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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
11:冬季合宿編
464/499

464:冬季合宿二日目・ナルVS申酉寮 -前編

「レディースエーンドジェントルメーン! それでは本日一番の決闘と参りましょう! まずは東より……『玲瓏の魔王』ナルキッソス!」

「「「ーーーーー~~~~~!!」」」

「……」

 座学も終わり、本日残すイベントはただ一つ。

 と言う事で、俺は通知されていた予定通りに決闘の舞台へとやってきたわけだが……うん、どういう事だろうなこれ。

 照東さんが司会を務めているのは、本人の希望が通ったとか、所属委員会を考えるとこれもまた経験である、と言う話で通じるとして……どうしてこんなに観客が居るんだろうな?

 よく見たら、スズたちも居るし、縁紅たちの姿もある。

 合宿に参加した一年生、ほぼ全員がここに集まっているのではなかろうか?


 うーん、座学と屋外活動とその他休息で誰も彼も忙しい冬季合宿と思っていたんだがなぁ……。

 まあ、そんな疑問を抱きつつも、決闘の時間が差し迫っているので、俺は舞台に上る。

 なお、これから俺が決闘で使う舞台以外は空となっているので、観客たちの目的と視線は完全に俺の決闘である。


「続けて西より……申酉寮の三人、レッドサカー! ブルーサル! コモスドール!」

「「「ーーーーー~~~~~!!」」」

「コケーコォ!」

「よーし、いい感じの場のあったまり方だ」

「やってやるっすよぉ!」

 マスカレイド用のデバイスを身に着けた遠坂、徳徒、曲家の三人が舞台に上ってくる。

 顔は見えなくても、立ち振る舞いだけで分かるほどに三人ともやる気満々だ。


「どうしたナルキッソス。なんか納得がいかない感じの顔をしているが」

「まあ、納得はいかない部分はあるな。どうしてこんなに観客が居るんだと言う意味で」

「ああ、その事っすか。簡単に言えば、これも座学の一種らしいっすよ。一年生トップ層同士の決闘を見る事は何たらかんたら~っす」

「ま、ワイたちがやる事に変わりはないんだから、気にしなくていいだろ。ワイたちは……全力を出すだけだ」

 俺は最後の遠坂の言葉に頷くと、デバイスに手をかざす。

 確かに、見られるだけで邪魔されるわけでもない。

 なんなら、俺の美しさを見せつける好機かもしれない。

 そう考えれば、無様な振る舞いはしないと言う当たり前だけ気を付ければ、それで十分かもしれないな。


「場も盛り上がって来たようですね。それでは始めるとしましょう! 両者構えて! カウントダウン! 3……2……1……0! 決闘開始!」

 そうして決闘は始まった。



■■■■■



「マスカレイド発動! 魅せつけろ、『玲瓏の魔王』ナルキッソス! 『グローリードレス』!」

 ナルがマスカレイドを発動して、光の中から全身の要所に金属光沢を有する鎧を身に着けたナルキッソスが姿を現す。

 そして、即座に発動したスキル『グローリードレス』の効果によって、衣装に応じたバフを……物理攻撃に対する高い防御性能を得ると言うバフを自身に付与する。

 相手がレッドサカーたちと言う事で、その攻撃が物理攻撃主体になると読んでの衣装選択である。


「マスカレイド発動! 飛べ! レッドサカー!」

「マスカレイド発動! 一球入魂! ブルーサル!」

「マスカレイド発動! 吠えるっすよ! コモスドール!」

 ナルがマスカレイドすると同時にレッドサカーたちもマスカレイドを発動する。

 三人の体がそれぞれ赤、青、緑の光に一瞬だけ包まれると、何故か三人の背後で同色のスモークが爆発音と共に焚かれて噴き出す。

 そうして煙の中から出てきたのは、それぞれの色と動物のモチーフに従って作られたヘルメットを頭に被り、同色の全身タイツを身に着け、けれど身に着ける装備品は別々な、まるでレンジャーものの特撮ヒーローのような三人衆。

