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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
10:冬期休暇編
448/499

448:ナルの誕生日

「誕生日おめでとう! ナル君!」

「誕生日おめでとうございます、ナル様」

「誕生日おめでとうでス! ナル!」

「誕生日おめでとうございます。ナルさん」

「ありがとうな、みんな」

 午後。

 サークル『ナルキッソスクラブ』の部屋には、スズ、巴、マリー、イチ、それに俺の五人だけで集まって、俺の誕生日パーティが開かれる事となった。

 と言うわけで、まずはクラッカーが鳴らされて、その後はジュースで乾杯し、切り分けられたケーキや料理を食べつつ、会話を楽しむ。


「巴、ありがとうな。まだ正月三が日の真っ最中なのに、学園に戻って来てくれて」

「いえ。ナル様の為ですから、何てことはありません。むしろ、変な連中と会わなくて済むいい口実になったくらいです」

「そうか。巴の助けになったのなら、今日が誕生日である事がちょっとだけ得になった気がするな」

 巴は今日の午前中に帰って来て、虎卯寮に荷物だけ置いてくると、そのままこちらへ来てくれたらしい。

 俺はその事に感謝を述べるが、巴にとっても好都合であったらしく、俺に笑顔を向けてくれている。


「スズ。ナルの誕生日っテ、もしかして毎年身内だけでやっていた感じですカ?」

「やっていた感じだね。冬休み中ってだけじゃなくて、一月三日はまだ家でゆっくりしていたい、親戚との付き合いがあるって人は男女問わず多いし。後、ナル君が私以外の女友達を招いたらだいたいトラブルが起きるし……」

「それは……確かに起きそうですね」

 マリーが伊達巻を食べながらスズに質問をして、スズの答えにイチが黒豆を食べながら反応を返している。

 ちなみに、俺の誕生日パーティにおせち料理が並ぶのは例年通りの事である。

 時期が時期だからな。

 今年は寮の方で用意をしてもらったが、それでも普通の誕生日パーティっぽいものをわざわざ別に料理してもらうのは……まあ、気が引ける。

 栗きんとんや松風焼き、お餅とかは美味しいし、好きな方の料理なので、別に何も困らないしな。


「スズ。頃合いですか?」

「うんそうだね。そろそろいいと思うよ。マリー、イチ」

「持ってきますネー」

「分かりました」

 そうやって料理と会話を楽しみつつ暫く。

 ある程度食べ終わったところで、マリーとイチが一度別の部屋に移動し、四つの袋を持ってくる。


「さてナル様。こちら、私たちからのプレゼントです」

「一人一つずつ選んできたんだよ」

「おおっ、ありがとうな。年末年始でお店の都合もあっただろうに……」

「そうして喜んでもらえるだけでモ、贈る価値があったというものですネ」

「そうですね」

 どうやら俺の誕生日プレゼントを巴たちは用意してくれたらしい。

 ああうん、嬉しいな。

 こういう所でも面倒事の多い誕生日なのだけれど、しっかりと用意してもらえると、それだけでも嬉しい。


「早速中身を見ても?」

「うんいいよ」

 と言うわけで中身を見ていく。

 いやしかし……このタイミングでも、まだどの袋が自分の物なのか明かさず、しかも四つ一緒に持ってきたという事は……そう言う事っぽいな。

 ちょっと真剣に観察しよう。


「ベルトに、スマホ対応手袋に、マフラーに、スマホケースか」

 四つの袋から出てきたのは、シンプルながらも質のいい革製のベルト、着けたままスマホを弄れる手袋、既製品のマフラーに俺のイニシャルを刺繍したっぽいもの、俺の使っているスマホに合わせたサイズのスマホケース。

 なるほど。


「さてナル君。折角なのでちょっとしたゲームです。不正解でも何も起きませんが、正解すると私たちがとっても嬉しくなります」

「じゃあ頑張らないとな」

「ふふふ、そうだね。では問題です。どのプレゼントが誰が贈った物でしょうか? あ、引っ掛けとかは無いよ。安心して」

 うん、やっぱりそう言う事だったか。

 スズは勿論の事、巴たちも緊張しつつも期待してくれているな。

 だったら……俺もちゃんと当てないといけないな。


「そうだな……。まずはベルトが巴。シンプルでありながらも品も質も良い点からそうだと思った」

「ふむふむ」

「次に手袋がイチ。こういう機能的な品物を送りそうなのは、なんとなくイチだと思った」

「なるほど」

「続けてマフラーがスズ。歴代の品にマフラーが無いのと、手縫い部分がなんとなくそれっぽい」

「あー……」

「最後にスマホケースがマリー。これについてはスマホを入れたら見えなくなる部分に小さくマリーゴールドの花があるので、そこから読み取った」

「ワオ」

 と言っても、スズたちの性格とかを考えれば、たぶん、これで合っているのだろうけど。

 さて、成否は?


「……。大正解っ! 流石はナル君!」

「よし」

 当たっていたらしい。


「完全に読み取ってくれましたね」

「そうですね。此処まで綺麗に読み取ってくれるとは思いませんでした」

「でも当てて貰えテ、贈った側としても嬉しい事この上ないですヨ」

 いやぁ、無事に当たって何よりである。

 此処で外していたら、気まずいなんてものじゃないしな。


「みんなありがとうな。貰ったものは、明日から喜んで使わせてもらう」

「うん、そうして。こう言うのは使ってこそだからね」

 こうして俺の誕生日はスズたちに祝われつつ、和やかに過ぎて行った。

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― 新着の感想 ―
巴にとっての重要度がナル>家族。 プレゼント問題は全問正解。流石ナル君のイケメン力。
こういう気遣いに気付けるところもモテる部分なんだろうなー 超絶ビジュに留まらないからこそ、修羅場が発生するまでにモテ増幅されてると思うとアレだけど。学力も何やかんや平均くらいはあるし、自己肯定感の高さ…
あー……なんともいえない気分だよな。一般にはお誕生日は主役とは言うけど、さりとて世の中の空気の中自分が最優先にってのも、という誕生日……(元旦生まれの読者) そこできっちり理解してくる。そういうとこ…
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