407:【速報版】『ドレスパワー』の試用結果
「『ドレスパワー』の効果か……俺としても気になるところなんだよな。求める効果があった時に、どんな衣装を選ぶべきなのかの参考になるから」
「……。ナル様、もしも欲しい衣装があるならば、私の方から護国家に呼びかけて……」
「巴、『シルクラウド』社も『パンキッシュクリエイト』も居るから、そこは大丈夫」
「そうですか」
俺の呟きに反応して巴が声を上げ、それに被せるようにスズが話し、最終的に巴が残念そうにしている。
あーうん、巴のやりたかったことは分かるけれど……護国家に貸しを作るのはちょっと怖いな。
怖いが……。
「あー、もしもスズが今言った二つの組織で無理な場合には頼むかも。その時はよろしくな」
「はい、その時は喜んで応じさせてもらいます」
まあ、縁は作っておこう。
俺の美しさを引き立てるためには必要だしな。
それはそれとしてだ。
「さて~。そこのイチャコラは置いておくとして~『ドレスパワー』の効果そのものは~だいたいは単純なものだったようですね~」
『ドレスパワー』を試用した結果についてだ。
今回は速報版であるためか、報告者の主観に沿って衣装の分類が振り分けられ、どのような効果が表れたのかをまとめたようだ。
そして、この分類はそこまで間違ったものでは無いのだろう。
「そうですね。全身に金属鎧を着ていれば防御力を上げる。装甲が極端に薄くなれば、筋力か敏捷性が上がる。この辺りは分かり易い結果が出ていると思います」
「仮面体の特徴を生かしやすくなるようにって事だな。確かに分かり易い」
分類によれば、『ドレスパワー』の効果の大きな分類その一は、単純なステータス強化。
イチと大漁さんの言う通り、基本的には仮面体の身に付けている衣装からイメージされる立ち回りがしやすくなるように、基本的なステータスが強化されている場合だ。
俺の衣装だと……ビキニアーマーやコスプレ金属鎧辺りは、こっちの効果か。
で、俺は別だが、この方向での強化は既存の該当ステータスを上げるスキルとは別物で、重ね掛けが有効と聞いているので、活用する人はきっと活用するのだろう。
「そう言う意味では、特定のモチーフがある仮面体に出る効果も分かり易いよね。そのモチーフからイメージされる行動や能力が強化される感じだ」
「ですネ。中にはマリーの喪服のようニ、これまでに確認されていなかったバフもあるようですかラ、スキル開発の面から見ても有用そうでス」
『ドレスパワー』の効果の大きな分類その二は、既存のステータス強化からはズレたものたち。
これは瓶井さんとマリーが今見ている辺りのもので、特定のモチーフが明確に存在している仮面体だと発生しやすいようだ。
そしてその効果はバラエティに富んでおり、通常は知覚できない物が知覚できる、特定の属性に対する特効効果、水場などの特定状況でのみ効果を発揮する、などなど。
中には燃詩先輩ですら、その場では解析出来なかったものもあるようで、解析不能が幾つか存在しているぐらいだ。
俺の衣装だと……シスター服とその亜種たち、水着系統、学園制服なんかは、こっちの効果だな。
対アンデッドに対する聖女服のように、これ一つで戦況を一変させられるのもあるので、俺としてはこっちについてより詳しく知っておきたいところではあるな。
「しかし、こちらの調査結果も、一部の物については個人が特定できそうですね」
「それはもう仕方がないんじゃない? この人たちの仮面体で特定するなは無理があるって」
なお、こちらの調査結果も可能な限り個人名を出さないようになっているのだが……。
巴とスズの言う通り、熊白先輩のクマハクマダクマや麻留田さんのシュタールのように特徴的過ぎる仮面体については、特定できてしまえる。
ちなみに、肝心の『ドレスパワー』の効果については、前者は野生の本能に支配されるで、後者は体の各部の回転率が上がるそうだ。
よく分からないが、特殊な効果の中でも更に特殊で、応用が利かないであろうことは分かるな。
「それで~こうして見ていく中で萌としては気になる点があるんですよね~」
と、ここで羊歌さんが俺の方を見ながら声をかけてくる。
「ナルキッソスの『ドレスパワー』はどうだったんですか~? それと~、二種類の衣装を同時に展開するとどうなりますか~? ナルさんなら出来ますよね~?」
「あー……」
俺は資料を見返してみる。
なるほど確かに裸で『ドレスパワー』を使った際の結果については何処にも書かれていないな。
たぶんだが、俺の分については燃詩先輩が気を使って隠してくれたのだろう。
他の人については……仮に本来の仮面体が裸だったとしても、普通なら、とっとと調整をして衣装を着せてしまい、そのままだろうからな。
調べようとも思わないだろう。
「後者については一つは例があるけれど、それだけだな。思えば忙しくて試す機会が無かった。後で改めてちょっと試してみるか」
「そうですか~」
二種類の衣装を同時に展開するのは……どうなんだろうな?
『パンキッシュクリエイト』の衣装とビキニを合わせたことはあったはずだが、それ以外はないので、試してみないと分からないだろう。
ただ、服の食い合わせと言うか、被り方次第では、マイナスの影響も出そうだし……うん、後で試しておこう。
「で、前者についてだが、燃詩先輩から平時の使用禁止を言われている。と言うのもだ」
俺は羊歌さんたちに裸状態での『ドレスパワー』及び『ドレスエレメンタル』がどうなるかを話す。
話を聞いた羊歌さんたちの反応は……。
「それは~使えませんね~」
「そうだね。仮に使うとしても……」
まあ、割と困った感じの表情をしているな。
「この件については、一応黙っておいてくれ。どうしてこうなるのか、燃詩先輩もよく分かっていないようだったから」
「分かりました。この場限りの秘密にしておきます」
「ですね。天石家にも黙っておきましょう」
「でハ、マリーもお口にチャックですネ」
とりあえずこの件については、出来る限り秘密にしておいてもらおう。
必要になったら切るが、そうでないなら出さない方が良いものだしな。
「……。最悪、アタシがこれを止めるの? 無理じゃね?」
「えーと、協力できることはボクも協力するから、頑張って」
なお、この場で一番微妙な表情をしていたのは、風紀委員会のメンバーである大漁さんだった。