 つまりは……。


 赤を纏い、鶏を模したヘルメットを身に着け、両腕に翼を、両足に鉤爪を装備したレッドサカー。

 青を纏い、猿を模したヘルメットを身に着け、腰に幾つもの投擲物を提げるブルーサル。

 緑を纏い、犬を模したヘルメットを身に着け、全身に装甲板を貼り付けた上に、槍を盾を持つコモスドール。


 そんな三人が姿を現した。


「なんだ今の爆発!?」

「コケーコォ! 知らん! 『ハイストレングス』! 『テイルウィンド』!」

「原理は不明っす! 『エンチャントインパクト』! 『ライトウェイト』!」

「だが、なんか三人で一斉にマスカレイドすると出る! 『アクセルリング』! 『パワースロー』!」

 そして、ナルが謎の爆発に気を取られた一瞬の間にレッドサカーたちは動き出す。

 レッドサカーは自身を含め三人にバフをかけ、追い風を吹かせると、舞台の床を蹴って高く跳び上がる。

 コモスドールは自身の槍にバフをかけ、自身の重量を少しだけ軽くすると、ブルーサルに抱えられる。

 そうしてコモスドールを抱えたブルーサルは、自身の前に出現させた円状の空間……より正確にはその先に居るナルに向けて、槍を構えるコモスドールをスキル『パワースロー』も使って全力で投げ飛ばす。


「っ!?」

 コモスドールがナルに迫る。

 レッドサカーの吹かせた追い風に乗り、ブルーサルの投げた勢いとスキルによる加速も受けて、剛速球と化したコモスドールが槍の穂先をナルに向けながら飛ぶ。

 レッドサカーたち三人の合体技とでも言うべき攻撃が放たれる。


「舐めるな!」

「舐めてねぇっすよ!」

 それでもナルは自前の反応速度で以って強化プラスチック製の普通の盾を出現させ、コモスドールと自分の間に構えてみせた。

 ナルの盾とコモスドールの槍が真正面からぶつかり合う。

 スキル『エンチャントインパクト』の効果でコモスドールの槍に込められた衝撃が放たれ、ナルの盾を割る。


「「っ!?」」

 そしてコモスドールの槍の穂先がナルの体に刺さり……お互いの体にとても強い衝撃を与え、ナルもコモスドールも体勢を崩しながら、少しだけ距離が離れる。


「この、程度……」

 衝撃で体勢を崩されたナルは、直ぐに体勢を立て直そうとする。


「コケーコォ! この程度で終わるなんざ!」

「思ってねぇから安心しな!!」

 だがそれよりも早く、レッドサカーとブルーサルの二人が動く。


 ひたすらに攻め立てて、隙間なく攻撃し続けて、ナルキッソスの守備と回復を上回り、こちらが息切れを起こすよりも先にナルキッソスを倒す。


 それこそが申酉寮の三人が立てた戦術であるがために。

スキル解説

『テイルウィンド』:追い風。発動時の自身の背後から正面に向かって、広域で気流を起こす。風速や持続時間は製作者の意図とコスト次第だが、基本的には体勢を崩さない程度。


『ライトウェイト』:術者の重量を一時的に軽くするだけのスキル。ただ、軽くすると言っても、羽根のように軽くするのではなく、動かしやすくする程度に軽くするだけである。それが良いのだが。


『アクセルリング』:自身の正面に通過した物体を特定の方向に向かって加速する円盤状の領域を作り出す。どれほど加速されるかは製作者の意図とコスト次第だが、大きく軌道が変わるようなものではない。

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― 新着の感想 ―
この爆発音とスモーク、間違いなく魔力で生じてるはずなんですが、その分の魔力はもしかしなくても女神もち?w
>何故か三人の背後で同色のスモークが爆発音と共に焚かれて噴き出す オトモ戦隊イヌサルトリー! 最初の連携は上手くいったみたいですね。さすがに息が合っている。 >ナルキッソスの守備と回復を上回り…
>なんか三人で一斉にマスカレイドすると出る! 女神「知り合いに協力してもらった力作です」 ☀&猫「「どやぁ」」
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