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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
3:体育祭編
73/499

73:五月初めのミーティング

 甲判定、乙判定、どちらの新入生のデビュー戦も無事に終わり、土日休みを挟んでの月曜日。

 午前中は普段通りに授業が行われて、午後もまたこれまでと同じように甲判定限定ミーティング……と、思っていたのだが、その日のミーティングが行われる教室は少し様子が違った。


「ん? 見慣れない顔が居る?」

 教室の中に、新入生ではあるものの甲判定ではないはずの生徒の姿があったのである。

 どう言う事だろうか?


「あれ? 言ってなかった? 今週から乙判定でも必要なら、こっちのミーティングに呼ばれるようになったんだよ。ナル君」

「聞いてない。と言うかもしかして、もしかしなくても、スズがマリーたちとは別行動を取っているのはそう言う事なのか?」

「うん、そう言う事だよ。私も今日はこっち。とは言え、私は成績優秀と言うよりは、ナル君のブレイン役を期待されてだろうけど」

「なるほど」

 疑問に思っていると背後からスズの声がして、事情説明がされた。

 なるほど、前に先生が言っていた、乙判定組でも必要があるなら呼ぶと言うのが始まったのか。

 そして、中々に難しい話になるし、理解できないと拙いから、俺のサポート役としてスズも呼ばれた、と。


「翠川、教室の入り口でイチャついてんな。俺たちが入れない」

「ん、ああ、悪い。縁紅」

「……」

 と、ここで縁紅が多少イラついた顔で注意をしてきた。

 が、その注意内容が真っ当なものだったこともあり、俺はスズを連れて教室の中へと入る。


「スズ。縁紅に分からないようにやっているのは分かるが、睨むのは止めろ。今のは俺たちのが悪い」

「分かってるよナル君。ただそれはそれ、これはこれって奴だよ」

 なお、縁紅がこちらへ背中を向けた一瞬だけスズが威圧感たっぷりの視線を向けていたので、それは流石に咎めておく。


「よ、翠川。午前振り」

「今日は水園さんも一緒なんだな」

「席順もなんだか寮ごとにまとまっている感じっすね」

「……」

「徳徒、遠坂、曲家、午前振り。そっちも見ない顔が一緒に居るんだな。で、確かに寮ごとに今日は固まってるが、それは話の内容の都合らしいぞ」

「「「へー……」」」

 俺たちが席に着いてしばらく経つと、いつもの面々も、初めて見る面々も教室の中に入ってくる。

 例えば徳徒たちはいつも通りの三人セットだが、一緒に居るのは吉備津ではなく、白に薄く黄色みがかったような髪の毛の色をしている男子だ。

 たぶんだが、申酉寮の生徒で、俺に対するスズのように、徳徒たちのサポート役として付けられているのだろう。

 なおその後、更に見覚えのない男女がやって来て、近くに座った。

 もしかしなくても、六人全員申酉寮って事なんだろうな。


「すみません、前、失礼します」

「よろしくお願いします。水園さん、翠川さん」

「あ、ああ、よろしく頼む」

「うん、お願いします」

 俺たちの前の席にも、戌亥寮の中で見かけた覚えのある男女が着く。

 どうやら俺たちが既に居たことで、この二人はこちらに寄ってきたようだ。


「こんにちは、翠川様。それに水園さん」

「こんにちは、護国さん。それに後ろの人たちも」

「護国さん、こんにちは」

 護国さんたちもやってくる。

 ただし、後ろに居るのは瓶井さんと大漁さんの二人に見知らぬ男女ペア。

 もしかしなくても、虎卯寮で固まっている感じなんだろう。

 なお、少し距離はあるが、間に誰も挟まないように、護国さんは俺の隣、スズとは逆の側に座っている。

 まだ婚約破棄についての話をしていないから、婚約者として、と言う事なんだろうか?


