体能力が向上する。だがそれは自己暗示に近い感覚で、使用後に大きな反動がきて全身を痛めた。痛覚無効化などの魔法も必要だ。


そして当たり前だが、この魔法にもリスクがある。

リスクとしては正の感情に働く分にはいいが、負の感情にも作用するため暴走する危険性があるということ。例えば簡単に、


‘’全員殺してやる’’


そんなことを思えば殺意に飲まれ我を忘れ暴走、制御不能状態に陥る。周りがどうなったかは魔力が切れて初めて分かる…大体は大切な人が血に染っているという。


リスクはあるが、その能力を鍛えればそれは周囲の環境や事象にも影響を与えることができる。今の俺には、これ以上ないほどの彼女を助けるために必要な力だった。


 だが、それを習得するには膨大な魔力量と、魔力の微細な操作技術が必要だった。


 「修行は厳しいぞ。生半可な覚悟では、習得できん」


 「……望むところです」


 父の冷酷な視線と共に告げられた言葉に、俺は迷わず答えた。


 エレナを救うためなら、どんな苦しみも耐えてみせる。それがあの時、彼女の手を取れなかった俺に出来る唯一の償いだから…



---


一年目:基礎の破壊と再構築


 最初の一年は、徹底的な基礎鍛錬だった。


 魔力を正確に操作するため、俺は一日に何百回と魔力の流れを意識し、コントロールする訓練を繰り返した。朝から晩まで魔力を練り続け、寝る間も惜しんで魔法理論を叩き込まれた。


 だが、どうしても思い出してしまう。


 夜、訓練の合間にふと意識が緩むと、エレナの笑顔が脳裏に浮かぶ。


 ――「シュウ、また変な話してる!」


 ――「でも、そういう話、私は好きだよ?」


 俺の前世の記憶を唯一信じてくれた、優しくて明るい少女。


 エレナは今、どこで何をしているのか。


 あの日、奴隷として買われていった彼女は、どんな生活を送っているのか。


 そのたびに俺は、自分に言い聞かせた。


 (今は考えるな。ただ、強くなることだけを考えろ)


 エレナを救うために、俺は負けるわけにはいかない。



---


二年目:戦闘訓練と実践


 二年目に入ると、俺は実戦を経験することになった。


 セフィロート家の戦士たちと模擬戦を繰り返し、時には魔物の討伐にも駆り出された。

そして父は大体の魔術師がこの段階で‘’命を落とす’’と言った。


 だが、俺は難なくこなした。無作為に自分の命を狙ってくる魔物の首にその刃を突きつけ殺した。


その様子を見ていた父は言った。


‘’次は人間だ’’


ここで俺は改めて自分がいる世界が異世界だと再認識した。強くなるに人を殺す。人の命が軽い、前居た世界とは違う世界。


父は使うのは罪人だと言っていたが、人を殺すことには変わりない。前世では当然、人を殺したことなんかなかった。むしろ高校生だった俺にそんなのは無縁、アニメや漫画の世界の話だった。


気づいたら俺の手と足は震えていた。


 (……俺は、殺すことができるのか?)


 エレナを救うためには、当然この先、この手を汚すことも必要になる。


 その事実に気づいたとき、俺は吐きそうになった。


 でも、俺は決めたんだ。


 この世界の理不尽をぶち壊すと。


 エレナを救うと。


 だから、俺は剣を振るった。魔法を撃った。殺すことを覚えた。


 ――俺は、どんどんシュウではなくなっていく。


 それでもいい。俺がどうなろうと、エレナを取り戻せるなら、それでいい。


気がつけば、血溜まりの上に返り血を浴びた自分がたっていた。



---


三年目 :感受変換修得へ。


三年目になり俺は本格的な、秘匿魔法「感受変換」の習得に向け修行を開始した。


「今年が最後の年だ。覚悟はいいか…?」


「あぁ、始めてくれ。父さん」


俺は心に決めたことを思い出す。

―エレナを絶対助ける―

読んで下さり、ありがとうです。次は三年目の修行編から書きます。

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