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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
11:冬季合宿編
490/499

490:スズの誕生日

「誕生日おめでとう。スズ」

「ありがとう、ナル君」

 本日は2025年2月3日月曜日。

 スズの誕生日である。

 と言うわけで、今日は『ナルキッソスクラブ』でスズの誕生日パーティーとなり、まずは開幕一番に俺一人だけで祝いの言葉とプレゼントをスズに渡したところである。


「スズ! 誕生日おめでとうでス!」

「誕生日おめでとうございます。スズ」

「誕生日おめでとう、スズ」

「みんな、ありがとう!」

 で、俺に続く形で、マリー、イチ、巴が祝いの言葉を述べて、そこから更に羊歌さんたち魔力量甲判定の女子組に、俺には時々道ですれ違うくらいしか見覚えがない女子生徒たちが続いていく。

 うん、スズも情報収集とか、他サークルとの交渉とかで、案外交友関係が広いよな。

 ちなみに男子は俺しか居ない。

 なので微妙に肩身が狭い訳だけれど……まあ、仕方が無いな。


「ナル君。早速だけど開けても大丈夫かな?」

「構わないぞ」

 一通りの挨拶が終わったので、それぞれがそれぞれに動き始める。

 マリーたちはホスト側としてケーキなどの食べ物を女子生徒たちに配っている。

 そして、スズは俺のプレゼントの中身だけ確かめるらしい。

 と言うわけで開封。


「翡翠のチャームだ。スズが持っている他のアクセサリに合わせられるようにしてあるんだが……どうだ?」

 包み紙の中から出て来た小さな箱の中に入っているのは、翡翠を使ったチャームである。

 鈴蘭の花を模している部分もあるので、スズにはぴったりだと思ったのだが……どうだろうか?


「ナル君……ありがとう!」

 うん、喜んでもらえたらしい。

 スズが俺に抱き着いてくる。

 スズは俺の渡した物ならなんでも喜んでくれそうな気もするが、こうして喜んでくれると、渡した側としても嬉しいものがあるな。


「これからもよろしくな。スズ」

「うん、これからもよろしくね、ナル君」

 俺はスズを抱き返して、少ししたところで離れる。

 さて、これで後は普通に誕生日パーティーを進めるだけ……。

 そう思っていた時だった。


ゴトッ


「ん?」

「ナルさん、スズ。離れてください。プレゼントの箱が今、増えました」

「ですネ。と言いますカ、明らかに放っている気配がおかしいものがあるのですガ」

 プレゼント置き場の方から物音がして、振り返ってみたら、プレゼントの箱たちの上に、さっきまで無かった箱が一つ加わっていた。


「マスカレイド発動。差出人の名前は……燃詩先輩になっていますね」

「あ、あー……」

「なるほど……」

 明らかな異常事態に、この場に居る全員がマスカレイドをして万が一に備えてから、増えたプレゼントの差出人をトモエが確認する。

 そして、差出人の名前と漂っている気配から、スズ周りの事情についてある程度以上知っている人間はおおよそ全てを察した。

 これは燃詩先輩経由でアビスから送られてきた物である、と。


「まあ、それならスズが開ける分には大丈夫だろう。マスカレイドも解除して大丈夫だ」

「燃詩先輩にも困りものですね。郵送にしても、普通に送ってくれれば何も問題は無いと言うのに」

「ですネー。おかげで場が一瞬凍り付いてしまいましタ」

「あはははは……」

 とりあえず責任は燃詩先輩に押し付けてしまおう。

 と言うわけで、俺たちは揃ってそう言う言動をする。

 申し訳ないとは思うが、その、燃詩先輩もアビスの信徒とは聞いているので、神様がやらかした時の尻拭いもお仕事の一つと言う事で許して欲しい。

 なお、詫びのお菓子くらいは後で送っておくとする。


「それで中身は?」

「えーとね……指輪、かな? 材質はちょっと分からないけど」

 さて、肝心のアビスのプレゼントの中身だが……。

 白い石で出来た指輪のようだ。

 ただ、放っている気配が明らかにヤバい。

 神気とでも言えばいいのだろうか?

 普通の人には魔力を放っているくらいにしか感じ取れていないようだが、明らかに質がヤバい魔力を指輪が放っているのを俺は感じ取っていた。


「うん、着けるのはちょっと色々と調べてからにしたいかな」

「まあ、そうなりますよね」

「これだけ魔力を放っていると怖いですよネ」

「それでいいと思います」

「うん、だよな」

「ちょっと安全な場所に置いてきちゃうね」

 スズもこの場で着ける気にはなれなかったらしい。

 そして、抜身のままこの場に置いておく気にもなれなかったらしい。

 と言うわけで、スズは部屋から出て、アビスの祭壇がある部屋に向かい、そこへ指輪を置いてきた。

 あの部屋ならば、窓もなく、限られた人間しか出入りできないから安全、と言うわけだな。


 なお、後日聞いたところ、あの指輪にはアビスの力が込められているだけで、特別な効果のようなものは込められていないとの事だった。

 うん、どう扱えばいいのか分からないと言うわけで、スズはちょっと困っていた。


「改めて誕生日おめでとうな、スズ。これからもよろしく頼む」

「ありがとうナル君。こちらこそ、これからもよろしくね」

 と、そんなちょっとしたトラブルもあったものの、スズの誕生日はこれ以上のトラブルに見舞われる事なく、無事に終わる事が出来たのだった。

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― 新着の感想 ―
>白い石で出来た指輪 アビス「左手の薬指につけるように」
誕生日パーティ……に乱入するプレゼント(神器)。 巫女を祝ってくれる神と考えるならば、とっても情に厚い、人間に優しい神なんだけど。 なぜに這い寄る混沌風味なアプローチ。 >翡翠のチャーム  英語で翡…
アビスさま……不器用過ぎなんよ。その不器用さは萌えポイント稼いじゃってるのよw
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