「うーん……」

「……」

「ふわ~」

「「……」」

「一か所だけ空気が悪い」

「仕方がないんじゃないかな」

「そうですね。羊歌さんは私とよく一緒に居ますし、吉備津さんは徳徒さんたちとよく一緒に居ましたから」

 余談だが、縁紅たち子牛寮もちゃんと一か所にまとまっている。

 そして、男女一人ずつ見慣れない顔も居る。

 だが……どうにも辛気臭い空気が漂ってきているな。


 それでも吉備津はどうにか仲を取り持とうと考えているようだし、縁紅もどうしたものかと言う表情はしているので、大丈夫だとは思うけど。

 と言うか、何処から出てるんだこの空気、羊歌さんは気にした様子も見せていないし、見慣れない男女も真面目に座っているだけのはずなんだが。

 隣が陽キャの溜まり場な申酉寮だから、比較して陰になっているのか?

 訳が分からない。


 まあ、なんにせよだ。

 甲判定組十名、乙判定組十名、計二十名が教室に集まって、多少人数が少なめではあるが、一般的な高校のクラスのような雰囲気を醸し出してはいるな。


「素晴らしい。全員時間前に揃っているようだ」

「……。そうですね。一人の欠けも無いなんていい事だと思います」

 と、ここで味鳥先生と樽井先生がやってきた。

 そして、午後の授業開始の合図となるチャイムが鳴った。




「さて。まずは決闘者デビューおめでとう! 皆、素晴らしい戦いぶりだった! 今後も精進し、決闘の腕を磨き、立派な決闘者になっていってほしい!」

 ミーティングの始まりは味鳥先生による、デビュー戦を褒める言葉だった。

 ただ、味鳥先生の言葉に何人かは素直に喜ばず、苦い顔をしているので、そう言う顔をしている人はデビュー戦の成績が自己評価では良くなかった面々なのだろう、たぶん。


「そして、今集まっている面々を見てもらえば分かる通りに、今日から甲判定限定ミーティングは魔力量甲判定と言うだけで集められるミーティングではなくなり、学年内の総合的な成績が優秀な者が集められるミーティングとなった。このミーティングに入りたくても入れない生徒は多い。よって、彼らの規範となれるように、諸君らには今後も励んでもらいたい」

 しかし、自己評価がそんな生徒でも招かれていると言う事は、学業成績も重要と言う事なんだろうな。

 うーん、その内に俺は学業面の問題から呼ばれなくなりそうな気がする……。

 そうならないように努力はするけども。


「それでは、本日のミーティング内容について話すとしよう。主な話題は三つだ」

「三つ?」

 さて、ミーティングの開始だな。

 しっかりと話を聞こう。


「一つ目はデビュー戦が終わった事で、スポンサーからの打診やプロの決闘者のチームからのスカウトがもしかしたら来ているかもしれないので、それについての話だ」

「あー……」

 うん、それは覚えがある。

 俺のスマホと言うか、マスッターのマイページにも幾つか届いていた覚えがある。


「二つ目は今後の授業日程についてだ。ダイレクトに授業成績に関わるので、しっかりと聞くように」

「……。翠川様はどうするのでしょう?」

 これはまあ、ある意味いつも通りだな。

 護国さんが何か呟いているがスルーで。


「三つ目は、今から一か月と少々経った後に体育祭がある。そちらについての基本的な説明と、この場に居る面々がやるべき事についてだ」

「体育祭……ふふふっ」

「スズ?」

「ナル君どうかしたの?」

「いや、何でもない」

 今は五月の頭で、体育祭は六月の中頃。

 ただ、準備や練習の都合……だけでなく、運営関係でも何かあるらしい。

 その為に今日ここで幾つかの情報が渡されるようだ。

 隣でスズが笑っているが……まあ、問題がある事を企んでいるわけではなさそうだし、深くは気にしなくていいか。


「では順番に話をしていこう」

 味鳥先生の話が始まった。

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― 新着の感想 ―
あ、これセリフ的に問題のない事を企んでるのは分かってるのか……www
[一言] >よって、彼らの規範となれるように、諸君らには今後も励んでもらいたい 味鳥先生「特に、誰とは言わないが、公共の場では脱がないように」
[一言] >問題がある事をた企んでるわけではないので 問題の無い事は企んでいると分かっているわけか……。 さすが夫婦(仮)
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