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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幻想機アルバグルス

作者: 黒桐

連載準備中の作品第一話のバンダナコミック01大賞向けの短編あらすじになります。



 A.D.と呼ばれた時代。


 人は地球地下資源の底が見えはじめ、現存する資源を運用して新たな資源獲得を目指さなければ緩やかな衰退の未来しかなくなったことで、ようやくひとつのまとまりをみせた。


 外宇宙への進出。


 各国はその第一歩として月の資源獲得を目的とした計画に共同で取り組み、三十年以上の年月をかけて月面に地下資源採掘都市を作り上げた。

 そして、その落成を人類史の新たな始まりとしてENC(地球国家連邦)の設立を宣言し、A.D.からC.D.へと暦を移行させた。


 そして、時は流れC.D.91。


 月面採掘都市は7つに増え、更には新たな生活空間となる宇宙コロニーの試験運用も行われるようになり人類は着実にその生存領域を広げていた。


 しかし―――


1


 ENCは人類の発展を掲げ、そのために複数の計画を並行して進めており、現在もっとも大きなリソースを割いているのが他惑星への開拓移民計画である。

 月地下資源の獲得も、宇宙コロニーの建造による人間の生存可能環境作成も、火星のテラフォーミング計画へと繋がっていく。

 その遠大な計画を特集したプロパガンダ番組を見たひとりの少年がいた。

 彼の名は、瀬尾カナタ。

 彼ははその目を輝かせて、いつか火星の大地に立つという夢を胸に抱く。


 その日から夢に向かって邁進する日々を送った彼は、その努力の甲斐もあって試験運用中の宇宙コロニー「ジェリーフィッシュ2」内にあるアドミニスター学園の高等部への入学を果たし、夢への一歩を踏み出した。


 それから五か月が経ち、前期長期休暇の時期が間近となったことで地球への一時帰還を決める生徒もいる中、宇宙コロニーの維持業務のトライアルに申し込んだカナタは、その日もOM(アウターマシン:Outer Machine、宇宙開拓の際に使用される有人作業機械の総称)を操縦してコロニー外で作業を行っていた。

 OS(アウターシップ:Outer Ship、宇宙船、主に月と衛星施設の往復で運用される宇宙専用の船を指す)の誘導作業を終えてジェリーフィッシュ2内へ帰還すると、指導官であるアマド・テイラーが待っていた。


 アマドも今日はこれで勤務終了ということもあり二人で居住区へと戻ってくると、カナタの同級生である琴吹レイナが迎えにきていた。

 カナタとレイナのやり取りをニヤニヤと見守っていたアマドだったが、そこにバイタル・タグ(位置情報、バイオリズム情報を収集を目的とした、コロニー内の人間全員の装備が義務付けられた端末)から警報音が鳴り響く。


エマージェンシーコール・レベルⅡ


 それはジェリーフィッシュ2の運用、環境維持試験を行う中で異常が発生したことを告げる警報であり、その危険度によって五段階に分けられている。

 レベルⅡは「複数の軽度異常の発生を確認。関係者は原因の調査を行い、住民は自己の生命保護のために一時シェルターへと避難せよ」というものだ。

 アマドは即座に情報端末で状況を調べると、どうやら四つある外部通信施設全てで異常が発生したことで、地球や月との連絡が取れない状態になっているようだ。

 死に直結するような異常ではないことに安堵しつつ、アマドは緊急時対応規定に則り、住民の避難誘導を行うために住居エリアへと向かうことを決める。

 アマドはカナタとレイナの二人に近くのシェルターへ避難するように言うが、カナタは手伝いを希望し、カナタが手伝うなら私もとレイナも同調する。

 アマドは重大な事態にはならないだろうと考え、これも経験だと二人を連れていくことを決めるのだった。


 一方、企業エリアでは社員たちが避難していく中、流れに逆らうように進む四人組がいた。

 彼らは人目を避けるように進み、フトゥールム社へと入っていくのだった。


 また学園エリアでは、生徒会が主導して生徒たちの避難誘導を行い、ほとんどの学生がシェルター内へと避難を終えていた。

 そして、シェルターの入り口で遅れている学生たちを待っていた生徒会メンバーたちの耳に、新たな警報音が響き渡る。


エマージェンシーコール・レベルⅤ


 それは「ジェリーフィッシュ2に致命的な問題が発生。直ちにジェリーフィッシュ2外への退避せよ」というもっとも緊急性の高いものだ。

 突然、危険度が最大レベルにまで引き上げられた事に混乱する暇もなく、シェルターへのハッチは閉じられ、シェルターはジェリーフィッシュ2から切り離されるとそのまま地球への避難用降下シャトルとして発進していく。

 その姿を生徒会メンバーたちは呆然と見送るのだった。


 カナタ達もまた、エマージェンシーコール・レベルⅤの警報音を住宅エリアで聞くことになっていた。

 端末で閲覧できるバイタル・タグの位置情報で避難の遅れている住民がいないことを確認したアマドは、カナタとレイナと共に近くのシェルターへと向かう途中で、危険度の上昇を知る。

