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白い空間と一枚のドア

久しぶりに投稿します。


瞬間、我に返った時、アルバートは真っ白な空間に立ちつく自分に気づいた。

回りに何があるわけでもなく、ただ、無限に続くのではないかと錯覚するほどの、光りに包まれた空間だった。足元を見ると、どこまでも続く白い床が鏡のように彼を映し出している。


「ここは…どこだろう。夢…だよね。」


アルバートは何かに話しかけるように、小さな声で言った。

しかし、答える者は誰もいない。この空間に人間は自分の他にはいないようだ。

耳を澄ませば、わずかに風が流れるような音が聞こえる気がするが、その源は分からない。


「夢の中なら、こんなのも当たり前か…」


どこからか切り出したような考えが頭を過ったが、すぐに他の思いが乗ってきた。


「それにしても、ここはなんなんだ。」


眼前の景色をよく見ると、わずかながらも違和感が浸み出してくる。

まるで真空を目の前にしたかのような調子だが、それでいて全てが変化したり、ぼやけているわけではない。ただ、大気すら感じられず、「存在」するはずの存在感が薄い。

そんな状況に、アルバートの心は慣れない怪談性の怖さを抱えていた。どこにも属さないこの空間の中で、彼はただ一人立ち尽くしていた。


その時、目前に一枚のドアが現れた。


「えっ、さっきはなかったよね。」


そのドアは古びた木製で、表面には細かな彫刻が施されている。

一見すると重そうだが、不思議と温かみを感じさせるデザインだった。

アルバートはドアをじっと見つめた。まるでそれが彼に語りかけているような錯覚を覚える。

「これを開けろってことなのか…?」


彼の脳裏には、日頃の学校生活がちらついた。教室で感じる圧迫感、廊下ですれ違うクラスメイトの視線、そのすべてが彼にとっては逃れられない重荷だった。

冷たい視線や無言の疎外感が日常となり、彼の心を少しずつ蝕んでいた。


数週間前の美術の授業が頭をよぎる。その日の課題は「自由に描こう」というもので、アルバートは自分なりに頑張って絵を完成させた。彼は自分の絵に少しばかりの自信を持っていた。色使いや構図に工夫を凝らし、自分だけの世界観を表現したつもりだった。


しかし、発表の時間になると、クラスメイトの一人が彼の絵を見て鼻で笑った。「それ、何描いてるのか全然わかんない。変なの。」その一言がきっかけで、周囲からも笑い声が起こった。笑い声は次第に教室全体に広がり、彼を包み込むように響いた。


「別にいいじゃないか」と自分に言い聞かせようとしたが、視線が刺さるように感じられ、全身が硬直した。その後もクラスメイトたちはこっそりと彼の絵を指差して話しているようで、アルバートはいたたまれなくなり、机に突っ伏したまま時が過ぎるのを待った。


教師も気づいているはずだったが、特に何も言わなかった。アルバートの担当である美術教師、ハミルトン先生は中年の女性で、普段は優しい物腰だったが、この時は困ったような表情を浮かべるだけだった。「みんな、静かにしましょう」と一言発しただけで、具体的に誰を注意するでもなく、状況をやり過ごそうとした。その曖昧な態度が、かえってアルバートを孤独にさせた。


さらに、体育の時間にはグループでのチーム競技があった。アルバートは目立たないようにと願いながら列の後ろに立っていたが、チーム分けの際、最後まで名前を呼ばれなかった。

「じゃあ、アルバートは適当にどっちかに入れば?」

体育教師のローレンス先生は豪快な性格で、冗談めかしてそう言ったつもりだった。しかし、その一言がクラス全体に気まずい沈黙を生んだ。その後に続いたクスクスという笑い声が、アルバートの耳にはひどく響いた。

ローレンス先生はそれに気づいていたのかもしれないが、「さあ、早く動け」と軽く手を叩くだけで、深く追及しなかった。その態度には、問題を解決しようという気概が見えず、アルバートにはただの冷たさとして伝わった。


こんな日々の積み重ねが、彼の心を深く蝕んでいた。誰とも関わりたくないという思いと、誰かに認められたいという矛盾した気持ちが彼の中でせめぎ合っていた。クラスメイトたちの視線や態度が、まるで自分の存在を否定しているように感じられる瞬間が何度もあった。


「ここなら…誰もいない。静かで安心できる。」


そんな考えが頭をよぎる一方で、この不思議な空間が単なる夢で終わらないような予感もしていた。普段の生活ではあり得ないほど鮮明で、現実味を帯びた感覚が彼を取り巻いていたからだ。そして目の前のドアに目を戻すと、どこかに続いているような期待感が湧き上がってきた。


「入ってみるしかないよな…」


アルバートは小さく息を吸い込み、ドアノブに手を伸ばした。その瞬間、ドアの向こうから微かに風が流れ込んできた。その風は心地よく、彼を優しく包み込むようだった。彼は一瞬ためらったが、やがて決心がついたようにドアを押し開けた。ドアの向こうには、一体どんな世界が広がっているのだろうか――。


これは、アルバートが未知の世界でさまざまな人々と出会い、困難や冒険を通じて成長していく物語の始まりだった。扉の先に広がる世界は、現実とは異なる不思議な場所ばかりだ。それぞれの世界には固有の問題や謎が存在し、アルバートはその解決に挑むことになる。ときに厳しい選択を迫られ、ときに自分自身の弱さと向き合う瞬間が訪れるだろう。しかし、そのすべてが彼を強くし、現実世界でも少しずつ変化をもたらすきっかけとなっていく。アルバートが次に開ける扉の向こうには、一体何が待ち受けているのか。

――新たな冒険の幕が上がる。


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