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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
11:冬季合宿編
458/499

458:冬季合宿一日目・移動と弁解

「ナル君。どうしてあんなこと言ったの」

 現在は移動途中にあるサービスエリアにて休憩中。

 これで夏や秋ならば、季節のフルーツを生かしたソフトクリームの一つでも欲しい所なのだが……流石に真冬の現在でアイス系統はちょっと食べていられないな。

 と言うわけで、トイレを済ませた後は温かめのテイクアウト商品……俺はホットドッグを食べているところである。


「どうしてと言われてもな……口からついポロっと零れちゃったんだよな」

「口からついって……」

 そして、スズから半ば責められるように問い詰められているのは、先ほど俺がしてしまった一対三を許容すると言うか、ちょうどいいと言ってしまった事についてである。


「ナル君。お祓いをしてもらっても、自分から災いを招き寄せるような言動をしていたら、何の意味もないんだよ。あんな挑発以外の何でもない発言をしたら、みんながやる気を出して当然だからね」

「それはそうだよな……。まあ、言ってしまったもの、決まってしまったものは仕方がないと切り替えるしかないな」

「それはそうだけど……」

 まあ、スズに言われるまでもなく、俺としてもやってしまったなと言う感想はある。

 感想はあるが、口から出た言葉は取り消しできないのだから、その後も含めて俺のせいと受け入れるしかないな。


「あ、ちなみにナル君。あのちょうどいいってのは、ナル君の手札全部を使えばちょうどいいって意味? それとも『キャストオフ』からの『グローリードレス』は抜いてる?」

「後者だな。と言うか、ペチュニアの時のように使わざるを得ないとか、この間の青金先輩のように今後の為に見せておきたいとか、そう言う特別な事情がない限りは裸状態での『グローリードレス』は戦力計算に入れないようにしてる」

「それは何で?」

「強すぎて俺の経験にならないと言うか、下手をすると悪影響までありそうだから。後、消費の重さを考えると、何も考えずに使っていいものでもないしな」

「ふうん。なるほどね」

 実際、裸状態でのスキル『グローリードレス』を使えば、一対三どころか、俺一人対一年生の他の甲判定メンバー全員でも勝ち目はあるのではないかと思っている。

 それぐらいにはアレの攻撃は強烈だし、速さも尋常ではない。

 細かい技なんて関係ないレベルの暴威でもある。

 だからこそ怖い。

 アレに頼り切っていたら、それこそドライロバーのように一つの芸しかない無様な決闘者になってしまう気がしてならないからだ。

 だから、必要でない時には使わないようにしたいと言うのが、俺の本音である。


 後、アレは俺の魔力量をもってしても、客観一秒ちょっとしか維持できないし、魔力が尽きる前に解除したとしても残り魔力は100前後になる。

 使い終わった後は色々と無茶をした影響なのか、どうにも虚脱感のような物を覚えて仕方がない。

 ぶっちゃけ、使った後の隙がヤバいくらいに大きいので、これで勝ち切れる確信があるか、使わざるを得ない状況でなければ使いたくないと言うのも、また本音ではある。


 だから、今回の冬季合宿で、他の寮の甲判定と決闘する時に使う気は無い。

 使わされたなら、実質俺の負けでいいくらいだろう。


「と、そろそろ時間だな。俺はバスに戻るけどスズは……」

「私はもう少し外に居ようかな」

「分かった。遅れないように気を付けろよ」

 話に一段落が付いたところで、俺はちょうどいいのでバスに戻った。

 さて、後は現地到着までは寝ていてもいいかもしれないな。



■■■■■



「はい。と言うわけで……」

 ナルがバスに戻った後。

 スズは自分の背後、建物の陰から現れた二人の方を向く。


「瓶井さん懸念のナル君の切り札については大丈夫そうだよ」

「ほっ。よかったぁ。正直、アレが出て来るなら、ボクはどうにもならないと思っていたから」

「ついでに~アレ抜きでも三人程度が相手なら勝てると~舐められているのが分かりましたけどね~」

 現れたのは一年生の魔力量甲判定生徒である瓶井と羊歌の二人。

 瓶井の表情は明らかに安堵したものであるが、羊歌の表情は笑顔だが怒っているのが分かるものだった。


「そこはもう仕方がないんじゃない? ナル君の魔力量とこれまでの戦績を考えてよ。羊歌さん」

「そうですけど~舐められている事は事実ですので~。一泡吹かせるくらいの事は~したくありませんか~?」

 二人がナルとスズの会話を聞いていた理由は単純明快。

 冬季合宿中にどうやればナルに勝てるのか、そのヒントを求めての事である。


「それにしてもいいのかい? 水園さん」

「何が?」

「何って、ボクたちに協力するのは、翠川君への敵対行為以外の何物でもないんじゃないかって事」

「ああその事。それなら大丈夫だよ」

 ただ、そのヒント探しにナルの味方であるスズが協力している事に疑問を覚えた瓶井は疑問を投げかける。

 それに対するスズの反応は……笑み。


「私たちは学生で、これは負けても問題のない決闘。既にナル君の実力と名誉は揺るぎないもの。だったら、ナル君の今後の飛躍の為にも敵に塩を送って戦い甲斐のある相手になってもらった方がお得だと思わない?」

 そして、これもまたナルの為であると言う揺るぎない意志だった。


「思いますね~」

「ああ、なるほど。納得したよ」

「そういう訳だから、ちょっと真面目に考えてみようか。ナル君対策」

 こうして、此処に羊歌、瓶井、スズの三人による、対ナルキッソス戦術の理論構築が開始される事となったのだった。

なお、集まったのがこの三人なのは、

・頭がそれなり以上に回る

・ナル相手に隠し事が出来る

・決まった作戦を仲間に伝えられる

と言った理由になっております。

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― 新着の感想 ―
>そして、これもまたナルの為であると言う揺るぎない意志だった。 愛が重い。 >あとがき つまり頭がそれなり以上にまわらないバカルテット−1は……
>舐められているのが分かりましたけどね~ 巴嬢(ポンコツモード)「羊歌さんがナル様に舐められた!?」
スズの言動が「ナルのため」で首尾一貫している件。 ていうか夏のハモとの遭遇の時も、アビスの信徒ってだけでなく「ナルの成長のためになるから」という理由で見逃してませんでしたか? その結果が綿櫛ズの暴発…
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