 突然の事態に戸惑うカナタとレイナ。

 対してアマドはレベルの急激な上昇に作為的なものを感じながらも、目の前の二人の安全を優先することに決め、シェルターが切り離されたためOSで脱出する必要があることを告げる。

 向かう先が変更になり、来た道を戻ろうとしたその時、近くにある物資搬入口が突然稼働し始める。

 何事かと三人が目を向けると、開いた搬入口から一機の大型OMが現れるのだった。


 白を基調とした流線的なフォルムの人を模したOMだ。

 両腕の甲に盾のような大きな装甲があり、腰部からT字に分かれる形で二つの大型スラスターが伸びている。


 見たこともないOMにカナタとレイナが困惑する中、アマドがその正体を明かす。

 フトゥールム社が現在開発しているAAシリーズと呼ばれる大型OMの試作機の一機であり、ジェリーフィッシュ2の近郊宙域で性能試験を行っているため、自分のようにコロニー外で作業中に目撃する可能性のある者には事前に黙秘するよう通達されていたのだという。

 その試作機がなぜ今こんな住宅エリアのど真ん中に搬出されたのかはわからないが、この搬入口を利用してジェリーフィッシュ2下部のOS埠頭まで向かえないかと操作盤へと手を伸ばす。

 しかし、試作機の乗せられたリフトの操作盤はエラーを起こしており、リフトを使って移動することはできそうになかった。

 そこでアマドは避難のために試作機を借用することを決める。それは場合によってはこの試作機で宇宙へと脱出する必要があるかもしれないと考えたからだ。


 アマドの決定にカナタ達は驚くも、理由を聞けば逆らうことはせず三人はコックピットへと乗り込む。


 見慣れないスイッチ等があるものの基本操作は既存のOMと同じで、移動に使うだけならば問題はなさそうだとアマドはその試作機を起動させる。

 飛び上がり移動を始めて間もないうちに通信が入る。

 アマドは応じる前に念のためカナタ達に喋らないよう言い含めてから通信を繋げると、音声のみで新型機を操作していることを問いただす内容。

 相手の顔が見えないことに猜疑しつつ、アマドは事情を明かし、このまま脱出する考えを伝える。

 すると相手は合流を提案し、こちらへ向かうと言い出す。


 そして企業エリアから一機の大型OMが飛び上がった。

 黒を基調とした色違いの同型機がこちらへ近づいてくる。

 その手には人影が三つあり、それを確認したアマドが警戒心を高める。

 彼の持つ端末に表示されているバイタル・タグの位置情報は三つ。カナタとレイナ、そしてアマドだけであり、近づいてくるOMからバイタル・タグが感知されていない。

 さらには通信で、逃げ遅れた社員をそちらのコックピットに乗せてほしいと提案してくる。

 真偽の判断が出来ないアマドは仕方なく了承し、一度地上へと着地するとハッチを開く。

 その際、カナタに操縦席へと座り、場合によってすぐ離脱するよう言い含める。

 驚くカナタを置いて外に出たアマドは近づいてくる三人にバイタル・タグをなぜ身に着けていないのか問いかける。

 僅かな間の後、三人のうちの一人が拳銃を取り出し発砲、警戒していたアマドは身をよじり回避使用するも肩を撃ち抜かれる。

 倒れ込むようにコックピット内に戻ってくるアマドに悲鳴のような声を上げるレイナと、言われた通り試作機を動かすカナタ。

 そのまま飛び立ち逃げ出すも、進行方向に二機の大型OMが現れる。

 それは月面開発用の大型OM、ネイルと呼ばれる人型の機体だったが、装甲と推進器が増設されライフルで武装しており、試作機へその銃口を向けてきた。

 戸惑う内に距離を詰められ、拘束されそうになったその時――


『気やすく近寄るな』


 ――どこからともなく声が聞こえ、試作機の腹部から黄金の光が放たれる。

 その光に押し返される二機のネイル、後方で飛び立った同型機も近寄ることなくその光景を見ている。

 カナタたちも突然の事態に混乱している中、再度接近してくるネイルに対して思わず振り払うようにカナタが腕を動かすと光の衝撃波が放たれ、ネイルの一機が吹き飛ばされる。

 思わぬ攻撃に地面に叩きつけられるネイル、もう一機は接近はまずいと考えたのかライフルを発砲する。

 慌てて回避操作を行うカナタ。その揺れでアマドが痛みを感じているが気を配る余裕がない。

 そうやって試作機を右へ左へと飛ばしていると、同型機はこの場を去るように背を向け、その背後を塞ぐようにネイルが立ちふさがる。

 連携していることから、仲間なのかと思うカナタの耳に再び声が届く。


『追え、逃がすでない』


 同型機を指しているだとわかるのだが、従うべきなのかという迷いと、そもそもネイルの邪魔で追うことなどできない状況のカナタ。

 命中精度を上げるため距離を詰めながら発砲を繰り返すネイル。幸いというべきなのか、光が弾をはじいてくれるため被弾しても破損には至っていない。

