394:ナルキッソス小隊VSグレーターアーム小隊 -序編
マスナル一周年!
と言うわけで本日は二話更新です。
こちらは二話目となります。
2024年11月15日金曜日の午後。
マスカレイドの授業時間中に、その決闘は行われる事となった。
『それでは次の決闘を始めましょう。東、ナルキッソス小隊。メンバーはナルキッソス、スズ・ミカガミ、マリー・アウルム、ファスの四人です』
司会の声に従って『シルクラウド・クラウン』を身に着けたナルたち四人が通路から出て来て、舞台上にまで移動する。
舞台の上での四人の立ち位置は、ナル一人を前に出し、残り三人は一歩引いた場所に立つと言う、見るからにナルを前衛として出す態勢である。
『続けて西、グレーターアーム小隊。メンバーはグレーターアーム、チョウホウ、サンライザー、アンクルシーズの四人です』
続けて、それぞれデザインが異なるマスカレイド用のデバイスを着用したグレーターアームたち四人が通路から出て来て、同じように舞台上にまで移動する。
四人の立ち位置はナルと相対するようにグレーターアームが立ち、幾らか離れて横にチョウホウ、後ろにサンライザーとアンクルシーズの二人が立つと言うもの。
グレーターアームを主軸としつつ、チョウホウを遊撃に出し、残り二人が後衛として働くのが明らかな態勢である。
『ルールは通常通り。先に相手の小隊を全滅させた方が勝利となります』
「此処まではお互いに想定通りか?」
「分からねえぞ? ブラフかもしれない」
ナルとグレーターアームが軽い調子で言葉を交わす。
交わしつつも、お互いに相手の動きに細心の注意を払う。
お互いの立ち位置から読み取れる通りの戦術で仕掛けてくるのか、それとも今の立ち位置はブラフで他の戦術があるのか、その読み合いと言う部分において、既に決闘は始まっていると言ってもいい状態だからだ。
『それでは決闘を開始いたします。3……2……1……0! 決闘開始!』
「「「マスカレイド発動!」」」
そして、決闘開始を告げられると同時に、全員がマスカレイドを発動する。
舞台の上が光で一瞬満たされて、晴れ上がる。
「ま、どう来ても俺のやる事に変わりは無いな。『ドレスパワー』『ドレスエレメンタル』発動」
真っ先にマスカレイドを完了したのはナルキッソス。
最初から聖女服などと最近では呼ばれる上質なシスター服を身に着けた状態で、光の中から姿を現す。
その服は既にスキルの影響によって仄かに輝き、生半可な攻撃では傷一つ付けられない状態となっている。
「さて、きちんと来てるかな? 『サイコキネシス』」
「マリー・アウルムの名において命じます……」
「では……」
続けてスズ、マリー、ファスの三人がマスカレイドを完了。
スズはすぐさまスキル『サイコキネシス』を発動すると、自分の鞄の中身を検めていく。
マリーもスキル『P・魔術詠唱』を生かすように、ユニークスキル『蓄財』で作った金貨を一枚手の内で砕きながら、言葉を紡ぎ始める。
ファスは一瞬だけ相手の状況に目をやると、ユニークスキル『同化』と仮面体の機能を組み合わせて自身の姿を消しつつ、駆け出す。
「さあ! 前回と同じく真っ向勝負と行こうぜぇ! ナルキッソス!」
そして、ナルたち四人のマスカレイド完了から遅れる事コンマ数秒。
傍から見る分には同時としか言えない時間差で以って、マスカレイドを完了したグレーターアームが、状況を確認する事も無くナルに向かって駆け出し始める。
「ああ、来いよ。グレーターアーム」
「行くぜぇ! 『パワーチャージ』『クイックステップ』!」
口で真っ向勝負だと伝える事でナルから避ける選択肢を奪う。
スキル『パワーチャージ』によって、自分の筋力を一時的に跳ね上げた上に、次の物理的な攻撃スキルの出力も上げる。
そして、スキル『クイックステップ』によって、一瞬でナルとの距離を詰める。
此処までならば……前回の単独で行った決闘の劣化版。
だが、今回のグレーターアームには仲間が居て、入念な打ち合わせと準備を積み重ねてきている。
だから……。
「『ハードエッジ』『ハイデクスタリティ』。さて……」
チョウホウがスキルを発動。
グレーターアームの巨大おろし金とでも言うべき武器の硬度を上げ、グレーターアーム自身の身体制御能力も一時的に上昇させる。
「『ハイストレングス』『エンチャントシャイン』、ついでにビーム!」
サンライザーもスキルを発動。
グレーターアームの筋力を上げ、巨大おろし金に光属性の魔力を纏わせる。
だけでなく、目くらましのビームをナルの目に直撃させて、その視覚を一時的に奪い取る。
「『ガードダウン』『チェインバブル』。ダウンは弾かれた!」
さらにアンクルシーズもスキルを重ねる。
だが、魔力構造体の結合を僅かに緩めて防御力を下げる効果を持つスキル『ガードダウン』はナルの魔力に阻まれて効果を発揮せず。
スキル『チェインバブル』のみが効果を見せ、ナルの直ぐ近くに魔力の泡が浮かぶ。
「此処だ! 『ホリゾンタルスイング』!」
そうして小隊の仲間三人から十分なバフを受けたグレーターアームは、間髪入れずにスキル『ホリゾンタルスイング』を発動。
手にした巨大おろし金を舞台の床と水平に、全力で振り始める。
「来い、『ウォルフェン』」
これに対するナルの動きは単純だった。
目を瞑ったままに自身とグレーターアームの間に魔力を集めて、一つの名を呼んだだけ。
ただそれだけで、ナルの全身を容易に隠すほどに巨大な盾が現れる。
「これは……!?」
その巨大な盾を見てもグレーターアームは止まらなかった。
否、止まれなかった。
既にスキル『ホリゾンタルスイング』を発動していて、スキルによって決められた通りにしか体が動かなかったからだ。
そして、ナルの呼び出した『ウォルフェン』とグレーターアームの武器がぶつかり合った。
 




