375:第三回モデル撮影と……
本日は二話更新。
こちらは二話目となります。
「それでは次、こちらの服でお願いします」
「分かりましたー」
さて、『ウォルフェン』については、『ドレッサールーム』への登録にしばらく時間がかかりそうという事で、今日の所は置いておくことになった。
そして続けて行うのは、第三回となるモデルとしての撮影である。
「春物は気温的に合っている上に、これはデザイン的にも動きやすくていいな」
今回の服装は春物。
まだ秋なのに? と思われそうだが、初回の水着の時が無理やりなスケジュールであり、編集などの手間を考えれば、今頃に来年の春の為の服を撮影するのは当然の事である。
と言うわけで、薄手だが長袖の上に、ロングのスカートを合わせたものを中心として、幾つかの組み合わせで撮影を進めていく。
露出度的には控えめであるけれど、冬服に比べると生地が薄いからか、俺としては着心地が良い。
「ナルキッソスさん、次の衣装お願いします」
「分かりましたー」
そうして順調に撮影が進んでいき……。
「って、振袖ですか……もう時期的に遅いのでは?」
「上から、緊急で撮っておきたいものとして提示されたものですね。無理なら着なくても構わないとの事ですが」
「いえ、折角なので着ておきます」
何故か振袖を着る事になってしまった。
当然、女性ものだし、絵柄も水仙をメインとした華やかな物であるし、帯もしっかりと締められて、髪飾りを含む各種アクセサリーも着用。
成人式か何かでも、ここまで気合いを入れて着飾るだろうかと言うぐらいには、着飾っている。
俺の美しさなので、当然ながら似合ってはいるわけだが……。
「流石に窮屈だな」
うん、色々と厳重でキツイな。
明らかに今日一番の高級品なので気を張ってしまっていると言うのもあるが、露出度の低さや装甲の厚さ、可動域の狭さなどが、とにかく俺とは合わない感じがある。
ちょっと帯を緩めたりとか、胸元を開くとかしたくなってくるな。
する訳には行かないんだけど。
「ナルちゃんの振袖……っ!」
「おオッ! 今回は耐えましたネ!」
「耐性が付いたという事でしょうか?」
「露出度が低いからじゃないか?」
なお、今回のスズは耐えた。
一瞬ふらつく場面はあったけれど、素早く足を伸ばし、歯を食いしばって、耐えて見せていた。
そして、両の眼を大きく開くと、俺の一挙手一投足を見逃さんと言わんばかりに、こちらの事を見ている。
「これは借り物だし、撮影もあるからやらないけれど、太ももと胸元の辺りを幾らかはだけてみれば……」
「っ!?」
が、俺の言葉を聞いたタイミングで卒倒し、鼻血を零しつつ裏へと運ばれていった。
どうやら自分の頭の中で、俺が言った内容を想像した結果、耐えられなかったようだ。
まあ、周囲含めて既に慣れた物なので、騒ぎにすらならないのだが。
「それでは撮影お願いします」
「はい、分かりましたー」
何時までも寸劇をしていても仕方が無いと言う事で、俺とスタッフさんたちはとっとと撮影を済ませてしまう。
今日はまだ他にもやる事があると言うか、ナルキッソスと言う決闘者にとってはこの後の方が重要な話なので、急いで終わらせてしまう。
「以上でモデル撮影は終わりとなります。お疲れさまでしたー」
「ありがとうございましたー」
と言うわけで、第三回モデル撮影は無事に終了。
そして、次の用事の為の衣装と、設備がスタジオ内へと運び込まれていく。
俺はその間、マスカレイドを解除して、少し休憩だ。
「そう言えば水園様。今年の文化祭は中々に大変だったそうですね」
「そうだね。尾狩参竜のせいで大変だったよ」
休憩していると、楽根さんとスズが話をしているのが聞こえてくる。
どうやら、スズは無事に復活を遂げたらしい。
で、会話の内容は……今年の文化祭についてか。
確かに尾狩参竜については色々と悩まされた文化祭ではあったな。
対処するために余計なリソースを取られた感はあったし。
「そう言えバ、ナル的にはドライロバーとペインテイルだったラ、どっちの方が強かったんでス?」
「んー……正直なところ、『ペチュニアの金貨』のせいで暴走したペインテイルの方が強かったかもな。相性とか、各種道具が初見であるかとか、トモエがコマンダーとしてオート効果含めて色々と補助してくれたとか、そう言う要素が重なったと言うのはあるけれど、感想としてはそうなると思う。まあ、強いと言うよりは怖いかもしれないが」
「なるほどでス」
「今の話、流すところに流したら、尾狩参竜の権威に追い打ちをかけられそうですね」
「かもな」
まあ、尾狩参竜……ドライロバーとの決闘そのものについては、心をへし折ったら餓死待ちで十分なくらいに楽勝だったわけだが。
実際、ペインテイルのように暴走とか、無差別とか、そっちの方が色々と怖かったんだよな。
何が起きるのか分からないのもあって。
と、こんな事はどうでもいいな。
それよりもスズたちの方だが……。
「では、もしもそうなった時は、是非我が社にご一報を」
「うん。ナル君の性格的に可能性は低いと思うけれど、もしもそうなったら、その時はこちらこそお願いします」
既に話は終わっているらしい。
まあ、話の流れ的に来年の文化祭で『シルクラウド』社が絡める場所があれば、絡ませて欲しい、みたいなところだろう。
頼むなら……衣装関係で何か、と言うところだろうな。
「準備終わりましたので、確認お願いします」
「はイ。分かりましタ!」
さて、準備が終わったらしい。
では続けて第三回『ドレスパワー』及び『ドレスエレメンタル』検証会と行こう。