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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
9:『ペチュニアの金貨』編
405/499

405:女神の謎

「それでナル君。ナル君は何を感じ取っていたの?」

「あー、そうだな」

 普段の事務室に戻ってきた俺は、アビスの祭壇がある部屋で先ほど感じたものをスズたちに話しておく。

 なお、言い方については出来る限り気を使っておく。

 さっきの今だから、確実にアビスに聞かれているだろうしな。


「なるほどね」

「今更ではあるんだが、どうして俺はここまでアビスに嫌われているんだ? まるで心当たりがないんだが」

「うーん、アビス曰く、ナル君は女神の恩寵著しい、らしいんだよね。その点で以ってアビスが嫌っているのは確かだよ」

 俺がアビスに嫌われているのは、女神の恩寵とやらが原因らしい。

 これが魔力量に優れていると言う意味なら……まあ、ちょっと分からなくもない。

 ドライロバーがそうであったように、魔力量に優れている人間の中には少なからず身勝手としか言いようがない人間が居るからな。

 対してアビスはそう言う行為を嫌っているようだし、アビスの信徒もその多くは魔力量に恵まれない方の人間で、その手の身勝手な人間に襲われがちな人間っぽい。

 この状況で、アビスが魔力量の多い人間を嫌うのなら、当然と言えるだろう。

 だがしかしだ。


「女神の恩寵……魔力量だけじゃないよな。魔力量だけで話しているなら、俺の初めての決闘の時の縁紅の説明が付かないし、燃詩先輩がアビスの信徒なのにも説明が付かない」

「それはそうだね。声が聞こえるかどうかも魔力量と言うよりは相性っぽいんだよね。だから祭壇があっても聞こえる人と聞こえない人が居るんだろうし」

「祭壇があればマリーたちでも来ているのは感じられましたからネ。相性の話はありそうでス」

 それだけでは説明が付かない部分がある。

 なのでその例を挙げたわけだが、そうしたら返って来たのは相性という言葉だった。

 でも相性というのは……あるだろうな。

 アビスは意思ある存在なのだし、意思がある以上はどうやっても反りが合う合わないは生じるだろうから。


「しかし女神の恩寵ですか……。思い返してみると、確かにナルさんは女神は好かれていそうと言いますか、常に監視されていそうと言いますか、縁は深そうですね」

「そう……そうかもな」

「縁紅の件、ペインテイルの件、ドライロバーの件……分かり易いところだとこの辺ですかネ。決闘の意思を示すと同時に女神が出て来ていた気はしまス」

「実際早いよね。裏でスタンバイしてましたと言われても信じられるくらい」

 俺はイチの言葉を反射的に否定しようとしたが……少し考えて無理だと判断した。

 実際、決闘関係で女神が来るのが早いのは感じていたからだ。

 だいたい気が付いたら、書類を準備し終えた状態で近くに出現してる。


「うん、記録を見てみても、やっぱり早いね」

 で、直ぐに女神がやってくる件だが、やはりこれは普通の事ではなかったらしい。

 試しにとスズが一般的な決闘者が女神の力を借りるような決闘を望んだ場合を調べてみたのだが、明らかに俺の時よりも時間がかかっているようだ。


「普通は一分とか二分とか……ちゃんと間があるんだな」

「書類だけ送って終わり、と言うパターンも多いようですね」

「女神自身ではなク、光の球体……通称、女神の使徒がやってくるパターンもあるみたいですネ」

 まあ、女神もお忙しいのだろう。

 決闘は世界中で行われているし、決闘に関係した取り立ても同様。

 その中で女神自身が直接動かないといけない案件を優先するなら、そりゃあ、出て来るまでに時間がかかったり、最低限の処理で終わったり、代理を送るだけで済ませる場合もあるよな。


「ナル君に女神の寵愛があるのは否定できないね、これ」

「だな。だとすると、逆になんでこんなに女神から好かれているのかって疑問が出てくるわけだが……俺の美しさに惹かれたは流石に無理があるよな」

「ナルが美しいのは事実ですガ、それは無理があると思いますネ」

「そうですね。女神の美的センスは人類とそこまで変わらないように思えますが、それは流石に無理があると思います」

 しかし、こうなってくると逆に怖いな。

 根拠が明示されない優遇ほど恐ろしい物は無い。

 後で何を求められるか分かった物じゃないぞ。

 と言うか、今更な話だが、そもそも最初のマスカレイドの時点でなんで女神は俺の事を手助けしたんだ?

 女神の恩寵と言うのなら、アレは明確にそうだと思うが……本当に謎ばかりだな。


「今更パート2だけど、女神って何処の神話体系にも属していないんだよな?」

「本人は過去のインタビューでそう言っていたはずだよ。そうそう、アビスも何処の神話体系にも属してないよ。アニミズムの要素はあるみたいだけど」

「女神については名乗ってもいませんね。なので、その土地の宗教事情に合わせて、様々な呼ばれ方をしています」

「改めて考えてみると謎だらけと言いますカ、中々に挙動が怪しいですよネ。女神」

 流石に少しは女神の思惑を考えるべきか。

 俺はそう思うと、女神について分かっている情報を思い出した上で、スズたちに尋ねてみる。

 が、返って来た言葉をまとめてしまうのなら、何も分からない、になってしまう。


「うーん、女神は外宇宙出身?」

「そう言う説もありますね。名乗らないのは、人間には発音不可能な音を含んでいるから、だとか」

「実は地球の支配を目論んでいる邪神なのダ! と言う陰謀論と言いますカ、誹謗中傷はよくあるものですネ」

「女神の目的がそれなら、もう人類は負けているから、それは無さそうだよね。普段の行動もどちらか言えば守護者のそれだし」

 うーん、女神の正体は何なのか。

 目的も何も分からないからか、気になって来たな。


「ちなみにスズ。アビスは女神の正体を知っていたりは?」

「知らないみたいだよ。ただ、さっきナル君が言っていた外宇宙ってのはあながち間違っていないのかも。外から来たのは見たとは言っているし」

「外、外かぁ……」

 ただ気にはなっても、知る事は無理そうだ。

 アビスも女神であるが、その女神が言う外は……ちょっと人間が手を出すにはあまりにも早い領域な気がするからだ。

 まあ、この話は今はこれくらいにしておこう。

 調べる手段すらないのだから。

07/07誤字訂正

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― 新着の感想 ―
女神が天照書房の信者ということは、まだバレて居ないようだな…… 深海「!ベッドの下から大量の薄い本が!」
”外“は”外“でも……と、いったところ(天の助)なので……
>なんでこんなに女神から好かれているのか 単にTSが癖に刺さっただけだったりして。 >「うーん、女神は外宇宙出身?」 いあ! いあ!
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