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マスカレイド・ナルキッソス  作者: 栗木下
9:『ペチュニアの金貨』編
398/499

398:決闘を終えて

「二度と来るな」

「本当にそう」

「同意します」

 俺、スズ、ファスの三人は黒い何かが消えた場所に向かって揃って吐き捨てる。

 実際、もう一度戦いたいかと言われたら、断じてノーである。

 あんな化け物と戦うだなんて、そう何度もしたい事ではない。


「さて、これで決闘は俺たちの勝利に終わったわけだが……この後はどうなる?」

 決闘の舞台を囲う結界が消えていく。

 合わせて、スズが展開していた大量の海水も消えていく。


「とりあえず避難は継続かな。万が一があるし」

「そうですね。ただ、ファスたちがどうするかは……」

 俺たちの決闘を見ていた観客たちは、黒い何かが出現して一分ほど経ったところで避難を開始してた。

 これについては、黒い何かの声が精神に対して何かしらの作用を有していて、しかも明らかにアンクルシーズの制御下に存在していない、誰の目に見ても異常な状態だったので当然の動きである。

 避難そのものは……風紀委員会と生徒会、それに教師たちの管理下でスムーズに進んでいるな。


「ナルキッソス。お前ら大丈夫か?」

「見事だった。が、それはそれとして大丈夫か?」

「麻留田さん。それに山統生徒会長。俺たちは大丈夫です」

 と、ここで麻留田さんと山統生徒会長がやってくる。

 二人ともデバイスを身に着けていて、何時でもマスカレイド出来る状態だ。

 どうやら、万が一の事態……俺たちが黒い何かに負け、黒い何かが結界の外に出て来て暴れるような事態を考えていたらしい。


「俺たちはこれからどうすれば?」

「まずは建物の外にまで避難だ。ペインテイルの時と違って、まだ安全が確保されているとは言い難い状況だからな」

「マスカレイドが解除されて控室に飛ばされたアンクルシーズがまだ暴走している可能性を考えての事ですね?」

「そう言う事だ」

 と言うわけで、俺たちは控室に通じる通路を使って、移動を始める事になる。

 しかし、アンクルシーズがまだ暴走している可能性か……。

 たぶん大丈夫だと思うが、もしも暴走しているのなら……。


「麻留田さん、万が一の場合には俺はアンクルシーズが居る方に向かった方が?」

「そう言えばお前だけは休息不要か。そうだな。万が一の場合は頼む。とは言え、あちらに行った青金と陽観からの連絡は……ああ、今あったな。どうやら無事に確保出来たようだ」

「そうですか。なら良かった」

 どうやら大丈夫だったらしい。

 ならもう心配は要らないので、俺たちはマスカレイドを解除した上で、大ホールの外にまで移動する。


「さて、この後について話しておこう」

 大ホールの外には既に多くの生徒が集まっていて、不安そうに大ホールの方を眺めている。

 警備、それと教師の中でも武闘派っぽい人たちは逆に次々と大ホールの中へと入っていく。

 警察は……サイレンの音が聞こえてきているので、もう間もなくと言うところだろうか。


「事情聴取ですよね?」

「後は診察かな。たぶん、アレの叫びは精神への作用を持っていただろうから」

「その通りだ。ペインテイルの時と同じだな。では私は大ホールの中へと戻らせてもらう。万が一ここで何かが起きた時は……翠川、お前が動け」

「分かりました」

 俺とスズの言葉に麻留田さんが頷く。

 まあ、ぶっちゃけた話として、あの場に居た人間の中で誰が一番異常を受けていないかと問われれば、それは俺たちになるだろうから、診察については念のためになるのだろうけど。

 そして、麻留田は大ホールの中へと戻っていた。

 さて、麻留田さんが居なくなると共に、一つ聞いておくべき事がある。


「それでマリー。さっきからずっと黙っているみたいだけど、何かあったのか?」

「……エ? ア、はイ。気になる事があると言えバ……ありますネ」

 それはマリーについてだ。

 決闘が終わってからずっと喋らずに、何かを考えている様子を見せていた。

 その事が気になって問いかけてみれば、やはり何かはあるらしい。


「あの黒い何かについて色々と気になる事があるのですガ……。マリーは『ドレスパワー』を使っていた事もあリ、その声もよく聞こえていましタ。そしテ、アレの比較的落ち着いている時の声がよく似ているように思えたのでス。あの子ト」

「「「……」」」

 マリーの言葉に俺たち三人ともに察する。

 アンクルシーズが暴走した原因、あの黒い何かの正体については、ほぼ間違いなく『ペチュニアの金貨』に由来する物だ。

 そこからマリーだけが覚えのあるの声がして、しかも言い淀むとなれば……該当者は一人しかいない。


「ペチュニア・ゴールドマインか」

「はイ。ペチュニアの声を最後に聞いたのはもうずっと前の事なのデ、確証を持てるわけではありませんガ」

 ペチュニア・ゴールドマイン。

 マリーの従姉妹で、『蓄財』の暴走に伴う爆発事故で亡くなった少女であり、『ペチュニアの金貨』と同じ絵柄の金貨を作り出せていたらしい少女。

 俺は単純に犯罪組織が勝手に絵柄を使っていただけと思っていたのだが……ここでマリーがその声を聞いたと言うならば、もしかしたら、ペチュニアの絵柄を使う事にも何かしらの理由があるのかもしれないな。


「今後の捜査を待つしかないな。今は四人とも無事に決闘に終われたことを喜ぼう」

「うん、そうだね」

「そうですネ。今はそうしましょうカ」

「はい。後で祝いましょう」

 やがて何台もパトカーがやって来て、機動隊と思しき格好の人たちが大ホールの中へと入っていった。

 とりあえずは一件落着。

 そう思うとしよう。

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― 新着の感想 ―
>あんな化け物と戦うだなんて、そう何度もしたい事ではない。 もやし先輩「フラグというものを知っているかね?」 謎の存在は闇堕ちペチュニアでしたかー。 どうにか救えればいいんですが。
> 「そう言えばお前だけは休息不要か。そうだな。万が一の場合は頼む。とは言え、あちらに行った青金と陽観からの連絡は……ああ、今あったな。どうやら無事に確保出来たようだ」 この台詞で陽観さんが出るのが違…
>「ナルキッソス。お前ら大丈夫か?」 >「見事だった。が、それはそれとして大丈夫か?」 二人「「キャストオフする気じゃないだろうな?」」 >アレの比較的落ち着いている時の声がよく似ているように思えた…
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