 それでも攻撃を止めないのは足止め目的なのは明らかで、苛立ちの籠った声が響く。


『邪魔をするな。おい人間、さっさとその木偶を片付けろ。もたもたしているともう一機も動き出すぞ』


 その言葉に、ちらりとカナタが地上を見れば立ち上がろうとしているネイルと捉え、これを使えとばかりに光が右腕へと集束していく。

 迷っている暇はないと、ネイルめがけて右腕を叩きつける。

 その拳は装甲をものともせず胴体部にめり込み、さらに光が突き抜け貫通する。

 爆散するネイル、爆発の中から光に守られ無傷の試作機が姿を現す。

 落下していくコックピットのある頭部をもう一機のネイルが回収すると、そのまま逃げていく。

 去っていくその姿を見送っていると、四度目の声、


『追え』


 その言葉に、しかし従うことなくカナタは素性を尋ねる。


『………もういい』


 光が腹部へと集束していき、ハッチが弾かれるように内側から開かれる。そこには動力炉があり、その中から光を纏う何かが出てこようとしている。

 コックピット内に警告メッセージが表示される中、何が起きているのかわけのわからないカナタはモニター映ったその姿をとらえる。


 文様のような光の翼を背に宿した、白いドレス姿の金髪の美女が宙に浮いていた。


 三人がその姿に言葉を失う中、こちらを一瞥した彼女は同型機の後を追うように飛び去った。




2


  ENCは人類の発展を掲げ、そのために複数の計画を並行して進めており、その中のひとつに新エネルギーの調査研究がある。


 その調査員であるフレディ・ノイマンはとある洞窟内に収められていた鉱石から未知のエネルギーが発生しているのを発見する。


 大小さまざまサイズの加工後の残るその鉱石を彼は自らの名前を取って「F・ストーン」と名付け研究を進めていく。

 しかしそのエネルギーは化石燃料や太陽光発電が生み出すエネルギーに比べれば微々たるものであり、早々に打ち切られそうになっていた。

 そのため彼は友人を頼り、その友人が所属する企業で開発している新型OMの動力源として売り込むことに成功する。


 結果、新型OM「advena avis」シリーズの試作機への埋め込まれることになったF・ストーン。


 フレディもまたジェリーフィッシュ2内で行われる性能試験に同行し、その最中で機体ごとひとつF・ストーンを失うという事故に見舞われつつも、着実に研究を進めていた。


 そんな中、ジェリーフィッシュ2内にエマージェンシーコールが鳴り響く。


 慌ただしく同僚たちが動き出す中、彼もまた機密保持のため試作機を降下用シャトルへと移送させるための操作を行う。

 そこで、背後の扉が開き、バンッ―――




「ずいぶんと待たせることになってしまい申し訳ありませんでした。仕える手駒が少なかったため調査に時間がかかってしまいました」


『――いや、かまわん。我からすれば僅かと呼べる時間でしかない』


「そう言っていただけると助かります。目標はジェリーフィッシュ2内にある試作機でほぼ確定です」


『――つまり、我と同じ状況というわけだな』


「ええ、近く試作機奪取作戦が実行される予定ですので、今しばらく待っていただければ」


『――そうか、策が成ればよいな。そうすれば我が自ら動く必要もなくなる』


「そうですね、同胞の救出が叶えばあなたが地球圏にとどまる理由は無くなりますからね」


『――ああ、契約が過不足なく履行されるならば同胞と共に我はあの星を巣とするこなくこの星系を去ろう』


「ええ、わかっていますよ、黒竜殿」



-1


 ……


 …………


 ……………………かつて、人ならざる者を討伐することを目的として集った者たちがいた。


 人間に仇をなす怪物を討ち、人を惑わす異形を滅することで、人々の安寧を守る。

 私怨、大義、正義感、様々な理由から戦う道を選んだ彼らは、多くの人外の存在を屠った。

 だが、その力の及ばぬ存在も多く、退くこともまた多かった。


 しかし、彼らは諦めることはなかった、自分たちの力が足りず倒せないというのならば、封じ、閉じ込めることで世界からの排除を図った。


 そうして多くの人間を超えた存在を屠り封じてきたことで、いつからか人間は霊長を名乗るに至った。


 彼らはその役目を戦いから残った封印を守り維持することへと変わっていった。

 それから永い、とても永い時が流れた。

 口伝の継承も記録の保存も途切れ、役目は忘却の彼方へと消え去った。



 ――しかし、忘れ去られたのだとしても、封印は、封じられたものたちは消えて無くなったわけでない。

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