44:デビュー戦の組み合わせについて
本日は二話更新となっております。
こちらは一話目です。
「それでは只今より甲判定限定ミーティングを始める。今日は改めてデビュー戦についての話をするぞ」
時間になったところで味鳥先生と樽井先生が入って来て、ミーティングが始まった。
なお、生徒側は俺を含めて全員揃っている。
「今回は先に言っておくが。デビュー戦で求められているのは、各人の仮面体がどのような力を持っているかを示す事だ。であるから、一方的な試合展開にならないであろうと学園側が判断した組み合わせになっている」
「……。とは言え、皆様お察しの通り、スポンサーの意向と言うのもあります。ですが、そんな物は気にする必要がありません。決闘の舞台に立つ貴方たちがやる事は変わりはなく、決闘に勝つために全力を尽くす。ただそれだけです」
つまり、一見すると戦力差がありそうな組み合わせに見えても、実際にはそうではない。
少なくとも、いい戦いにはなるように仕組まれている、と。
そして、どのような決闘であれ、俺たちがやる事に変わりはない、そう言うわけだ。
「そう言うわけだから、今から発表する決闘の組み合わせが変わる事はまずない。先々週の仮面体の身体能力検査、先週の仮面体の機能確認、今週のスキルについての授業、来週の仮面体の調整。それぞれの仮面体の戦闘能力が変化する要因は多くあるが、それでもだ」
「「「……」」」
視線が縁紅へと一瞬だけ向けられるが、直ぐに戻される。
なんにせよ、確かなのは、何があっても決闘の組み合わせは変わらない、これだな。
「では発表していく。最初に翠川鳴輝と護国巴。当日はメインイベントとして、最後に戦ってもらう」
「はい」
「分かりました」
俺と護国さんの組み合わせについては変わらず。
まあ、俺の仮面体が明らかになった上でなお変わらないという事は……護国さんには俺の守りを突破できるような何かがあると考えるべきなんだろう。
「次、縁紅慶雄と吉備津陽呼。二人は当日、最初に戦ってもらう」
「分かった」
「分かりました」
縁紅と吉備津……魔力量第三位と第四位の組み合わせか。
妥当な組み合わせ……で、いいのだろうか?
思えば俺は吉備津の仮面体と言うか……縁紅以外の甲判定組の仮面体の姿すらも知らないな。
魔力量くらいしか分かってない。
じゃあ、妥当か否かの判断は無理だな。
「残りの組み合わせだが、まずは遠坂金次と瓶井幸」
「「!?」」
遠坂と瓶井さん……あれ?
この二人、だいぶ魔力量に差があるような……。
それが分かっているからか、二人もだいぶ驚いているように見える。
「そして羊歌萌と曲家健。最後に大漁愛佳と徳徒真。以上、組み合わせはこうなった」
「「「……」」」
残りは……魔力量が上から順番に組み合わせただけのように見えるな。
だからこっちは無難な組み合わせであるように思える。
いやしかし……。
「見事に男女対決になっている気がする」
「いや、吉備津と縁紅は男同士だし、翠川と護国さんは見た目だけなら女同士だろ」
とりあえず改めて組み合わせを並べてみよう。
えーと、戦う順番も合わせるとこうなるな。
縁紅 VS 吉備津
大漁 VS 徳徒
羊歌 VS 曲家
瓶井 VS 遠坂
護国 VS 翠川
と。
魔力量の関係で遠坂だけ有利過ぎないか?
俺へのツッコミを入れた徳徒含めて、ここの組み合わせだけは説明を求めると言う視線が、味鳥先生に向けられている。
「先生! ボクの魔力量は甲判定ギリギリなレベルだったんですよ! それで第五位の遠坂君と言うのは、ちょっと無理があると思います!」
「同感だ。今回の決闘はワイたちの仮面体がどんな力を持っているかを見せるためのものなんだろう? だったら、ワイの相手は瓶井さんじゃなくて羊歌さんになる方が自然じゃないのか?」
「そうだな。此処については流石に話しておくか。簡単に言えば、上位四名を除いた中で、遠坂と決闘した時に、最もどちらが勝つか分からない相手が瓶井だった。だから、この組み合わせになったわけだ。詳しい理由は……後で情報収集をして、考えるように。情報収集能力も優秀な決闘者には必要な事だからな」
「「……」」
あ、瓶井さんと遠坂が実際に声を上げた。
そして、味鳥先生も説明してくれた。
しかし、俺や護国さんを除いた時に一番勝率が高い、なぁ。
この場合、遠坂の仮面体が特殊なのか、瓶井さんの仮面体が特殊なのか、あるいはその両方なのか。
どちらもあり得そうだから、後でスズにどうしてそうなっているかを聞いてみるか。
「なお当日は19時に一戦目が開始される都合上、様々なものの時間割が変わる。よって注意を怠らないように。また、学園外部の人間が招かれると共に、テレビでも生中継がされる以上、学園の生徒として品位を保った行動を心がけるように。特に翠川」
「はい?」
「前回の放送事故のようなことが無いように、細心の注意を払う事。事故だとか、ワザとではないだとか、そう言う言い訳で通せる範囲にも限度と言うものが存在する。分かったな」
「あ、はい」
脱ぐなって事ですね、分かっています。
いやでもな、縁紅との決闘でも、テンションが上がってきたら、自然と脱げていたからな……。
脱げないようには気を付けるが、それが上手く行くかどうかは……ちょっと分からないぞ。
まあ、やれるだけの訓練はしておこう。
「さて、他に話すべき事は……」
「……。マスカレイドのデバイスについてですね」
さて、話はまだあるらしい。
「……。マスカレイドのデバイスは現在各社がそれぞれに開発製造したものが存在しており、ショッピングモール含めて各地で購入可能です。また、スポンサーから支援の一環として送られた人もいるでしょう。ですが、デビュー戦ではまだ学園が配布したデバイスを用いてください。後方支援の差によって結果が変わってしまうと言うのは、今回の趣旨に反しますので」
デバイス……。
あー、そう言えば、何処かで見た気も……するなぁ、したっけ?
いや、意識してなかったから分からないな。
しかし、デバイスによって、そんなに仮面体の戦闘能力に差が出るのか?
これもまたスズに聞いておくべき話か。
「……。後は大丈夫です」
「そうですか。では、これより続けて今週のマスカレイドの授業についてのミーティングも行うので、聞き逃さないように」
「え、休憩なし!?」
「マジっすかぁ……」
「一週潰れた分のそれか」
「……」
その後普通のミーティングも行って、この日は終了となった。