表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
9:『ペチュニアの金貨』編
421/499

421:ナルVSサンコール 決闘前

「ナル君。頑張ってね」

「ああ」

 本日は2024年12月13日金曜日。

 時刻は16時ちょっと前。

 天気は快晴……と、これは決闘する場所は屋内だから関係ないな。

 とにかく、俺と吉備津がガミーグの強制自供を賭けて決闘する日がやって来た。


「それでスズたちは……本当にここで待っているのか?」

「うん、待っておく。ちょっと気になる事があるから」

「イチも待っておくべきだと判断しました」

「マリーも同様ですね」

「ナル様に何かあった時に、手の届かない位置に居るのが私は嫌なので」

「萌たちは~水園さんにお呼ばれしただけですね~。でも~居るべきだとは判断してます~」

「そして俺は羊歌にまた呼びされた。ま、この前の事を考えたら、警戒はするべきだろうよ」

 で、今日の決闘は関係者以外立ち入り禁止。

 もっと言えば、俺と吉備津以外の生徒は立ち入り禁止なのだけど……スズ、イチ、マリーの三人に加えて、一年生の魔力量甲判定の生徒全員が、決闘が行われる建物の前に集まっていた。

 しかも全員がマスカレイド用のデバイスを準備した状態である。

 一年生の魔力量甲判定者でこの場に居ないのは、既に建物の中へと入っている吉備津だけだ。


「ウチたちだって気になっているんすよ」

「だな。何かが起きたらとは思わずにはいられないんだよ、翠川」

「ま、ワイに無茶する気は無いけどな」

「てか、本当に何かあったら、まずは風紀委員会であるアタシが動くから、アンタたちは先走んなよ」

「うん、分かってるよ。まあ、正直なところ、何も起きないとボクは思ってるけどね」

 と言うわけで、俺は曲家たちからも言葉を受け取る。

 ちなみに、そうして話している曲家たちの後ろには、麻留田さんの姿もあるし、更に遠くには普段見かけない警備員の姿も多く見えているので、本当に色々なところから戦力が集まっているらしい。

 これほどまでに警戒されるとなると……たぶん、スズか燃詩さん辺りが、何かしらの警戒するべき要素を掴んだんだろうな。

 で、そんなに警戒されるとなると……『ペチュニアの金貨』の意思がまた現れて、暴れ回るくらいの事は考えておいて良さそうか。

 うん、覚えておこう。


「とりあえず俺から言えるのは、何かあっても無理と無茶はしないでくれってところだな。自分の身を守る事を最優先にしてくれ。危険を冒すのは、それを仕事にしている人たちに任せるべきだ」

「それはそうだね。だったらナル君も自分の身を守る事を優先してね」

「言われなくても。それに守る事は、俺の専門だ」

 俺はスズたちに向かって胸を張りつつ、そう断言する。

 それから、建物の中へと入り、舞台がある方へと真っすぐに向かう。


「やあ、ナルキッソス」

「体調に問題は無さそうだな。サンコール」

 舞台の上には既に吉備津がマスカレイド用のデバイスを身に着けた状態で立っていた。

 なので俺は周りを見つつ、舞台に上り、吉備津と声を交わす。

 さて、舞台の周囲には学園の教職員と警察の人たちが何人も立っている。

 そして、観客席で周囲から厳重な警戒を向けられているにもかかわらず、笑顔で座っている男が一人。


「アレがガミーグ・ロッソォか」

「らしいね。直接顔を合わせるのは、僕も初めてなわけだけど……アレは拙いね」

「同感だ」

 赤毛の白人男性。

 年齢は40代と聞いていたが、立派な髭を生やしているために50代くらいでも通用しそうな顔をしている。

 一番特徴的なのはその目。

 と言っても、見た目に異常があるのではなく、雰囲気の話だ。

 あくまでも、ガミーグの所業を既に知っている俺から見た話となるが、人を人と見た上で、どう利用するのが自分にとって都合がいいのかを冷静かつ狂気的に算段しているように見える。


「だが、サンコールは決闘者として真面目に戦うんだろう?」

「ああその通りだ。例え依頼者が人の皮を被った化生(けしょう)の類であったとしても、僕は全力で戦うとも。ガミーグ・ロッソォと言う人の皮すらも脱ぎ捨てた上に好き勝手するのなら、その時点で契約は終わりだけどね」

 そして、俺が感じたものと同じようなものを吉備津も感じたのだろう。

 暗に人間扱いをしていないと言うか、一線を越えた時点で味方をするのは止めだと断言した。


『時間になりました。準備も整っているようなので、只今より決闘を始めさせていただきます。両者、指定の位置へ』

「「はい」」

 俺と吉備津は返事をすると、それぞれの初期位置に立つ。


『今回の決闘は勝利で得られるものの都合上、女神の御力を借りたものとなります。よって、何人たりとも、その過程と結果に対して異議を唱える事は許されない事を事前に理解しておくようにお願いいたします』

「サンコール。一応言っておくが……俺は全力で勝ちに行く。勝たないといけない決闘だからな」

「ナルキッソス。それは僕の台詞だ。さっきも似たようなことは言ったけれど」

 俺も吉備津も自分のデバイスに手をかざして構える。


『それではカウントダウンを始めさせていただきます。3……2……1……』

 結界が展開されて、舞台の内外が分けられる。


『0! 決闘開始!!』

 そして決闘が始まった。



■■■■■



「マスカレイド発動! 魅せつけろ、ナルキッソス!! 『ドレスパワー』『ドレスエレメンタル』も起動!」

 ナルがマスカレイドを発動して、全身が光に包まれる。

 そして、光の中から現れたのは、文化祭の宣言決闘などで見せたバニーガール姿。

 手に盾は持たず。

 膝は既に曲げていて、スキル『ドレスパワー』とスキル『ドレスエレメンタル』の効果で衣装は仄かに輝き始めている。


「マスカレイド発動。輝き照らせ、サンコール!」

 対する吉備津……サンコールもマスカレイドを発動して、太陽のような光に一瞬包み込まれた後に、その姿を現す。

 シックな軍服を身に着け、目をサングラスで隠し、両手にそれぞれ軍刀とマスケット銃を握った姿を見せる。

 そしてサンコールは手にしたマスケット銃の銃口をナルに向けようとして……。


「先手必勝!」

「っ!?」

 その前にバニーガール衣装の『ドレスパワー』によって脚力が大幅に強化されたナルによるドロップキックが炸裂した。

07/22誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
サングラス…… 吉備津「これで白光がでても問題ない!」 女生徒達「ドン引きです」 女神「意味ないから!意味ないから、それぇ」
今年の甲判定者は仲が良いなあ。 >ナルバニー ナルのアタッカースタイルとして定着してきましたね。
バニーガール姿の美女に足蹴にされる… ふと…「我々の業界ではご褒美です」という言葉が浮かんだ…… どうもつかれてるようだ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