406:【速報版】全国一斉魔力量検査の結果
「ナル様、先日の全国一斉魔力量検査の結果が速報版ですが手に入ったので、『ナルキッソスクラブ』へお邪魔してもよろしいでしょうか」
とある日のお昼休み。
昼食を食べていると、巴が声をかけて来た。
全国一斉魔力量検査と言うのは、先週にやった魔力量の検査と各自の『ドレスパワー』の効果確認の奴だな。
どのような内容が記載されているのかは分からないが、知っておいて損になる情報ではないな。
「んー」
そして、今日の午後は特にこれと言った予定も無かったはず。
念のためにスズに目線だけで確認も取ってみるが、スズは小さく静かに頷いているので、受けても問題は無いだろう。
「構わないぞ。こっちでお茶と菓子は用意しておく。もちろん巴小隊四人分な」
「ありがとうございます。では、羊歌さんたちも連れて、この後お邪魔いたしますね」
と言うわけで、今日の午後は巴たちと一緒に情報を確認する事となった。
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「それでは~早速ですが~パラパラでも構いませんので~読んでいき~すり合わせましょうか~」
午後。
『ナルキッソスクラブ』の応接室に俺含めて八人が集まって、速報版の検査結果を見ていく事になった。
ちなみに、今回の資料を入手したのは羊歌さんであるらしい。
「当たり前なんだが、個人名や正確な数字は出していないんだな」
「そうですね。重要な個人情報なので、特定は難しくなっています。とは言え、私やナル様と言った魔力量甲判定の人間は名前が出ていないだけで、データから誰なのかを特定する事は容易でしょう」
「それは仕方がない」
まずあるのは……お題目通りの魔力量についてだな。
今回検査を受けた人間の中で最も魔力量が多い人物は、15歳で魔力量3800。
はい、巴の言う通り、誰なのかを特定する事は容易ですね。
と言うか、もしかしなくても俺である。
後、他にも何人か魔力量3000超えの人は居るらしい。
「やっぱりナル君が魔力量一位なんだね。当然なんだけど」
「護国さんの魔力量が2100なので~圧倒的としか言いようがありませんね~」
えーと、その後に続くように魔力量2000から3000の人間が……10人以上居るな。
巴、麻留田さん、山統生徒会長……現役のプロ決闘者の方に結構な人数が居るっぽいな。
「で、その下にアタシたち魔力量1000代の甲判定者たちか。翠川にはダブルスコアを付けられている事になるんだな」
「こうして見ると、ちゃんとピラミッド型なんだよね。ただ、思ったより甲判定者の数が少ないように見えるね」
「その件ですが、今回の検査では卒業生については決闘者として活動している人しか対象にしていません。その影響ですね」
「学園を卒業した後にプロの決闘者にならない魔力量甲判定の人が結構居ると言う事ですネ」
大漁さんの言う通り、さらにその下に魔力量1000の人たちが何十人と居る。
で、瓶井さんの言う通り、毎年何人かは魔力量甲判定者が居る割には少ないなと思ったのだが、その点についてはプロの決闘者として残っている人しか対象にしていないからであるらしい。
まあ、学園を卒業したら別の道へってのは分からなくもない。
魔力量甲判定の人はその魔力量ゆえに強制入学だから、卒業したなら自分のやりたいことを優先したいと言う人が居るのも当然の事だろう。
俺が知っている範囲だと……同じ戌亥寮の赤桐先輩や、この上のフロアに居るであろう彩柱先輩などは、学園を卒業したら、そのまま決闘の道からは離れてしまいそうな気がする。
「そして当たり前だが、魔力量乙判定者は甲判定者とは比べ物にならないくらい多い、と」
「それはね」
「当然の話ですネ」
魔力量乙判定の人間は……まあ、沢山だ。
プロ含めて、本当に沢山居る。
ただ、プロの決闘者として活動している人たちは、魔力量700以上が最低ラインと言う感じだな。
やはりそれ以下になると、仮面体の機能、スキル、特殊な道具、小手先の工夫と言ったものを駆使するのにも無理があるのだろう。
「中学三年生の割合を見れば、更に多いのは丙判定者なのも分かります。ですが、彼らはこの時点で決闘に参加する事はありません」
「どう足掻いても無理がありますからね~丙判定の魔力量では~仮面体の維持すら難しいですし~」
イチの言う通り、同じ世代で見れば、最も多いのは魔力量丙判定の人間だ。
ただ、決闘学園の入学条件は魔力量乙判定以上であるし、羊歌さんの言う通り、この魔力量では仮面体の維持も難しい。
決闘に関わるとしても、決闘者としてではなく、依頼者としてだろうな。
まあ、これについては持って生まれた物の差による役割の違いのような物なので、変に気にする方がトラブルを招きそうな話だな。
「あ、中学三年生の甲判定者の数も出ているんだな」
「はい~来年は八名だそうですよ~」
「巴の義妹と荒川さんの他に六人か。どんな子だろうね?」
「決闘関係の家の子ならば、幾らかの話が流れてきていますので、後で教えます」
それよりも気にするべきは、中学三年生の魔力量甲判定者。
つまり、確実に俺たちの後輩になる人物たちだろう。
人数は八人、うち二人とは文化祭で顔を合わせたが……まあ、どちらも特徴的な人物だったな。
決闘する事になれば、一筋縄ではいかない予感も既にしているくらいだ。
今年の魔力量甲判定が十人だったので、少し少なくなっていると言う指摘は……今年が当たり年だっただけ、と言う話だろうな。
そもそも今の二年生と三年生の魔力量甲判定者は、どちらも五人だ。
「八名ですから~各寮に二人ずつですかね~」
「そうなる……うん、そうするしかないか」
余談だが、羊歌さんの言う通りに各寮に二人ずつとなると、戌亥寮だけ所属する甲判定者の人数が五人となり、他の寮は六人ずつとなる。
まあ、この点については、魔力量で見れば俺一人が飛び抜けているので、むしろこれくらいでちょうどいいくらいになる事だろう、たぶん。
「では続けて~『ドレスパワー』についても見てみましょうか~」
魔力量の資料については此処まで。
此処から先は、『ドレスパワー』の試用結果となる。
さて、どんな効果が出てきたのだろうか?
07/08誤字訂正